act.08 お祭り日和
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「うわぁー、すっごく可愛いです!」
「本当っ!浴衣派手だと思ったけど椿さん着こなしてるじゃん」
「恐れ多いよ、二人の方が若いし羨ましい」
蘭ちゃんは赤系で園子はオレンジ、そしてコナン君は紺色にストライプの浴衣でかっこよさもあり可愛さもある。
「ガキンチョ見過ぎ!」
え、嘘、蘭ちゃんじゃなくてこの子こっち見てるよ。
素敵な蘭ちゃん見るよりもこっちが気になるって事は似合ってないのか。
女子高生二人のコメントは社交辞令なのか。
「あ、ヤバい椿さん間に合わなくなっちゃう」
早く行こ、と鈴木家の車に乗り神社まで送ってもらおうと思ったけど、あと少しの所で人混みで動けなくなり結局4人で歩く事となった。
歩きにくいなぁなんて思うけど二、三時間の我慢だと自分に言い聞かせる。
「コナン君、やっぱおかしい?」
「え、なんで?おかしくないよ?」
現在前を歩いている蘭ちゃんと手を繋いでいるコナン君に疑問を投げた。
するとキョトンとした顔で振り向かれてそんな事ないよと言われる。
「だってさっきこっち見て固まってたから変なんだと思って…」
「違うよ?想像してたよりも似合ってたからビックリしたんだよ」
「まぁでも椿さん25なのに大人の色気はないけど可愛いよね」
えーっと、貶されてるのかな?
色気はないけど可愛いってつまりは一生セクシーにはなれねぇよと受け取ってもいいのだろうか。
ねぇ、どうやったらセクシーになれるの。
大人の女性って何。
漸く神社の入口に辿り着き、時刻を見ればなんとか五分前に着けたようだ。
「安室さん何処かなー」
キョロキョロと園子が探していると、見付けた。
これはもう私の特技と言ってもいい程に、降谷さんが人混みの中でも見える。
だってオーラ凄いもんね。
そして、周りにいる女性達はなんなんですか。
えっと、一応懐に愛銃忍ばせてあるので撃っ放していいものだろうか。
さっき依頼人と思われる人とRX-7に乗ってた服と同じですけど着替えて来てほしかったのが本音です。
さっきの車内での光景が蘇ってしまう。
「安室さーん!」
園子が元気よく力いっぱい他の女性に負けないように叫んでくれた。
凄い勇気だ。
私絶対話し掛けられないよ。
もし一人でここに来てたならソッと自分は帰ってしまう。
誰ー?知り合いー?とか美人なお姉様方の声が聞こえるけどこっちがその質問したいわ。
誰ですか、知り合いですかと強めに降谷さんに聞きたいけど聞けない。
「大丈夫?」
走って行った園子とそれを追い掛けた蘭ちゃんはいつの間にか絡んでいた女性と向こうで口論になっていて、コナン君はここに残って心配する声をくれた。
「モテる人っていいけど大変だし…大変だね…」
「なんで2回言ったの」
「本人も大変だろうし、こっちも…」
コナン君を抱っこしようと思ったけど、彼の浴衣が崩れても可哀想なので手を繋ぐだけで我慢した。
暇だから携帯を出してインカメにし、コナン君とのツーショットを撮る。
そしてそれを赤井さんに送信した。
「赤井さんも堂々と歩けるようになったらいいのにね」
その言葉にコナン君は苦笑いしかしてくれなかった。
携帯が震えて赤井さんからの返事が来たと思えばどうやら沖矢昴でお祭りに来ているらしく、イカを食べている画像が届いた。
いや、あの人インカメ使ったのか。
おもろいな。
その光景見たかった。
「椿さーん!」
園子の元気な声が聞こえて振り向くとそこには蘭ちゃんと降谷さんがいた。
「あれ?さっきの美女軍団は?」
「なーに言ってんの!約束してんのは椿さんと安室さんなんだし追い払ったわよ!」
「それじゃあ私達は行きますね」
コナン君行こっかと言って去って行った三人。
残された私はと言うと、降谷さんの目が見れなくて俯いている。
だってこの雰囲気も味方していつもよりもかっこよく見えるんだよ。
うわあぁ、絶対これ顔赤い。
もう少し暗くなってほしい。
「椿さん、浴衣似合ってますよ」
ピクっと反応してしまい顔を上げてしまえばその視線からはもう逸らせなくなってしまう。
青い瞳がじっとこちらを見てくる。
「連れて帰りたくなってしまいますね」
にっこりと笑った降谷さんに、かあぁぁと頬に熱が篭るのが分かった。
もう初っ端からハニートラップですか。
言われる前からもう引っ掛かってますよ。
「取り敢えず行きましょうか」
何か食べたいモノとかしたいモノとかあります?と聞く降谷さんの斜め後ろを歩くも、やめてくださいと言われたので首を傾げる。
「隣を歩いてほしいんですけど」
「あ、すみません、無意識です」
降谷さんだからと上司でもないのに距離を保って歩いてしまっていた。
それも見破られてしまうとは、流石です。
慌てて隣に行ったけど、これはこれで凄く歩きにくい。
遠慮してしまう、私なんかが隣を歩いてって思ってしまう。
「以前も駐車場へ向かう時、その様な歩き方をしていましたが、椿さんの上司はどの様な方なんですか?」
「残念ですけどポロリはないですよ」
それに上司なんてこの世界にはいないのだから。
居たとしても黒田さんくらいか。
その時になれば命令されるんだろうな。
従うか従わないかは私次第だけどね。
「その返事だと仕事はしているんですね」
「いえ、収入源はないです」
本当だ。
お金の話は黒田さんとしてないな。
きちんとした契約をしてないから上からお金も下りて来ないだろうし、タダ働きか。
まぁ週一くらいでご飯行ってるからいい事にしとこう。
「安室さん、あれとあれとあれ食べたいです」
「唐揚げとフライドポテトとベビーカステラ…」
「あと、焼きそばとたこ焼きと焼きトウモロコシも!それとりんご飴も食べたいですしかき氷もいいですね」
「分かりましたからちょっと待っていてくださいね!」
パシらせてしまった。
そんなつもりは無かったのに、どうにも今日はいつも以上にテンパってる自分がいる。
降谷さんにあれ欲しいです、なんていつもの私は絶対に言えない。
走って行ってしまった降谷さんを見送り、何故私は連れて行ってくれないのだろうと少ししょぼんとする。
屋台のお兄さんに「兄ちゃんそっち彼女?」なんて言われてみたいじゃないか。
そんな事夢の夢か。
「ねぇお姉さん」
ん?と声が掛かったので私に言ってるのかと振り返る。
するとそこには如何にもチャラそうな4人組がいた。
「一人?連れは?」
「いるけど、何?」
「遊びに行かないかなぁって」
「行かないから他当たって」
「いいじゃん行こうぜ?奢るしさ」
しつこいな。
溜め息が漏れると、おっ色っぽいとガヤが飛ぶ。
人生においてセクシーとは無縁だけど身に付けられるなら欲しいよ。
つまりは色っぽいなんて言われると即座に喧嘩を売られていると思ってしまう。
行こうぜ、な?と腕を掴まれた時、慣れないしっとりとした手の感覚にピクリと体が戦闘態勢へと入り、その腕を簡単に振り払う。
「男として制御不能にしてやろうか?」
「それはいけませんね」
流石にやり過ぎですと袋を持って戻って来た降谷さんに言われた。
聞かれましたか今の言葉。
「椿さん、たこ焼きとフライドポテトです」
袋を受け取り中からポテトの入った紙袋を出して食べようとするとまだ声が掛かる。
無視すんなよコラ、とお決まりのような台詞を吐いてくる。
「まだ何か?」
「制御不能にすんだろ?やれるもんならやってみろよ」
凄い挑発の仕方だ。
そしてやれるんだけどやってもいいのか。
ポテトを一本食べた所でそれを袋に直して、足を踏み出せば、スっと手が伸びてきて降谷さんに止められた。
「大丈夫ですよ、地面に転がすだけです」
「女が何言ってんだ?」
「浴衣だからあんまり動けないけど」
リーダーだと思われる男の側へ行き顔を見上げた所で思い切り力を込め足払いをした。
すると見事に地面に転がり自分で言っておいておかし過ぎて笑いが漏れる。
「女にやられるとはね?」
「クソっこっちにはボクシングやってたやつがいるんだよ!」
「奇遇ですね、手合わせ願っても?」
一歩踏み出した男に向け降谷さんはジャブをしようと男の顔目掛け既の所でパンチを止めた。
「いいですよね、ボクシング」
ひっ、と情けない声を上げた男は腰を抜かしその場に崩れ、他の男は後ろにいた人にドンと背中が当たり、その人物を見ると男はフランクフルトに噛ぶりついていた。