デフォルトでは「神庭(かんば)実里(みのり)」になります。
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ガツン、と頭を殴られたような頭痛が襲う。しかしそれは外傷的なものではなく内側から破裂するような痛みだ。ズキンズキンと脈とともに私の頭を蝕んでいる。
「……は、…!」
誰かの声が聞こえる。どこかで聞いたことのある声だ。でも、どれくらい前だっただろうか。また忘れてしまっていたのだろうか。
「……ちだ!……、…」
また声が聞こえる。さっきとは違う別の声。これは、ついさっきまで聞いていたような…。
「――そうすればすべてがわかるぜ!」
途端、眠気が弾けた。私を支配していた頭痛は強くなると同時に、私を覚醒させていく。開かれた眼から映る視界には、彼がいた。まだピントが定まらずぼやけているけれど、それでも彼が今ここにいるのだと確信できた。
カッ、と禍々しい光が包んだかと思えば、バタン、と何かが倒れた。風圧がふわりと私を撫でていく。やっと定まってきた視界を確認しながら、少しずつ身体を起こしていく。すると襲う酷い頭痛に思わず頭を押さえた。
大丈夫か。そんな誰かの声が脳内にぐわんぐわんとエコーする。ズキンズキンと頭痛は止まらない。痛い、痛い、痛い。それでも、起きなければという使命感に駆られるのはどうしてだろうか。ゆっくりと顔を上げて見えたのは、彼――雰囲気の違う、あの時と同じ武藤遊戯だった。
「運命の相手、見つかるといいね」
「運命の相手と出会い恋に落ちるであろう~!」
私は恋愛とは縁がないのだと、そう思っていたかった。友人ならばまだ大丈夫だ、しかし恋愛となると盲目となる。あの時の千紗のように。
しかし、占いなんてはなから信じていないつもりでいたが、眠気に襲われた時点でどこか期待していたのかもしれない。
もしかしたら運命の相手が現れるかも、なんて。
彼と一直線に視線が交わされる。今だけ、時が止まったような気分になった。頭痛などなかったかのように、ただ彼を見ていた。彼からすれば凝視という表現が最適か。しかし彼もまた、私を凝視して目を離さなかった。どうしてか、私も彼も動けなかった。
「…フガッ」
急に聞こえた変な音に肩が揺れる。音のするほうを見やれば、気持ちよさそうに寝ているあの一年のいびきだったようだ。がー、ごー、と途端に彼はいびきをかきはじめ、幸運なのか不運なのか先程の不思議な時間と感覚は跡形もなくなっていた。また彼――武藤を見れば、彼も私とほぼ同じくして私を見たようで、ぱちりと目が合う。気まずかったのか彼は逃げるように俯いて、私と彼二人の間の沈黙を破った。
「…大丈夫か?」
彼の言葉に答えもせずに、率直に思った疑問を口にする。
「…あなたは、本当に武藤君…?」
彼はそれにしばし面食らってから、暫く考えてその答えを出した。
「……今はきっと、そうだと思う」
考えた時間の割にはぼやけた返事をした彼に、また私は疑問をそのまま彼に放った。ズキリ、と頭が痛む。
「今は、って…どういうこと、やっぱりあなたは武藤君じゃないの…?」
彼は先程よりも短い時間で答えを出した。しかしそれもまた曖昧だった。ズキリ、ズキリ。
「…俺にもわからないが、何故だかそんな気がするぜ。俺は武藤遊戯であり、もう一人の誰かでもあるような…」
すると、途端に身体が重くなる。自分が床に倒れたのだと理解はできた。しかし、突如襲ってくる眠気にはどうも耐えることができずに、そのまま視界は暗転した。
*
「おい、大丈夫か!?」
自分の呼び掛けに、彼女の返事はない。何が起こったのかわからずにいると、彼女は穏やかに寝息をたてはじめ、それを聞いてほっと安堵した。
…彼女は確か、神庭実里、だったはずだ。
「…実里、か…」
その名前を口にした途端、ぞっと震えが全身を駆け巡る。みるみるうちに顔が熱を持ち、額に変な汗さえ出てくる。俺は今、焦っているのか。しかし、ゲーム中のような危機感のある焦燥とも違う。これはもっと暖かで、優しく、苦しいもの…。
不意に自分の支える彼女の首が傾き、はっと我に帰った。こんなことをしている場合ではなかった。狐蔵野はこのままでいいが、杏子と彼女は家に連れていかなければならない。流石に同時に二人を運べはしないから一人ずつになってしまうが、薬が抜けるのは少し起きていた彼女のほうが早いかもしれない。となると、先に杏子を運ぶべきか…。
見上げた時計はもうすぐで6時になる頃を指している。とりあえず今は動くべきだ。上着を脱いで小さく丸めると、彼女の頭の下に敷いた。こんなものしかなくて申し訳ないが、何もないよりはましだろう。そっと彼女の頭を下ろすと、彼女の唇が少しだけ動く。また顔が熱を抱きはじめる。動悸が激しい。
(いったい何だって言うんだ、これは…)
またはっとして、ぶるぶると首を横に降る。
なんだか彼女と会ってから少しおかしい。
「……は、…!」
誰かの声が聞こえる。どこかで聞いたことのある声だ。でも、どれくらい前だっただろうか。また忘れてしまっていたのだろうか。
「……ちだ!……、…」
また声が聞こえる。さっきとは違う別の声。これは、ついさっきまで聞いていたような…。
「――そうすればすべてがわかるぜ!」
途端、眠気が弾けた。私を支配していた頭痛は強くなると同時に、私を覚醒させていく。開かれた眼から映る視界には、彼がいた。まだピントが定まらずぼやけているけれど、それでも彼が今ここにいるのだと確信できた。
カッ、と禍々しい光が包んだかと思えば、バタン、と何かが倒れた。風圧がふわりと私を撫でていく。やっと定まってきた視界を確認しながら、少しずつ身体を起こしていく。すると襲う酷い頭痛に思わず頭を押さえた。
大丈夫か。そんな誰かの声が脳内にぐわんぐわんとエコーする。ズキンズキンと頭痛は止まらない。痛い、痛い、痛い。それでも、起きなければという使命感に駆られるのはどうしてだろうか。ゆっくりと顔を上げて見えたのは、彼――雰囲気の違う、あの時と同じ武藤遊戯だった。
「運命の相手、見つかるといいね」
「運命の相手と出会い恋に落ちるであろう~!」
私は恋愛とは縁がないのだと、そう思っていたかった。友人ならばまだ大丈夫だ、しかし恋愛となると盲目となる。あの時の千紗のように。
しかし、占いなんてはなから信じていないつもりでいたが、眠気に襲われた時点でどこか期待していたのかもしれない。
もしかしたら運命の相手が現れるかも、なんて。
彼と一直線に視線が交わされる。今だけ、時が止まったような気分になった。頭痛などなかったかのように、ただ彼を見ていた。彼からすれば凝視という表現が最適か。しかし彼もまた、私を凝視して目を離さなかった。どうしてか、私も彼も動けなかった。
「…フガッ」
急に聞こえた変な音に肩が揺れる。音のするほうを見やれば、気持ちよさそうに寝ているあの一年のいびきだったようだ。がー、ごー、と途端に彼はいびきをかきはじめ、幸運なのか不運なのか先程の不思議な時間と感覚は跡形もなくなっていた。また彼――武藤を見れば、彼も私とほぼ同じくして私を見たようで、ぱちりと目が合う。気まずかったのか彼は逃げるように俯いて、私と彼二人の間の沈黙を破った。
「…大丈夫か?」
彼の言葉に答えもせずに、率直に思った疑問を口にする。
「…あなたは、本当に武藤君…?」
彼はそれにしばし面食らってから、暫く考えてその答えを出した。
「……今はきっと、そうだと思う」
考えた時間の割にはぼやけた返事をした彼に、また私は疑問をそのまま彼に放った。ズキリ、と頭が痛む。
「今は、って…どういうこと、やっぱりあなたは武藤君じゃないの…?」
彼は先程よりも短い時間で答えを出した。しかしそれもまた曖昧だった。ズキリ、ズキリ。
「…俺にもわからないが、何故だかそんな気がするぜ。俺は武藤遊戯であり、もう一人の誰かでもあるような…」
すると、途端に身体が重くなる。自分が床に倒れたのだと理解はできた。しかし、突如襲ってくる眠気にはどうも耐えることができずに、そのまま視界は暗転した。
*
「おい、大丈夫か!?」
自分の呼び掛けに、彼女の返事はない。何が起こったのかわからずにいると、彼女は穏やかに寝息をたてはじめ、それを聞いてほっと安堵した。
…彼女は確か、神庭実里、だったはずだ。
「…実里、か…」
その名前を口にした途端、ぞっと震えが全身を駆け巡る。みるみるうちに顔が熱を持ち、額に変な汗さえ出てくる。俺は今、焦っているのか。しかし、ゲーム中のような危機感のある焦燥とも違う。これはもっと暖かで、優しく、苦しいもの…。
不意に自分の支える彼女の首が傾き、はっと我に帰った。こんなことをしている場合ではなかった。狐蔵野はこのままでいいが、杏子と彼女は家に連れていかなければならない。流石に同時に二人を運べはしないから一人ずつになってしまうが、薬が抜けるのは少し起きていた彼女のほうが早いかもしれない。となると、先に杏子を運ぶべきか…。
見上げた時計はもうすぐで6時になる頃を指している。とりあえず今は動くべきだ。上着を脱いで小さく丸めると、彼女の頭の下に敷いた。こんなものしかなくて申し訳ないが、何もないよりはましだろう。そっと彼女の頭を下ろすと、彼女の唇が少しだけ動く。また顔が熱を抱きはじめる。動悸が激しい。
(いったい何だって言うんだ、これは…)
またはっとして、ぶるぶると首を横に降る。
なんだか彼女と会ってから少しおかしい。