いつだったか。
俺の腕の中で眠りにつく前、はなはこんな話をした。

｢私にはね、一つだけ夢があるの｣

｢なんだ？｣

｢大好きな人と家族になる事。
私両親が離婚してお母さんと私だけの生活だったんだ。
私を育てる為に沢山働いてた。
不満はなくて、ここまで育ててもらった事には感謝しかない。
大きな愛情を持って育ててもらった。

でもやっぱり家で一人ぼっちで食べるご飯はとっても寂しかった。
でも言えなかった。
そんな感情を沢山ノートにつづってたものが今ヒロミくんが歌ってる歌なんだ。
だから家族がほしい。
だーれも寂しくないように、沢山の家族がほしい。｣

｢ヒデトと一緒だったらいいな……｣

最後はボソッと小さく呟いた。

｢お前を絶対一人にはしねぇよ。｣

俺も小さく呟いた。

はなとの未来を考えてないわけじゃない。
だが現実はそう甘くない。
養う為には金がいる。
俺達はなにがなんでもスターにならなきゃいけねぇ。
そう思えば思う程空回りして悔しい日々が続く。
夢を語るあいつに、素直じゃねぇ俺はいつも

｢いつかな｣

と答えてた。

それでもはなはいつも

｢ありがとう｣
と言って笑った。



迷いながら進んでいる俺達だったから

｢必ずスターになるから待ってろ。｣

とはっきり言ってやる事が出来なかったんだ。

バイトにライブに必死になるあまりに連絡もせずに家をあける事も増えた。
色んな奴の人生観が知りたいと最もらしい事を行って飲み歩く事も増えた。
はなと話す時間も会う時間もだんだん減っていったが、あいつはいつも文句を言わずに一緒に食べる事のないご飯を用意して待っていてくれてた。

｢大丈夫、私は大丈夫だよ｣
という言葉とともに。

俺はそんなはなに甘えてあいつの一番悲しむ事をずっとしてしまっていた。

あいつを一人ぼっちにしていたんだ。