その日もブライアンに来ていたはなは鉄生と源次と将太とトランプをして遊んでる。

俺はそんな光景をコーヒーを飲みながら眺めていた。
はなは時折俺の方を見ながら笑顔で話しかけてくる。それに俺も笑顔で返す。

｢柳、檻から出す覚悟は決まったか。｣

茶化す好誠に対し、

｢とっくに出来てる。ただあいつを檻から出したら、もしかしたら鈴蘭との抗争になるかもしれねぇ。それだけは避けたい。だから俺は直接狂犬に話をつけてくるよ。｣

｢マサならともかく秀吉はそこまでバカじゃねぇ。健闘を祈る。｣

俺と好誠は笑いながら拳同士を合わせた。

帰り道いつもの様に俺の後ろに乗るはな。違うのはいつも降ろす公園を通り過ぎた事。はなが後ろで何か言っているがそれを無視して進み、着いたのははなの家の前。

はなは相当ビックリしているらしいが単車から降り俺に向かい礼を言う。

そんなはなを俺は引き留める。

｢俺は武装の副頭だ。これから先何があるか分からねえ。だけど、お前を離したくない。お前が好きだ。｣

ビックリしたはなは涙をためた目を揺らしながら俺の言葉をただ聞いている。

｢お前は今まで危険な事に沢山巻き込まれたんだろう。だからお前は強くなった。いや、強がったんだ。これからもそんな事があるかもしれねぇ。だけど俺が守ってやる。強くいる必要も強がる必要もねぇ。俺が全力で守ってやる。なぁ、秀吉。こいつをただの女に戻してもいいよな。狂犬の強い妹じゃなく。ただの泣き虫な普通の女によ。｣

煙草の煙が出ている二階の窓に向かって俺はそう声をかけた。

はなはビックリして窓を見上げている。
恐らく答えが気になるのだろう。

｢傷つけて泣かせたら許さねぇからな。｣

一瞬俺を睨んだ秀吉は俺達に背を向けながらこう言って窓を閉めた。

素直じゃないその態度に俺は思わず笑顔がこぼれた。

まだ動揺しているはなに向かって俺は聞く。

｢なぁ、お前の答えは？｣

｢私も好き。絶対に守ってね。｣

そう言い涙を流しながら俺の胸に飛び込んできたはなを受けとめ言った。

｢狂犬からお前を奪った俺はハンターだな。一生離さないから覚悟しとけ。｣

昨日の出来事を知った番犬が鈴蘭の屋上で吠えていたと聞いたのはまた別のお話。