3 少年問答

少年問答 3

「良かったのかね? あそこまで手の内を晒してしまって」
 コナン少年が帰ったあとのこと。
 テスカの子供部屋で、部屋の主に声をかける者がいた。
 白い長髪を一括りにした美青年……ケツァルだ。
「明のこと以外は、包み隠さず話していたように思うが……それは正しい判断であったと言えるかね、きょうだい」
 冷静な声に、テスカは至極真面目に頷く。
 致し方あるまいよ。と返した褐色肌の少年は、後ろに手を組んで、それから言葉を発した。

「江戸川少年の反応を見ていたかね?」

 それに、物陰からやり取りをうかがっていたのだろうケツァルは頷く。
「理解不能……とまではいかないが、困惑はしていたようだな」
「そう。私が話した本当のこと・・・・・が、こちらの世界では荒唐無稽な妄想・・・・・・・として受け止められた。そう解釈したほうがいい結果となったのだよ」
「……なるほど、手の内を晒してみるものだな。役割ロール権能ルール、信仰、異世界……何もかも、こちらの世界の者には馴染みがないということの証左だ」
 明や転光生たちがいた東京の常識は、こちらの東京では一切通用しないということ。
 なぜ人の姿となったかは分からないが、こちらの住人は、自分たち転光生を「異質な人間」と見ることしかできない、ということ。
 江戸川少年とのやり取りでそれを掴んだテスカは、ケツァルへと目を向けた。
「我々の個人情報を漏らしても、信じる者はそういないだろうね。……だが、用心しておくに越したことはない」
「うん。大っぴらに情報を明け渡すのは、さっきので終わりにしてくれ、テスカ」
「そうしよう」

 それはさておき。
 とケツァルは言う。
 やや目を丸くするテスカを前に、ケツァルはある方向を指さした。
 テスカの赤いランドセルが置かれた、机の上だった。

「宿題を済ませておけよ、きょうだい」

「……君たち双子は嫌なことを思い出させるプロかね!」
 テスカの不機嫌なツッコミが部屋に響いた。
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