2 青信号

青信号 3

「今日はびっくりしちゃったね、コナンくん」
 毛利蘭はしたなが家からの帰り道、江戸川コナンにそう声をかける。
 おそらく毛利小五郎とよく似た声の持ち主に出会ったからだろうことは、江戸川少年にも察せられたので、少年は「うん」と短く答えた。
 コナンにとっては、小五郎の声に似た青年個人よりも、あの家族全体が不思議な印象である。特にケツァルと名乗る青年と明は、異質な雰囲気のように思えた。
 なぜ異質だと思うのか、それはまだ分からない。理屈で考えようにも、判断材料が乏しい。茶と茶菓子を出してくれて、明とテスカの知人としてもてなしてくれたが、気になる点も多かった。

 黄色い瞳のイツァムナーという老人を除いて、 皆、緑色の目をしていた。しかし、どこの国の人か訊ねたとき、誰も答えることができなかったのは何故だ。
 テスカが「エル……」と口にしたとき、明が「それは国の名前じゃないだろ」と遮っていたのを覚えている。
 国の名前じゃないなら何なのだ。地域や通りの名前か? そうならばよく聞いておくべきだった。検索すればどこの国のものかなど、すぐに分かるのだから。
 日本人とは思えない、きれいでやや彫りの深い顔立ちの一家に、日本人らしき明がぽつねんと存在していたことも気になる。
 以前、おそらく自分だけ血が繋がっていない、と明本人が言っていたことがあるが、どういう事情であの家族に引き取られたのだろうか。

 妙といえば、テスカ少年も妙なのだ。
 口調は大人びていて……まあ、行動は子供のようでもあるが、何より、コナンが明を観察していたことを目ざとく察して妨害を行ってきた。
 ケツァル青年が「アトラトル」と言っていたので検索してみたところ、投槍器だろうものがヒットした。そのアトラトルを扱い、相手の服を貫く芸当を見せていたテスカ少年は、只者ではないだろう。

(まだ情報が少ないな……)
 転校生とその家族を疑うわけではないのだが、個性豊かという言葉では片付けられないほどの面々だったのだ。
 少しばかり詮索したくもなるというもの。
 明日。
 明日、学校に登校して、テスカに出会ったら。
 いくつか訊いてみてもいいのではないか。
 江戸川コナンは、そう思った。
3/3ページ
拍手