彼らは手を繋がない
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ガシャーン!!!!
耳を覆いたくなるような破壊音。
割れたのはショーウィンドウのガラスだ。
ディスプレイされていたアクセサリーはならず者の足の下。
ユキが気に入ったイヤリングもその中にある。
「この店のもんは全部頂いていくぜ!!」
ズカズカと入ってくる男たち。
皆腰には剣を携えている。
「キャアアアア!!!」
他の客は悲鳴を上げてその場にへたりこんだ。
「や、止めてください!」
店員は果敢にも男たちに立ち向かう。
「あ? うるせぇな。おれに指図すんじゃねぇ!」
男は拳銃を数発、こちらに向かって発砲した。
シャンクスは繋いでいた手を離して、自身の剣に手をかけた。
目にも止まらぬ早さで抜刀。
斬られた弾丸は事切れてその場に落ちる。
だが、一発がシャンクスの腕を掠めた。
「シャンクス!!」
「大丈夫、掠っただけだ」
ユキに優しく微笑んだ後、彼は男たちを睨みつけた。
ビリビリ、と電気が走ったような痙攣を起こしたかと思うと、男たちは皆白目を剥いて倒れた。
「へ、え、あっ、ありがとうございます!!!」
一瞬の出来事に唖然とする店員。
「もうじき海軍が来るだろう」
だが、すぐに我に返る。
「あの、何かお礼を!」
「それじゃあ……」
シャンクスは店をぐるりと見回した。
「これ、もらってもいいか?」
指さしたのはシンプルなハート型のイヤリング。
ショーウィンドウに飾ってあったものとテイストは似ている。
「はい! もちろんです!」
「ありがとな。行くぞ、ユキ」
ゆっくりしていたら海軍が来てしまう。
イヤリングとネックレスを手に、ふたりは店を出た。
「ここまで来れば大丈夫だろ」
ジュエリーショップとはふたつほど通りを進んだ並木道。
「ユキ。ちょっとじっとしてろよ」
荒っぽくポケットに入れていたあのイヤリングを、器用に片手でユキの耳にはめる。
「……くすぐったい」
「もうちょい、ほら……、やっぱり綺麗だ。似合ってる」
もう、頬の変化は仕方がない。
「ありがとう」
「ん。じゃあ帰るか」
差し出した手を、ユキは迷ったように見つめた。
「どうした?」
どこか寂しげに訊ねるシャンクス。
ユキはそっとシャンクスの腕に触れた。
「もし、手を繋いでなかったら、シャンクスは怪我しなかった。もし、こっちの腕まで失ったら……」
ユキはシャンクスの瞳をしっかりと見つめる。
「あたし、シャンクスの枷にはなりたくない。この手を縛りたくない。……だから、手は繋ぎたくない」
これほど、相手のことを考えられる彼女がどこにいるだろうか。
ユキはシャンクスが海賊であることをよく分かっている。
「ほんっと、お前は最高の相棒だよ」
シャンクスはユキの頭を愛おしげに撫でた。
少しでもこの愛しい思いが伝わっていればいいのだが。
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