優しさは、いらない
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ユキの怒りが再発したのは、その日の夜。
「だから!シャンクスはあの部屋で寝てって言ってんの!」
クルーたちの寝室に入っていこうとするシャンクスのマントを引っ張って、ユキは言う。
「その話はもう終わったんじゃなかったのか」
シャンクスは眠そうに目を擦りながら言った。
「あ、ルウ助けてくれ〜」
このままではマントが破れてしまいそうだったので、やって来たルウに助けを求めた。
だが、
「おれもお頭が部屋に戻ることに賛成だな」
ルウはユキの味方だ。
それだけではなく、
「お頭寝相悪すぎるもんな」
「下敷きになる方の気持ちも考えてくれっての」
そうだそうだ、と次々にクルーに言われて、シャンクスは項垂れる。
「この薄情者!!」
叫んでも、クルーたちは笑って扉を閉めた。
一向に力を緩めないユキにシャンクスは向き直った。
「……だったらふたりで使うか?」
もちろん、シャンクスは冗談のつもりだ。
しかし、どうしても頷いてくれないシャンクスに少し苛立っていたユキは、
「いいよ、乗った!」
「え?」
「……あ」
シャンクスの間抜けな顔に、冷静になった。
今、自分は何を口走った……?
事の顛末を見ていたベックマンがさも愉しそうに助け舟を出す。
「良いのか? 引き下がるなら今だぞ」
だが、ユキの辞書にそのような言葉は存在しない。
「良いって言ってる!!!」
もう、後には戻れない。
◆
「じゃあユキ、おやすみ」
シャンクスの部屋に入ったとたん、彼は床にごろりと寝転んだ。
「待って待って待って!」
「何だよ、まだ不満があるのか?」
「あるよ! 何で床で寝ようとするの!? ベッドで寝て!」
「ベッドはユキが使えよ」
それでは全く意味がないではないか。
「じゃああたしも床で寝る!」
頑固なユキに、シャンクスはため息をついた。
ひょいっとユキを担いでベッドに寝かせ、ユキに背を向けるようにしてシャンクスももぐり込んだ。
「これで文句ないだろ?」
「えっ……ちょっ!?」
ユキは顔を真っ赤にした。
ためらいもなく同じベッドを使うことに。
妙な胸の高鳴りを落ち着けようと、ユキは言った。
「そ、そのマント脱がないの?」
「ああ」
わざとらしいくらいの強い口調に、ユキはハッと思い出した。
マントの下に隠された、虚空を。
「……あたしは、気にしないよ」
あんたが気にしてくれなかったように。
しかし、シャンクスはただ一言だけ、
「おやすみ」
と言った。