その頃ウルル達と楽しく留守番をしたいた幸恵だったが、二人は外で遊んでくると言い残し、今浦原商店にいるのは彼女だけだった。


久々の現世という事もあり、幸恵は以前自分が使用していた部屋に行くと、そこには今まで自分が使っていた家具や衣類がそのままに置かれていた。



「……そのまま残しておいてくれたんだ」


シンと静まり返った部屋に彼女の声だけが響き渡り晴れ渡った空が光とともに幸恵の部屋を照らした。

喜「当たりまえじゃないスか」


「っ…！！き、…喜助さん」


自分しか居ないと思っていたが、いつの間にか帰ってきていた喜助は彼女の背後から声をかけると、幸恵は突然の声に一瞬驚いた。

喜「此処が幸恵さんの帰ってくる場所なんスから」

「…………喜助さん」


喜「何スか?」

「…私、この世界に来る前は本当に普通の生活をしていたんだ
…現世に住んでいる人たちと何ら変わりない

…普通に生活して、普通に友達と遊んで、普通に家族と過ごすの……

此処の世界は私には只の漫画の世界でもあり、理想だったんだ……

本を読みながら、「私だったらルキアを助けられるのに」とか「隊長各の皆に逢いたいとか」言って、いざ自分がこの世界に来たら今までの思いは凄く甘い考えなんだなって思ったの…

…理想と現実は違うってことはこの事なんだなぁってね………ーーー。」



喜「……幸恵さん？」


「正直怖かった！

……今まで握った事の無い刀を手にして、見た事も無い大量の血を目にして、感じた事の無い恐怖や、霊圧を肌で感じて

……尸魂界に居る死神は毎日が死と隣り合わせなんだって
……今まで普通に生きてきた私なんかが此処に居たら一発で殺されるって思ったんだ」


喜「じゃあ何でそのまま現世に…アタシの隣に居てくれなかったんスか？
アタシとしては危険な場所に行ってほしくなかった…
ましてや朽木さんや黒崎さんには数える程度しか会ってないじゃないですか、そんな幸恵さんが何で命をかけてまで」



「命をかけるのに日数なんて関係ないよ…
それにルキアは私の大切な友達だから。
目の前の尊い命を私は見捨てたくなかったの…
あんなクズの為に沢山の人たちを苦しませたくなかったの…
…凄く怖かったけど、大切な人を守れて死ぬなら、私は後悔しないって今はそう思えるようになったんだ」



彼女の話を一言一句聞き漏らさないように聞いていた喜助の表情は帽子が邪魔をして見る事はできなかったが、霊圧の感じからして喜助の気持ちが少しづつ伝わってきた。



喜「そんな事言わないでください」


「…え？…キャッ！//////」


彼の低い声が聞こえてきたと思った次の瞬間体が急にグイッと引っ張られ、小さく悲鳴を上げたときには喜助にギュッと抱きしめられていた。



喜「私は貴方に傷ついてほしくない…涙を流してほしくない…アタシの為にアタシの隣で笑っていてほしい！
…お願いですからそんな事言わないでください…アタシは貴方を失いたくないっス」



「っ…喜助さん/////」



喜「幸恵さん…アタシは幸恵が大好きです。
もう手放したくありません」



「っ…///////ありがとう喜助さん//////」


幸恵は優しく微笑むとギュッと喜助を抱きしめ、彼の胸に顔を伏せた。







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