54話 溶けゆく雪とともに
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紅「名無し!!」
”ガバっ”
体を勢いよく起こすとそこに名無しの姿は無く、視線の先には家具と名無しが使用している薬品棚があるだけだった。
ーーゆ…夢だったのか…
あれからどのくらい眠ってた?
少しばかりボーッとする頭ををなんとかフル回転させると、俺は部屋を出て名無しを探しに行く事にした。
紅「…ハァ」
あんな夢を見てしまっ所為だろうか?
…気分が優れん
…それとも…
【自分の気持ちを押し殺してまで、ずっとこのままの関係でいいのか?】
俺自身がそうさせてしまっているからだろうか?
廊下を歩き進めて行くと、頭の中では独角の言葉が俺を苦しめていくと同時に、一歩一歩足を前に出す度に溜め息が漏れていた。
【俺は妖怪で名無しは人間だ
初めから通じるものはない…。】
【だったら何で名無しをここへ連れてきた?】
あぁ…確かにそうだ。
通じるものが無いと思うなら…なぜこんなところに連れてきてしまったんだろうな。
いつの間にか俺の足はその場に立ち止まっていた。
城の渡り廊下で立ち止まった俺の足は動く事を止めてしまい、冷たい風と雪が吹き付けてこようとしても、その時は全く寒さなど感じなかった。
その時だった…。
「紅孩児?」
紅「っ!」
「こんな吹きさらしの渡り廊下で何突っ立ってるの?
こんなところに居たら風邪引いちゃうよ?」
紅「…名無し」
声をかけられたので振り向くと、そこには資料を抱えた名無しの姿があり、彼女もまた鼻と耳を赤くしていた。
「お香けっこう効いてたみたいだね
ゆっくり寝られた?」
紅「あぁ
ーーそれよりも名無しの方こそ体が冷えているんじゃないのか?」
「さっきまで地下の資料室にいたからね
あそこって暖房なんてないから寒いのよ∪
ーーそれに今日は雪も降っているからね」
そう言うと名無しはフワフワと舞い降りてくる雪に目掛けて空に向かって手を伸ばした。
その姿はとても美しく、俺は柄にも無く見とれてしまっていた。
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