51話 その傷の証
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「さん……敖潤さん!」
敖「ぁ…何だ?」
何度か私の名を呼んでいたらしく、その問いかけにハッとして名無しに視線をやると、そこには心配そうな表情を浮かべた彼女がいた。
「何だじゃ無いです!
手から血が出ています!」
敖「……問題ない
これぐらい大した事無い」
「駄目です!
ちゃんと手当てしないとばい菌入っちゃう!」
空「名無し大丈夫だったか!?」
「私は大丈夫だよ悟空
でも私のせいで敖潤さんが怪我しちゃって…
私手当をしてあげないといけないから中に戻るわね」
空「そっか、分かった!
俺の方こそゴメンな∪」
「ううん!
私の注意力不足だったからね
じゃあ悟空またね」
名無しはあの子供と別れると、私の手を引いて建物の中へ連れて行かれた。
ーー名無しの手…想像以上に小さいのだな
私の手を引きながら前を歩く彼女の姿を見て、己の手に伝わってくるその温もりが、更に自分の体を熱くさせた。
廊下を暫く歩くと、他の建物から少し離れた場所に連れてこられた。
人気もあまり無く、我々が普段いるような場所みたいに騒がしくない。
聞こえてくるのは鳥のさえずりと、サァアっと流れる穏やかな風の音だけだった。
まぁそうだろうな
此処は神々が住まう神殿……それに名無しはあの観世音菩薩の姪でもあるからな。
「此処まで連れてきてしまってごめんなさい
直ぐに救急箱持ってくるからそこのソファーにでも座っててください」
名無しの部屋だろうか…
開けられた窓からは心地よい風が入り、桜の花びらとともにカーテンを揺らしていた。
俺は救急箱を取りにいった彼女の後ろ姿を見つめ、一応言われた通り部屋の中央にあった大きめのソファーに腰をかけた。
そして自分の手を見ると手の甲を擦りむいていたらしく、ヒリヒリとした痛みとともに血も出ていた。
「お待たせしました
手を見せてください」
敖「……あぁ」
私はその手を素直に差出した。
するとその傷を見た瞬間、名無しの表情は再び曇ってしまった。
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