第32話 安堵の目覚め
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……っ」
光に導かれ、ゆっくりと瞼を上げた視界の先には、柔らかな朝の光が一面に広がっていた。
——ここは…
重たい目蓋が閉じないようにゆっくり目を動かしながら、今自分が何処にいるのかボーッとする頭で状況を確認すると、広い和室に畳の香り、微かに漂う薬草の匂い。
布団に包まれた体に感じる重さと熱——そして…
隣で手を握ってくれている人のぬくもり。
「——びゃく…や…?」
その小さな声が届いた瞬間、白哉の長いまつ毛が揺れる。
彼は眠ったまま彼女の手を握っていたが、わずかに目を開けると鏡花の視線と交わった。
白「……鏡花」
その声は彼女の目が開いたことへの安堵と、心からの喜びを滲ませた低く柔らかなものだった。
——なんで白哉がここに?
私…いつの間に瀞霊廷に帰ってきたんだろう
白「気分は……どうだ」
「……少し……だるい……けど……声……は出る……」
白「それで十分だ」
白哉は彼女の手をそっと包みなおし、額にかかった髪を指先で優しく払った。
その手つきは普段の彼からは想像できないほどに繊細であたたかかった。
「——私…いつ…帰って」
白「いや、帰ってきたわけではない」
「…?」
白哉の言葉に鏡花は”?”を浮かべていると、白哉の背後の襖から”ガタンっ”と何かを落とす音が聞こえた。
何事かと思い鏡花と白哉はそちらに視線を送ると、そこには目に涙を浮かべている千鶴の姿があった。
「…ち…づる…ちゃ」
千「…鏡花…さん」
千鶴は目にたくさんの涙を浮かべたまま、両手で口元を覆ってこちらを見つめていた。
こらえていた感情が堰を切ったように溢れ出し、ぽろぽろと涙が頬を伝って畳に落ちていく。
千「ぅうっ……ほんとに……!
よかったぁ……!
目、覚ましてくれて……!」
「ちづ……るちゃん……」
鏡花は、まだ力の入らない喉を震わせ、かすれた声でその名を呼ぶ。
千鶴はもう我慢しきれず彼女のもとへ駆け寄ると、その場に膝をつきそっと鏡花の手の上に自分の手を重ねた。
千「怖かったです…このまま鏡花さんが目を覚さなかったらどうしようって考えただけで…怖くてこの二日間生きてる心地がしませんでした!」
「——ご…めん…怖い思い…させちゃって…
ごめん…悲しい…思い…させちゃって——
そして…あり…がとう——」
白「卯ノ花隊長と虎徹副隊長の治療で一命は取り留めた
その後のお前の命を繋ぎ止めたのは……彼女の献身だ」
千鶴は「そんな……」と首を横に振ったが、白哉の言葉が冗談でないことは、彼の表情からも伝わっていた。
鏡花は言葉に詰まりながらも力を込めて言った。
「ありがとう……ほんとうに……ありがとう……」
その声に、千鶴はただ涙を流しながら、しっかりと彼女の手を握りしめていた。
やがてそっと襖の外から気配を感じて視線を向けると、そこには沖田や斎藤、原田、土方ら、新選組の仲間たちが立っていた。
沖「ようやっと起きたみたいだね鏡花ちゃん」
斎「目が覚めたみたいで安心したぞ」
原「鏡花が寝てる間、土方さんが3回も様子見に来てたんだぜ」
土「……余計なことを言うな」
永「鏡花ちゃん凄く心配したんだぜ!」
平「これで一安心だな!」
新選組の仲間たちが口々に声をかける中、鏡花はぼんやりとした意識の中でも彼ら一人ひとりの姿を見つめていた。
…みんな、無事……。
そう思った次の瞬間、彼女の胸にこみあげるものがあった。
皆の身体にはまだ包帯が巻かれ、顔や腕、胸元にも痛々しい痣や傷が見える。
だけど、誰一人として倒れてはおらず、皆自分の足で立ち、こうして顔を見せに来てくれた。
,
