第62話 それぞれの道
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三「幸恵の事を頼む」
惷「…あぁ」
その日の夜、悟浄達と別れた三蔵はグッタリとしている幸恵を抱きかかえると、宿に戻り惷涯に彼女の手当を任せた。
八戒同様に彼女の容態も良いものとは言えず、先ほどの悟空との戦いで負った傷はとても酷いもので、三蔵は何も出来なかった自分に苛立ちを感じると、そのまま自分の部屋に戻った。
惷【……幸恵様】
「ゴメン……今回は…かなり……無茶しちゃった…」
惷【無茶をするなとは言わぬ
ーーただ自分の体を大切にしてほしいだけなのだ】
「ぅ…ハァッ…ハッ」
ベッドにうつ伏せに寝かせると彼女の背中には悟空の攻撃による傷があり、そこからは未だに血が止まる事無く流れ出ていた。
惷(……酷い怪我だ)
「……惷涯は…大丈夫…だった?」
惷「私は問題ない」
「そ、なら良かった。
貴方の力を……うっ…借りてたと…言っても…ハァッ……それなりの…ダメージはありそうだったから…ハァッ」
惷【ダメージがあったとしても、私はそう簡単にやられはせぬ】
惷涯は八戒が使う気功のような光りを出すと、彼女を包み込むようにして全身を覆っていき、またたく間に幸恵の傷は癒えていった。
「ありがとう惷涯」
惷【傷は癒えてもあまり無理をしない事だ】
「うん…今日はもう無理はしないよ
明日から移動開始すると思うからね
ーーねぇ惷涯……私の知るこの世界の未来はここまでなんだ。
この先皆がどうなるか私も知らないの…。
三蔵の方に残って正解なのか…それとも八戒達の方に行けば良かったのか……正直分からない
ーーでも……今は何となく三蔵の方にいてあげないとって思っちゃって」
惷【……先の未来が分からない事が本来当たり前の事。
幸恵様は今日までの未来を知っていたからこそ誰よりも頑張り、皆を守ろうとしていた。
幸恵様は皆と同じ出発地点に立っただけの事だーー。
この先の事は誰も分からぬ
分からぬが、果たそうとしている目的は皆同じ…。
今は離ればなれであっても、また一つになれる】
惷涯は幸恵の髪にそっと触れ、優しい笑みを浮かべると、彼のその表情を見た幸恵も小さく微笑んだ。
「うん……私もそう信じてる。
三蔵一行はこのままじゃ終わらないって…
離ればなれになるのは今だけ」
惷【幸恵様が信じてさへいれば、また新たに風が吹くであろう】
「惷涯は本当に優しいね!
あ、私ちょっと三蔵の所に行ってくる。
あの人も結構心配してると思うから」
幸恵は惷涯にお礼を言うと、少々フラつく体を壁伝いに支えながら部屋を出ると、その脚で三蔵の部屋へと向かった。
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