17話 不器用な俺
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今日の江戸は朝から大雨だった。
落ちてくる雨が行交う人たちの足下を濡らしていき、人々の会話も雨音がすべてをかき消していってしまうんじゃないかという程だった。
いつもならこんな雨の日は外にも出ずに、家でジャンプでも読みながら暇な一日をダラダラと過ごしているが、今日のこの日に限って冷蔵庫には俺の大好きなイチゴ牛乳が入ってなかった。
近くのコンビにに行って帰ってくりゃ15分か20分で済むけど、俺はそんな帰り道、道のど真ん中で大喧嘩をしている土方と名無しの姿を発見した。
名無しは万事屋の従業員で、いつも万事屋の為に頑張っている。
すげぇ可愛いし、気さくな性格してるし、常に笑顔だし…。
まぁ、正直言って俺は惚れていた……。
いや、現在進行形で「惚れている」って言った方が正しいな。
でも名無しはあのマヨラの彼女だーー。
俺が名無しの事が好きだと気づいたときには、もうあいつの女になっていた……。
「時すでに遅し」とはこの事なんだろうなぁ
俺が名無しの事を好きだと気づいたのが最近…。
あの二人がつき合いだしたのも最近…。
本来ならまだ熱々のカップルじゃねぇの?
そのはずなのにこの雨の中、ビショビショに濡れている二人は道路のど真ん中で喧嘩をしていた。
この距離と雨音じゃ、何を言い合っているのか分からねぇ
分からねぇけど、名無しがあそこまで怒ってる姿を見たのは初めてだった。
銀「やべっ、こっちに来る!∪」
俺は土方と別れてこっちに向かってくる名無しに気づいて、すぐさま建物の影に隠れた。
ゆっくりと歩いてくる名無しに見つからねぇようにしていると、俺に気づかない名無しはそのまま横を通り過ぎて行った。
銀「…っ!」
そのときに見た名無しの表情は、いつもと違ってとても切な気な表情になっていた。
あのとき頬を伝っていた液体は雨なんかじゃなく、彼女の目から流れ落ちた涙なんだとそのとき気づいた。
本当はいつものようなやる気のないテンションで「風邪引くぞぉ〜」って声をかけて、そっと名無しに傘を差出して…。
名無しもいつもみたいに「ありがとう銀ちゃん」って笑いながら礼を言って二人で帰るって……そんな甘い感じの展開を想像していたんだけどーー。
名無しはいつものような雰囲気ではなく、その後ろ姿はまるで捨てられた仔犬のようにトボトボと帰っていった。
銀「……何であのときーー」
何であのとき俺は…
名無しの腕を掴んで引き止めなかったんだ?
好きな女が目の前で泣いてんのに……
ーーー俺は名無しの腕すら掴む事ができなかった
銀「…はぁ〜…今日の天気がそうさせてんのか?
…コノヤロォー」
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