第53話 恋は盲目から鬼になる
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
イゾウの部屋を出てから、廊下を歩く間マルコは一言も口をきかなかった。
彼女が何か言おうとすると、それを制するように手をそっと強く握られ、無言だったが温度だけはやたらと熱かった。
長い廊下を歩き続けていると、船内ですれ違うクルー達はマルコと目を合わせないようにするために視線を逸らし、彼らが近づくたびにまるで嵐の目から逃げるように道を開けた。
怒っているのか、焦っているのか、それとも…嫉妬か。
マルコの表情は横からではよく見えなかったが、彼の手のひらに籠る熱と指先に込められたわずかな力が、心のざわめきを何より雄弁に物語っていた。
……怒ってる、よね……∪
ひなみは歩きながら何度も心の中で問いかけたが、答えは沈黙のままだった。
マルコは一言も発しないまま、やがて彼女を部屋へと押し込むように入れると、自分も無言で中へ入り戸を閉める音と同時に、”ガチャリ”と鍵が回される音が響いた。
「えっと…マルコ…さん?∪」
マ「……」
室内に満ちるのは重苦しい沈黙。
マルコは背中を扉につけたまま彼女から目を逸らしていたが、すぐにその視線がちらりと彼女へと向けられる。
マ「脱走防止だ。
ひなみがまたどっか行かねぇようにな」
「マルコさんが鍵かけちゃたから、どこにも行けないけど∪」
先ほどの鬼のような表情はすっかり消えていて、今はただの——いや、かなり溺愛成分多めの彼氏の顔だった。
マ「……そもそも、なんでイゾウの部屋にいたんだよい」
マルコは低めの声でそう言いながら、じりじりと彼女との距離を詰めてくる。
睨んでるわけじゃないが、だが瞳の奥で静かに燃えているような熱の視線にひなみは思わず後ずさった。
「え?それはサッチさんが…」
マ「——サッチだと?」
「う、うん
サッチさんが…イゾウさんがいい茶葉とお菓子が手に入ったって言ってたから行ってくるといいよって」
彼女からその話を聞いた途端マルコはサッチに対して怒りを覚えた。
あの野郎#
初めっからひなみの居場所を知ってたってことか#
「それで、イゾウさんの部屋でご馳走になってたの」
マ「理由は分かったにせよ…それでも許せねぇよい
2人きりで、あんな近い距離で……
それに俺からしたら”たかがお茶”じゃねェ
アイツと過ごす時間が“特別”だったって顔してたから」
「そ、そんなつもりじゃ……!」
マルコはすっと手を伸ばし彼女の頬に触れると、その指先は熱くて優しくてだけどちょっと不器用な感じがした。
マ「そんなつもりじゃねぇ事は分かってる
…けど、ひなみとの距離が近いのも、俺だけの特権であってほしいって思っちまったんだよね」
突然グイっと肩を引き寄せられて、気づいたら壁ドンされていた。
「ちょ……壁、ドン!?/////∪」
マ「なぁ、ひなみ」
耳元で囁かれる声に、背筋がぞわっとする。
マ「俺、めちゃくちゃヤキモチ焼きなの…知ってた?」
「い、今知ったかも……!」
マ「これからもっと知ってもらおうかな」
マルコの吐息が耳にかかるたび、ひなみの鼓動は速まっていき、その腕の中で身じろぎしようとしても、彼の手はまるで逃がさないと言わんばかりにしっかりと彼女の肩を押さえていた。
「……こ、こんなの、反則……っ////」
ひなみは視線を逸らしながらも小さく呟いた。
だけどマルコの瞳は真剣で、少しもふざけてなどいなかった。
マ「……反則って言われても抑えられねェよい
ひなみが他の男と楽しそうにしてる姿、二度と見たくねェって思っちまったから……」
マルコはそのまま、額を彼女の額にそっとくっつけた。
マ「なぁ、ひなみ
俺がちゃんと、“俺だけを見ててほしい”って言ったら困る?」
彼の声はとても静かで、でもどこか弱くて、彼女にすがるように響いた。
ひなみはそっと彼の胸に手を添えて、真っ直ぐに彼の目を見た。
「困るわけないよ。
むしろ……そんなふうに言ってくれるの嬉しい////」
そう答えるとマルコの目がふっと和らいだ。
けれど、その表情の中にほんのりとした色気と独占欲が混じっていたのを彼女は見逃さなかった。
マ「なら証明してもらおうか」
「し、証明!? な、なにを!?」
マルコはにやりと笑い、彼女の両手をそっと取り上げて自分の胸元へと押し当てる。
マ「“俺のものだ”ってちゃんと身体で覚えさせてやる」
「ちょっ……待っ……それって、いま!? 今なの!?/////∪」
マ「今以外いつやるってんだよい」
いつもの柔らかく落ち着いた口調のはずなのに、声のトーンはどこか艶を帯びていて、耳元で響くたびに彼女の膝から力が抜けていく。
そのままマルコは彼女の腰を引き寄せ、ふわりと抱き上げた。
「わわっ!? ちょ、マルコさん!?///」
マ「鍵もかけたし、もう誰にも邪魔されねェよ」
「こ、こんなときだけ準備いいのやめて!?∪」
ベッドに運ばれた彼女をマルコはまるで宝物のようにそっとシーツの上におろし、その上に自分も身体を重ねると、ふわりと前髪をかき分けて彼女の額にキスを落とした。
マ「怒ったり、拗ねたり、ヤキモチ妬いたりするのって全部ひなみが好きすぎるからだ
……それだけはちゃんと覚えとけよ?」
その一言はまるで静かに火を灯すように彼女の胸を熱くした。
「……うん。ちゃんと、覚える……」
彼の胸に顔を埋めながらひなみはそっと微笑んだ。
どこまでも一途で、どこまでも愛情深い不死鳥の愛に、心ごと包まれて——
END
4/4ページ
