第53話 恋は盲目から鬼になる
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マ「……よう、イゾウ…よく、くつろいでんな、おい」
低く絞り出すような声が部屋に響く。
イゾ「おいおい…もう少し静かに入ってこれねぇのかい?
お嬢だって怖がってんじゃねぇか」
イゾウは彼女を守るように自分の後に身を隠すと、それを見たマルコは再び口を開いた。
マ「……てめぇが楽しそうにお茶なんぞ淹れてるとは思わなかったよい…
よりによって“俺の彼女と二人きり”でか……?」
(えっ、えっ!?
なんでマルコさんそんなに怒ってるの!?∪)
戸惑い怯えている彼女をよそに、マルコは一歩また一歩と室内へ足を踏み入れる。
彼の背後から“ゴゴゴ……”という効果音が聞こえてきそうな気迫で、まるで今にも刀を抜く武士のよう。
そのままイゾウの目前でピタリと止まると——
マ「悪いけどこの時間は“終了”だ。
ひなみは連れて帰る」
イゾウ「……ったく。
俺の貴重な癒し時間を…」
ぼやくイゾウを他所にマルコは鋭い視線を彼女に向けながら、ゆっくりとひなみに近づいた。
けれど、その歩みには焦りが滲んでいるようだった。
彼の視線と空気の重みにひなみはそっとお茶を置いた。
「マルコさん、あの……もしかして私のこと探してたの?∪」
マ「“もしかして”じゃねぇよ
船内くまなく走って探したよい
それで最後にラクヨウからここにいることを聞かされたんだ」
マルコはジッと彼女を見下ろしたが、その目には怒りだけでなく、どこか寂しさと焦りの混じった色も滲んでいた。
マ「お前がいねぇだけで、俺は地獄だったんだぜ?」
「……えっ……」
マ「立って……もう行くぞ」
「えっ?で、でも……お茶とお菓子が——!」
マ「知るか……俺の我慢、限界来てんだよ」
その低く抑えられた声は、普段の穏やかなマルコからは想像もつかないほど深く沈んでいた。
イゾ「……ずいぶんとご執心だな」
イゾウは苦笑しながら残ったお茶を啜る。
イゾ「ま、今のところ奪う気なんてないけどよ
俺の貴重な癒し時間また持ってかれたな」
彼の言葉にはどこか寂しげな響きが混じっていたが、マルコはそんなイゾウに目を合わせもせず彼女の手首を軽く掴んだ。
マ「……じゃあなイゾウ。
部屋の修理費は船の経費で落としてくれ」
イゾ「ったく…もちろんそのつもりだ」
ぽつりと返すイゾウの声を背にマルコはひなみを静かに引いて部屋を出ていった。
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