第53話 恋は盲目から鬼になる
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一方その頃イゾウの部屋では、まさかマルコが自分のことを鬼の形相で探し回り、同時に船内を破壊していることすら知らないひなみは、彼の部屋でほのかに香ばしいお茶の香りに包まれながら、至福のひとときを過ごしていた。
イゾウの私室は格式ある和室のような雰囲気が漂っており、丁寧に整えられた畳、低い机に掛けられた花柄の布、そしてほのかに香るお香の匂いが彼女の心を落ち着かせた。
「ふぅ……」
両手で湯呑を包みながら、ひなみは香ばしいお茶の香りを深く吸い込み、ふと見ればその湯呑には彼女が好きな色合いをした絵柄があしらわれていた。
イゾ「気に入ったかい?」
イゾウは穏やかな微笑みを浮かべて問いかけると、自分で選んだ茶器が彼女に受け入れられたのがどうやら嬉しかったようだ。
「はい!イゾウさんが煎れてくれるお茶は本当に美味しいから、ついつい飲み過ぎちゃいますね
それにこの湯呑みも私好みで大好きです!」
イゾ「それはお嬢用の湯呑みだ
ここではその湯呑みでお茶を煎れてやるからいつでも来るといい」
イゾウは小さく笑みを浮かべると、人肌まで温度の下がったお茶を一口流し込んだ。
イゾ「たまにはこういう静かな時間もいいだろう。
…騒がしい奴らに囲まれてばっかりじゃ疲れるだろ?」
ひなみは、くすっと笑って頷いた。
「はい
でも騒がしいのも、私は楽しくて嫌いじゃないですよ」
イゾ「“あの人たち”の中には、もちろん俺も含まれてるんだろう?」
「えっ、イゾウさんは騒がしくないですよ
というか、むしろ癒し系ですかね!」
イゾ「…“癒し系”って初めて言われたな」
苦笑するイゾウだったが、その頬はほんの少しだけ赤くなっていた。
イゾ「なぁ、お嬢」
「ん?」
イゾ「……マルコや、エースたちと過ごす時間も、もちろんいいとは思うけどさ
たまにはこうして、“俺”と二人っきりで過ごすのも、悪くないって思ってくれたら嬉しい」
「もちろんです!
イゾウさんとこうやって穏やかなひと時を過ごす時間も大好きです」
そんな彼女の答えにイゾウは明らかに照れたように目をそらし、咳払いをひとつした後、そっけない仕草で湯呑を持ち上げたが、その耳までほんのり赤いのは誤魔化しようもなかった。
ひなみはそんな彼の様子を見て、思わずくすくすと笑ってしまう。
「イゾウさんって、もしかして照れてます?」
イゾ「……照れてなんかない」
即答するも顔の赤みが増していて説得力ゼロだった。
「ぷっ……あははっ、ごめんなさい、でもすっごく可愛いです!」
イゾ「何言ってやがる
俺は侍なんだぞ」
そう言いながらも目の前で笑い転げる彼女に、イゾウはどこか諦めたように肩をすくめる。
「ふふふ、からかいすぎちゃいましたね
でも、イゾウさんとこういう時間を過ごすのは本当に好きですから!」
イゾ「それは光栄だね」
穏やかな室内にまったりとした時間が流れているそのときだった。
──バアァァァン!!
マ「ひなみッ!!!」
「Σキャァアっ!!」
突然の事にひなみは悲鳴を上げた。
まるで地獄の底から飛び出してきたかのような勢いで、部屋の襖が音を立てて吹き飛ぶと、土煙が舞い上がり、その中に立っていたのはボサボサの髪、額には怒りの青筋、そして尋常じゃない“気”を放つ男——マルコだった。
.
