第53話 恋は盲目から鬼になる
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マルコが食堂を飛び出していった後、室内には一瞬信じられないほどの静けさが満ちた。
それはまるで大型のハリケーンが通過した後のように、空気そのものが押しつぶされたような重さを残している。
クルー達がぽかんと開いた口も閉じられず、エースとサッチだけが呆れ顔でその背中を目で追った。
サ「……あれはマズいな∪」
エ「うん、けっこう本気でヤバいやつだわ∪」
エースはパンをかじりながら、サッチに小声で囁いた。
サ「……で、エース
お前本当は気づいてんだろ?
俺がひなみちゃんの居場所知ってるって」
エ「まぁな
でも怖くて聞けねぇわ
あの顔見ただろ?
それに今ひなみに会わせたらヤバイ気がする∪
いや、マジで命の保証ない」」
サッチは黙って頷きカップのコーヒーを一口啜ると、ふぅと溜息を漏らした。
船内の通路にマルコの怒声が響き渡り、焦燥が胸を鷲掴みにして離さない。
息は荒く額には汗がにじみ、両目は血走っている。
マ「ひなみ!!……どこ行ったんだよい!!」
マルコは展望デッキの扉を乱暴に開け、次は風呂場、訓練場、読書室、食料庫……見知った顔がいなければ扉ごと破壊しそうな勢いで突進していく。
マ「おいっ!
そっちにひなみ行ったか!?」
クルー「ひっ!?
い、いえ!見てませんっ!」
クルーの一人が腰を抜かしそうになりながら答えたが、怯えるその様子も目に入らずマルコは次の場所へ向かって駆け出す。
マ「船を出たとかじゃねぇよな……?」
クルー「それは……ないと思いますけど……たぶん∪」
「“たぶん”じゃダメなんだよ!!!!」
バンッ!!!
怒声と同時に拳が壁を貫き木片が宙に舞うと、廊下にいた数人のクルーたちはその場に立ちすくんだまま硬直していた。
クルー「ま、マルコ隊長……ちょっと、怖すぎる……∪」
クルー「こんなの初めて見た……∪」
クルー「なぁ、ひなみさんってそこまで……特別なのか?」
他の仲間達にぽつりと洩れた1人のクルーの声に、マルコは振り返らなかったが広い背中がほんの少しだけ震えた。
マ「“特別”に決まってんだろうが……バカヤロウ」
「「「ヒィイ!す、すみませんでしたぁあ!!!∪」」」
今までに見たことのない鬼の形相と、背後に見えそうなメラメラと揺れる炎のオーラ、そして声は絞り出すように低く、床に落ちていくようなかすれ声だった。
マルコの足音が遠ざかると同時に、ようやく廊下に残されたクルーたちが息を吐いた。
誰もがその背中から発せられる凄まじい“気”に圧倒され、まるで胸を掴まれたかのように呼吸を忘れていた。
誰もが息を呑むほどの“鬼気”を纏い、マルコは廊下を一直線に駆けていた。
普段の穏やかな表情は完全に消え去り額には玉のような汗、拳をグッと握りしめ、一歩一歩足を踏み締める度に床板がたわみ、クルーたちは恐怖と尊敬が入り混じった表情でその後ろ姿を見送っていた。
マ「……くっそ、どこ行った……!」
目は焦点を結ばずそれでも真っすぐに。
息を切らすこともなく、まるで獲物を狙う鷹のように。
そんな中、角を曲がったところでたまたま通りかかった7番隊隊長・ラクヨウとばったり鉢合わせた。
ラクヨウはマルコのあまりの形相に一瞬たじろぐも、ニヤリと口元を緩める。
ラク「おいおいマルコ
何だってそんな物騒な顔で船内破壊してんだ?
廊下の手すり3箇所くらい折れてんぞ?」
マ「……あぁん?
俺は今忙しいんだよい
相手してる暇感かねぇ……」
ラク「そうか? それは残念だなぁ〜〜
せっかくひなみの居場所を教えてやろうと思ったのによ?」
マルコの動きが止まり、ギギギ……と音がしそうなほどゆっくりと首がラクヨウに向いた。
マ「……今、なんて?」
マルコは血走った目でラクヨウに再度問いかけた。
ラク「だからぁ、イゾウの部屋で仲良〜〜くお茶してたぜ?
ふたりっきりでな?」
それを聞いた瞬間、バチッッ!!とマルコの中で何かが弾けた。
マ「イ…イゾウゥゥ……!!」
羽を一気に広げ、轟音を立てながらその場を飛び立つマルコ。
その目は完全に戦闘モードで、もはや高額の賞金首が目の前を横切っても無視しそうな勢いだった。
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