第49話 一人の時間
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アクセサリー店を後にしたひなみは、再び賑わいの残る通りへと戻り、次々と目に入る店に心を惹かれながら歩いていた。
雑貨店では手作りの小物を手に取り、洋服屋では自分には似合わないかも…と少しだけ鏡に映る自分の姿を気にしてみたり。
ふと、露店で売られていた色とりどりの飴細工を見つけると、幼い子どもたちが歓声をあげながら手を伸ばす姿に思わず口元が綻んだ。
「……こうして歩くのも、久しぶりかもしれない」
元の世界でも友達とショッピングをしたり…
映画を見たり…
カフェによってはお気に入りの紅茶を飲みながら、皆んなで他愛もない話をしたりして…
こっちの世界でもカミラやリリー達とショッピングをしたり恋話をしたり…
いつも誰かと一緒だった…
自分のためだけに時間を使うなんてことは少なかった。
誰とどんな時間を過ごしてもいつだって楽しかった。
けれど、そんな中で最も心に残っているのは――
やはり、マルコさん達との何気ないひとときだった。
彼の口数の少ない優しさや、時折見せる不器用な笑顔。
ふとした瞬間に感じたぬくもり。
それらの記憶は、今もひなみの胸の奥にしっかりと残っていた。
…あの頃のマルコさんは、私の名前を呼んでくれた。
私のために笑ってくれて、困ってるときにはいつだって傍にいてくれたのに…
いつしかひなみの足は止まり、通りの片隅にある噴水の前で腰を下ろしていた。
観光客の楽しげな声。
家族連れの笑い声。
恋人たちの寄り添う姿。
そのどれもがどこか遠い世界のことのように感じられた。
「……寂しい、なんて思いたくなかったのに」
誰も自分を置いていったわけじゃない。
サッチもエースも、皆、変わらず優しく接してくれている。
でも――
あの人の中に、“私はもういない”んだ…。
その事実が、どうしようもなく彼女の胸を締めつけた。
「……っ」
ひなみは涙を振り払うように立ち上がると、そのまま無意識に歩き出していた。
店をひとつ、またひとつと見て回るたびに、自分の中に残る“マルコとの記憶”ばかりが鮮明になっていった。
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