第52話 愛は盲目
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同じ頃──
モビーディック号のキッチンには香ばしいパンの焼ける匂いと、湯気の立つスープの香りが漂っていた。
朝の仕込みを終えたばかりのサッチが、カウンターに腰かけてパンをつまみ食いしていると、ふいに後ろから声がかかった。
「サッチさんおはよう
ちょっと甘いものってある?」
サ「おっ、ひなみちゃん! おはよう〜!v
体調の方はどうだい?」
サッチは手にしていたトングを放り投げ、嬉しそうに近づいてきた。
「さっき医務室で診察を受けてきて、問題はなかったんだけど一応薬を飲んできたよ
でも……薬の味がすごくてさ
喉がずっと変な感じなの∪」
サ「そりゃ災難だったな〜
オーウェンの薬ってたまに“マジで効くけど味は地獄”ってやつあるしな」
「他人事だと思ってるでしょ〜∪」
サ「そんなことはないさ
俺も過去に何度も犠牲になってるからね」
笑みを浮かべ、そう言いながらサッチは手際よくマグカップに紅茶を注ぎ、そこに蜂蜜と刻んだジンジャーをたっぷり加えてかき混ぜた。
サ「昨日作った蜂蜜ジンジャーティーが残ってるんだ。
苦い薬の後には効くぜ?」
「ありがとうサッチさん」
サ「ほい、特製甘々ドリンク♪
あと、ついでに俺のおすすめパンも食っていくかい?
お腹空いてるだろ?」
「……うん、少しだけ」
素直に椅子に腰かけ、ひなみはカップを両手で包み込むと、温かくて優しい香りが胸の奥までじんわりと沁み渡った。
「ねぇ、サッチさん……」
サ「ん?」
「この間はごめんなさい
私…みんなに迷惑かけちゃって
——皆んな怒ってるよね?」
ひなみの声は小さく揺れていた。
サッチは一瞬驚いたように彼女の顔を見たが、すぐにいつもの屈託のない笑顔で答えた。
サ「まあ、怒ってるっていうか……心配してる、ってのが正しいかな」
「……」
サ「俺だって正直、あの日はすげぇ心配したよ
でもよ、マルコのヤツの方がずっと後悔してたみたいだし──
ひなみちゃんがまた笑ってくれるなら、それで全部チャラでいいって思ってる
それは他の奴らだって同じ事を思っているよ」
彼は紅茶のカップを持ち上げて、コツンと彼女のマグと軽くぶつけた。
サ「元気出せよひなみちゃん
君の笑顔がねぇと、白ひげ海賊団がちょっと寒くなっちまう」
「……うん。
ありがとうサッチさん」
少しだけ微笑んだ彼女の顔を見てサッチも満足そうに頷いた。
サ「あ、そういやイゾウがひなみちゃんのこと探していたぜ
いい茶葉とお菓子が手に入ったってよ
アイツも朝の訓練終わって部屋にいると思うから行ってくるといいよ」
「うん、行ってくる!」
サ「そのあとは俺っちの相手もよろしくv」
「クス、もちろん!」
カップを片付け、立ち上がったひなみはサッチに手を振ってからキッチンを後にすると、その後ろ姿を見送りながらサッチはぽつりと呟いた。
「……ったく、かわいいなぁv
ひなみちゃんを泣かせたマルコは今ごろ地獄の捜索中だろうな〜
ま、せいぜい頑張れよ隊長さんよ」
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