一年生秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋。
「それで、ここが薬草温室」
ローレンツくんはヴォルフラムくんの腕を掴んで、引きずるように校内を歩きます。
温室はこのあと三年生が薬草学の授業で使うようで、三年のバッジをつけた生徒が数名、薬草温室の中で準備をしています。
その中にセシリオ様とミーナ様もいました。
ヴォルフラムくんは外で見ているだけでは足らず、中に入ってしまいました。
「あ、だめですよ! 先輩たちの邪魔しちゃ!」
「やめろヴォルフ。今は見るだけにしとけって!」
私とローレンツくんが止めても聞いてくれません。
「セシリオ殿下だ。殿下ー、なにしテル!」
セシリオ様、ヴォルフラムくんに呼ばれて困り顔になります。
「ヴォルフラム。学院にいる間わたしは一生徒にすぎないと教えたはずだよ。ここでは殿下と呼ばないでくれ」
「忘れてたヨ」
「全く、君というやつは……。自由すぎる」
セシリオ様が珍しく頭を抱えています。
同じく授業の準備をしていたミーナ様が助け舟を出してくれました。
「三人とも。一年生ももうすぐ次の授業でしょう? 休憩時間はそう長くないですし、教室に戻ったほうがよろしいのではなくて?」
「そうですよね。すぐ戻ります。ありがとうございますミーナ様。セシリオ様も、私たちこれで失礼しますね」
私とローレンツくんは急いで温室を出ます。けれどヴォルフラムくんは、今度はミーナ様に興味を持ったようです。
ミーナ様を食い入るように見つめて聞きます。
「げーむ? ってなんダ? 美生? ギジェルミーナでなく?」
ミーナ様の顔がこわばりました。心が読めるなら、ミーナ様の事情も読み取れてしまうのでしょう。
動揺したものの、ミーナ様はすぐ笑顔を繕いました。
「たとえ何が聞こえても、あなたには関係のないことですわ。それより授業に戻らないと遅刻しますわよ。占学の先生は時間に厳しいのだから、急ぎなさい」
納得いかなそうにしながら、ヴォルフラムくんもきびすを返しました。
教室に戻ってきてからローレンツくんを質問攻めにします。
「ギジェルミーナ、面白い人間だナ、あんなの初めて見た。ローレンツなにか知ってるか」
「ヴォルフ。セリスに対してもだめだけど、相手が貴族の令嬢のならなおさら、根掘り葉掘り身辺のことを聞くのは良くない。それがアルコン魔法学院でのマナーだ」
ローレンツくんに厳しい口調で言われて、分かってくれたのかと思いきや。
ミーナ様のことをいたく気に入ってしまったらしく、放課後生徒会室に突撃してきました。
「やあやキグウだね! 話を聞かせてよギジェルミーナ。君のこと知りたいナ。アルコン学院で精神操作は使っちゃだめってあちらの学長に言われてるから、仲良くなるのは日頃の会話をしないとね。たくさん話して僕を好きになってヨ〜」
ミーナ様は優雅にお辞儀をして一蹴《いっしゅう》します。
「仕事の邪魔をしないでくださいませ」
「ひどいな、アウグストに帰ったらアルコンの生徒は意地悪な人ばかりって報告することになっちゃうヨ」
わざとらしく泣くふりをするヴォルフラムくん。
「ならわたしも、ヴォルフラムは生徒を脅してばかりでろくでもないとあちらに報告しないといけないね。無理やり押し掛けて来るのは奇遇とは言わないから、ちゃんと覚えなさい」
「それは困るヨ。僕はまだつがいを見つけてない。ギジェルミーナ、僕のつがいにならない? 君面白いから一生退屈しな」
「やめろと言っただろう」
ヴォルフラムくん、セシリオ様の蛇に巻きつかれて部屋の外につまみ出されます。
そのまま生徒会室の外でお説教が始まりました。
私達は生徒会室に残り、仕事を続けていてほしいと言われました。
ミーナ様は書類を持ったまま、青ざめて震えています。
「どうしましょうセリスさん。こんな展開ゲームにはなかった。正規のシナリオと違うわ。なんでヴォルフラムはアタシに興味を持ったの? ゲームのシナリオだと、彼は貴女に横恋慕していたのに」
「えええっ!?」
理由はわかりませんが、ミーナ様が知らない未来が訪れてしまったようです。
ローレンツくんはヴォルフラムくんの腕を掴んで、引きずるように校内を歩きます。
温室はこのあと三年生が薬草学の授業で使うようで、三年のバッジをつけた生徒が数名、薬草温室の中で準備をしています。
その中にセシリオ様とミーナ様もいました。
ヴォルフラムくんは外で見ているだけでは足らず、中に入ってしまいました。
「あ、だめですよ! 先輩たちの邪魔しちゃ!」
「やめろヴォルフ。今は見るだけにしとけって!」
私とローレンツくんが止めても聞いてくれません。
「セシリオ殿下だ。殿下ー、なにしテル!」
セシリオ様、ヴォルフラムくんに呼ばれて困り顔になります。
「ヴォルフラム。学院にいる間わたしは一生徒にすぎないと教えたはずだよ。ここでは殿下と呼ばないでくれ」
「忘れてたヨ」
「全く、君というやつは……。自由すぎる」
セシリオ様が珍しく頭を抱えています。
同じく授業の準備をしていたミーナ様が助け舟を出してくれました。
「三人とも。一年生ももうすぐ次の授業でしょう? 休憩時間はそう長くないですし、教室に戻ったほうがよろしいのではなくて?」
「そうですよね。すぐ戻ります。ありがとうございますミーナ様。セシリオ様も、私たちこれで失礼しますね」
私とローレンツくんは急いで温室を出ます。けれどヴォルフラムくんは、今度はミーナ様に興味を持ったようです。
ミーナ様を食い入るように見つめて聞きます。
「げーむ? ってなんダ? 美生? ギジェルミーナでなく?」
ミーナ様の顔がこわばりました。心が読めるなら、ミーナ様の事情も読み取れてしまうのでしょう。
動揺したものの、ミーナ様はすぐ笑顔を繕いました。
「たとえ何が聞こえても、あなたには関係のないことですわ。それより授業に戻らないと遅刻しますわよ。占学の先生は時間に厳しいのだから、急ぎなさい」
納得いかなそうにしながら、ヴォルフラムくんもきびすを返しました。
教室に戻ってきてからローレンツくんを質問攻めにします。
「ギジェルミーナ、面白い人間だナ、あんなの初めて見た。ローレンツなにか知ってるか」
「ヴォルフ。セリスに対してもだめだけど、相手が貴族の令嬢のならなおさら、根掘り葉掘り身辺のことを聞くのは良くない。それがアルコン魔法学院でのマナーだ」
ローレンツくんに厳しい口調で言われて、分かってくれたのかと思いきや。
ミーナ様のことをいたく気に入ってしまったらしく、放課後生徒会室に突撃してきました。
「やあやキグウだね! 話を聞かせてよギジェルミーナ。君のこと知りたいナ。アルコン学院で精神操作は使っちゃだめってあちらの学長に言われてるから、仲良くなるのは日頃の会話をしないとね。たくさん話して僕を好きになってヨ〜」
ミーナ様は優雅にお辞儀をして一蹴《いっしゅう》します。
「仕事の邪魔をしないでくださいませ」
「ひどいな、アウグストに帰ったらアルコンの生徒は意地悪な人ばかりって報告することになっちゃうヨ」
わざとらしく泣くふりをするヴォルフラムくん。
「ならわたしも、ヴォルフラムは生徒を脅してばかりでろくでもないとあちらに報告しないといけないね。無理やり押し掛けて来るのは奇遇とは言わないから、ちゃんと覚えなさい」
「それは困るヨ。僕はまだつがいを見つけてない。ギジェルミーナ、僕のつがいにならない? 君面白いから一生退屈しな」
「やめろと言っただろう」
ヴォルフラムくん、セシリオ様の蛇に巻きつかれて部屋の外につまみ出されます。
そのまま生徒会室の外でお説教が始まりました。
私達は生徒会室に残り、仕事を続けていてほしいと言われました。
ミーナ様は書類を持ったまま、青ざめて震えています。
「どうしましょうセリスさん。こんな展開ゲームにはなかった。正規のシナリオと違うわ。なんでヴォルフラムはアタシに興味を持ったの? ゲームのシナリオだと、彼は貴女に横恋慕していたのに」
「えええっ!?」
理由はわかりませんが、ミーナ様が知らない未来が訪れてしまったようです。