一年生夏編 恋人と過ごす夏
夏のイベントも終わり、秋に向けて生徒会は動き出します。
「わたくしとセシリオが卒業したら、生徒会役員があなた達二人だけになってしまうでしょう? 秋になったら一年生と二年生の中から役員を何名か募集しようと思うの」
役員会議の中でミーナ様が提案します。
「もちろん、イワンの父上やセリスくんの魔法目的で近づいてくるような下心のある者を採用したりはしないから、安心してくれ」
セシリオ様が補足説明してくださいました。
四人でなんとか仕事を回しているのに、二人になってしまったら仕事が片付かなくなるのは想像に難《かた》くありません。
「次の生徒会長はイワンに、副会長はセリスさんになるでしょうし」
「ええぇっ! わ、私が副会長? 生徒の皆さんに反対されませんか」
ベルナデッタ様のように、「庶民なんかが」と言う人がいるかもしれません。
「セリスさん。自分を卑下しては駄目よ。魔法大会で優勝までしたんだから、一人二人に文句を言われたって堂々と胸を張りなさい」
「わかりました」
さすがミーナ様です。
私はミーナ様を見習って、もっと自信をつけましょう。
「そう、それでいいの。それと、来月からあなたのクラスに交換留学生も入るから、その子が学院に馴染めるようサポートしてくださいな」
「交換留学生さん。どんな方なんです?」
質問に答えてくれたのはセシリオ様でした。
一枚のファイルを見開きにしてテーブルに置きます。
ヴォルフラムという名前と写真、それから魔族の国アウグストにある魔術学園の一年生ということが書かれています。
耳の先が尖っていて、イワンと同じような黒い翼があります。
「半月前にセリスくんが魔族の国と交流を持ちたいと言っただろう。だから、あちらの学校に交換留学を持ちかけたんだ。ーーイワンの祖父ランヴァルド様はもともとアウグストの王族だから、アウグストの陛下と直接交渉しに行ってくれて早期実現が叶った」
「そうだったんですか。ランヴァルトさん、少し前にお会いしました。交流が広がるなら嬉しいです。交換ということはアルコン学院から一人、あちらに留学するっていうことですよね」
誰が行くのか、聞く前にイワンが言いました。
「オレが行くことになった。他の奴らはまだ魔族に対してわだかまりがあるからな。あちらも敵意だらけのやつが来ても困るだろうし」
「イワンが行くんですか。初めて聞きました」
私、教えてもらってません。
いつ決まったことなんでしょう。どれくらいの期間行くんでしょう。
聞きたいことは山ほどあるのに、うまく口に出せません。
「三日前にいきなり決まったからな。教える間もなかった。教師たちもオレの他に行けるやつを探し回ったらしいが、みんな断ったらしい」
学院のみんなが魔族の学園に留学することを断る、それこそがまだこの国に差別意識が残っていることの現れでしょう。
一日二日で解決するようなものじゃないのです。
「いつ、発つんですか」
「来週。祖父があちらの国にいた頃住んでいた家を使っていいと言われているんだ」
私の知らぬ間に出立直前まで話が進んでいたんですね。
突然の話すぎてまだ気持ちが追いつかないです。
それから役員の仕事を終えて、家に帰ったのですが……話を聞いたあとのことあまり覚えていません。
準備が忙しくて、私に話す間もなかったんでしょう。でも、なんだか切ないです。
夕ごはんもそこそこにベッドに突っ伏していると、部屋の窓からコツンと音がしました。
一度だけでなく、二度三度。
なんでしょう。
カーテンを開けると、しーちゃんが窓をつついていました。
『いま外に出られないか、話がしたい』
「……はい」
お母さんとレネに、少し散歩してくると声をかけて外に出ます。
きっとしばらく話す機会はなくなってしまうから、今話したいこと、全部伝えましょう。
「わたくしとセシリオが卒業したら、生徒会役員があなた達二人だけになってしまうでしょう? 秋になったら一年生と二年生の中から役員を何名か募集しようと思うの」
役員会議の中でミーナ様が提案します。
「もちろん、イワンの父上やセリスくんの魔法目的で近づいてくるような下心のある者を採用したりはしないから、安心してくれ」
セシリオ様が補足説明してくださいました。
四人でなんとか仕事を回しているのに、二人になってしまったら仕事が片付かなくなるのは想像に難《かた》くありません。
「次の生徒会長はイワンに、副会長はセリスさんになるでしょうし」
「ええぇっ! わ、私が副会長? 生徒の皆さんに反対されませんか」
ベルナデッタ様のように、「庶民なんかが」と言う人がいるかもしれません。
「セリスさん。自分を卑下しては駄目よ。魔法大会で優勝までしたんだから、一人二人に文句を言われたって堂々と胸を張りなさい」
「わかりました」
さすがミーナ様です。
私はミーナ様を見習って、もっと自信をつけましょう。
「そう、それでいいの。それと、来月からあなたのクラスに交換留学生も入るから、その子が学院に馴染めるようサポートしてくださいな」
「交換留学生さん。どんな方なんです?」
質問に答えてくれたのはセシリオ様でした。
一枚のファイルを見開きにしてテーブルに置きます。
ヴォルフラムという名前と写真、それから魔族の国アウグストにある魔術学園の一年生ということが書かれています。
耳の先が尖っていて、イワンと同じような黒い翼があります。
「半月前にセリスくんが魔族の国と交流を持ちたいと言っただろう。だから、あちらの学校に交換留学を持ちかけたんだ。ーーイワンの祖父ランヴァルド様はもともとアウグストの王族だから、アウグストの陛下と直接交渉しに行ってくれて早期実現が叶った」
「そうだったんですか。ランヴァルトさん、少し前にお会いしました。交流が広がるなら嬉しいです。交換ということはアルコン学院から一人、あちらに留学するっていうことですよね」
誰が行くのか、聞く前にイワンが言いました。
「オレが行くことになった。他の奴らはまだ魔族に対してわだかまりがあるからな。あちらも敵意だらけのやつが来ても困るだろうし」
「イワンが行くんですか。初めて聞きました」
私、教えてもらってません。
いつ決まったことなんでしょう。どれくらいの期間行くんでしょう。
聞きたいことは山ほどあるのに、うまく口に出せません。
「三日前にいきなり決まったからな。教える間もなかった。教師たちもオレの他に行けるやつを探し回ったらしいが、みんな断ったらしい」
学院のみんなが魔族の学園に留学することを断る、それこそがまだこの国に差別意識が残っていることの現れでしょう。
一日二日で解決するようなものじゃないのです。
「いつ、発つんですか」
「来週。祖父があちらの国にいた頃住んでいた家を使っていいと言われているんだ」
私の知らぬ間に出立直前まで話が進んでいたんですね。
突然の話すぎてまだ気持ちが追いつかないです。
それから役員の仕事を終えて、家に帰ったのですが……話を聞いたあとのことあまり覚えていません。
準備が忙しくて、私に話す間もなかったんでしょう。でも、なんだか切ないです。
夕ごはんもそこそこにベッドに突っ伏していると、部屋の窓からコツンと音がしました。
一度だけでなく、二度三度。
なんでしょう。
カーテンを開けると、しーちゃんが窓をつついていました。
『いま外に出られないか、話がしたい』
「……はい」
お母さんとレネに、少し散歩してくると声をかけて外に出ます。
きっとしばらく話す機会はなくなってしまうから、今話したいこと、全部伝えましょう。