私の本命は攻略できないバグなのでノーマルエンド目指します。
今日からゲーム本編が開始する。
私は学生寮に入り、同室になったオーちゃんと挨拶を交わす。
黒髪ショートボが似合う、17歳の元気っ子だ。
「これから2年間よろしくね、シュウちゃん」
「こちらこそ、オーちゃんが同室でよかった。よろしく」
同年代の女の子とルームシェアって夢よね。毎日が修学旅行みたい。
ちなみに、入学式というのは存在しない。
初日から事前に渡されている案内書の教室に向かう。
1年生は、私、オーちゃんを含めて20人と少ない。
魔法の才能はそれくらい希少だ。
オーちゃんと空いていた席につくと他の生徒と話していた、攻略キャラのワン・コウケイが駆け寄ってきた。栗色のふわふわした髪、茶色い瞳は子犬っぽい。尻尾があったらブンブンふりまわしていそうだ。
「はじめまして。君たちも1年生? よろしくね! 僕はワン・コウケイ。16歳。君の名前は?」
「私はシュウ。この子はオーちゃん」
挨拶すると、ワンは教室の隅のほうに1人で座っていたメガネ男子を引っ張ってきた。
「彼はネガ。僕の幼馴染みなんだ。見ての通りあんま喋らないけど、根はいいやつだから友達になってあげてほしいな」
「……俺のためにこんなことしなくていいんだ、ワン。いちいち俺を気にかけていたら、お前が友人を作れなくなるだろう」
ネガ・ティーブ。名前だけなら誰もが知っている。
ここ、ティーブ国の第三王子なのだから。夜会などの公の場にほとんど姿を見せないから、実在するかどうか怪しまれるような男。それでいて攻略キャラの1人だ。
引っ込み思案なネガのために「はじっこで1人でいるのは寂しいよ、友達作ろうよ」ってやってくれるワン、いい子だ。
これは初日のチュートリアル。同学年はこの2人。
残る攻略キャラ、ツン・デレス、トッテ・モン・ノーキンは上級生。デキア・イースルーは隠しキャラで、上級生組と親しくなると登場する。
セバスルートを探すためだけに100周以上していたから、ノーマルエンドへの道筋はバッチリ覚えている。
だいたいのゲームならメインキャラ全員クリアで隠しキャラルート開放、特定条件下でクリアすると裏ルートが始まるなどの要素があるけど、『マジまほ』にはなかった。
モブだからショップでグッズ展開もされない。仕方ないからゲーム画面をスクショして、オリジナルグッズ印刷所で抱き枕をつくり、毎日セバス枕を抱きしめて寝ていた。
ちなみにこの出会いイベント自己紹介。
ワンと親しくなりたいなら、ここで「もちろん、今日から仲間だもの」と答える。
ネガを攻略するなら、「ネガ王子、よろしくお願いします」とネガに対して挨拶をする。
私は2人と恋仲になるつもりはないから、普通に接しよう。勘違いが生まれないように。
笑顔で頷くにとどめておいた。
そしてホームルームがはじまった。
我らが1年生担任のマージョ・サン1世が教室に入ってきた。
見た目は20代半ばの女性で出るとこ出てくびれもキュッとしていて、羨ましい。
男性ユーザーから『攻略できないバグ』と呼ばれる人。人妻でもいいからお相手してほしい、穴が開くまでヒールで踏んでほしい、下僕になりたいという声が続出している。
教科書を生徒一人一人に配っていくのは、手作業ではなく魔法。
先生が背丈ほどある長さの杖を振ると、白い光の球がいくつもあらわれる。
教卓に積まれていた本が光に包まれて、各生徒の前に降りてきた。
「あなたたちにはこれから魔法の基礎知識を覚えてもらうわ。そうね、料理の作り方を知らない小さな子に、いきなり包丁を持たせたり揚げ物をさせたりはしないでしょう? それと同じで、魔法とはなんなのかをきちんと理解してから実技に臨んでもらうことになるわ」
生徒たちは真剣な顔でマージョ先生の話に耳を傾ける。
「わたくしとあなたたちは初対面ですから、まず自己紹介をお願いしたいですわ。プロフィールだけなら校長から受け取っているけれど、それだけではあなたたちの人となりがわからないでしょう? 名前と、卒業後の展望を聞かせてくださる?」
マージョ先生にうながされて、前の席にいた女生徒から自己紹介していく。
「魔法教師になって稼いで親を楽させたい」「学者になりたい」それぞれ素敵な夢だ。
最後は私の番になった。
「私はシュウ・ジン・コーナー。愛する人との未来を勝ち取りたくてここにきたの!」
恥じることは何一つないから、堂々と宣言した。
愛する人……最愛の推し、セバスと結婚する未来を思い描いて。
私は学生寮に入り、同室になったオーちゃんと挨拶を交わす。
黒髪ショートボが似合う、17歳の元気っ子だ。
「これから2年間よろしくね、シュウちゃん」
「こちらこそ、オーちゃんが同室でよかった。よろしく」
同年代の女の子とルームシェアって夢よね。毎日が修学旅行みたい。
ちなみに、入学式というのは存在しない。
初日から事前に渡されている案内書の教室に向かう。
1年生は、私、オーちゃんを含めて20人と少ない。
魔法の才能はそれくらい希少だ。
オーちゃんと空いていた席につくと他の生徒と話していた、攻略キャラのワン・コウケイが駆け寄ってきた。栗色のふわふわした髪、茶色い瞳は子犬っぽい。尻尾があったらブンブンふりまわしていそうだ。
「はじめまして。君たちも1年生? よろしくね! 僕はワン・コウケイ。16歳。君の名前は?」
「私はシュウ。この子はオーちゃん」
挨拶すると、ワンは教室の隅のほうに1人で座っていたメガネ男子を引っ張ってきた。
「彼はネガ。僕の幼馴染みなんだ。見ての通りあんま喋らないけど、根はいいやつだから友達になってあげてほしいな」
「……俺のためにこんなことしなくていいんだ、ワン。いちいち俺を気にかけていたら、お前が友人を作れなくなるだろう」
ネガ・ティーブ。名前だけなら誰もが知っている。
ここ、ティーブ国の第三王子なのだから。夜会などの公の場にほとんど姿を見せないから、実在するかどうか怪しまれるような男。それでいて攻略キャラの1人だ。
引っ込み思案なネガのために「はじっこで1人でいるのは寂しいよ、友達作ろうよ」ってやってくれるワン、いい子だ。
これは初日のチュートリアル。同学年はこの2人。
残る攻略キャラ、ツン・デレス、トッテ・モン・ノーキンは上級生。デキア・イースルーは隠しキャラで、上級生組と親しくなると登場する。
セバスルートを探すためだけに100周以上していたから、ノーマルエンドへの道筋はバッチリ覚えている。
だいたいのゲームならメインキャラ全員クリアで隠しキャラルート開放、特定条件下でクリアすると裏ルートが始まるなどの要素があるけど、『マジまほ』にはなかった。
モブだからショップでグッズ展開もされない。仕方ないからゲーム画面をスクショして、オリジナルグッズ印刷所で抱き枕をつくり、毎日セバス枕を抱きしめて寝ていた。
ちなみにこの出会いイベント自己紹介。
ワンと親しくなりたいなら、ここで「もちろん、今日から仲間だもの」と答える。
ネガを攻略するなら、「ネガ王子、よろしくお願いします」とネガに対して挨拶をする。
私は2人と恋仲になるつもりはないから、普通に接しよう。勘違いが生まれないように。
笑顔で頷くにとどめておいた。
そしてホームルームがはじまった。
我らが1年生担任のマージョ・サン1世が教室に入ってきた。
見た目は20代半ばの女性で出るとこ出てくびれもキュッとしていて、羨ましい。
男性ユーザーから『攻略できないバグ』と呼ばれる人。人妻でもいいからお相手してほしい、穴が開くまでヒールで踏んでほしい、下僕になりたいという声が続出している。
教科書を生徒一人一人に配っていくのは、手作業ではなく魔法。
先生が背丈ほどある長さの杖を振ると、白い光の球がいくつもあらわれる。
教卓に積まれていた本が光に包まれて、各生徒の前に降りてきた。
「あなたたちにはこれから魔法の基礎知識を覚えてもらうわ。そうね、料理の作り方を知らない小さな子に、いきなり包丁を持たせたり揚げ物をさせたりはしないでしょう? それと同じで、魔法とはなんなのかをきちんと理解してから実技に臨んでもらうことになるわ」
生徒たちは真剣な顔でマージョ先生の話に耳を傾ける。
「わたくしとあなたたちは初対面ですから、まず自己紹介をお願いしたいですわ。プロフィールだけなら校長から受け取っているけれど、それだけではあなたたちの人となりがわからないでしょう? 名前と、卒業後の展望を聞かせてくださる?」
マージョ先生にうながされて、前の席にいた女生徒から自己紹介していく。
「魔法教師になって稼いで親を楽させたい」「学者になりたい」それぞれ素敵な夢だ。
最後は私の番になった。
「私はシュウ・ジン・コーナー。愛する人との未来を勝ち取りたくてここにきたの!」
恥じることは何一つないから、堂々と宣言した。
愛する人……最愛の推し、セバスと結婚する未来を思い描いて。