イエデレ☆ 〜シンデレラに転生したアタシ、いびられるなんて嫌だし王子との結婚も無理なんで家出する〜
仕事が終わり夕ごはんも食べたあと。
アタシはとっとこさんをシンデレラの実家に放り込むため行動を開始した。
お面を布でぐるぐる巻きにしてカバンにしまい、面が割れないようほっかむりする。
抜き足、差し足、忍び足。
「こんな時間からどこに行くつもりだ、レイラ」
ライリーが店の出口で待ち構えていた。
「はひゃ。てんちょーなんでここに」
「んな奇っ怪な動きしてれば逆に目立つだろうに」
「がびーん」
悪目立ちしていたなんて。レイラちゃん不覚。
「レイラは年頃の女の子なんだから、日が落ちた道を一人で歩かせるわけ無いだろう。少しは危機感持て。通り魔でも出たらどうするつもりだ」
ライリーは心底アタシの心配をしてくれている。怒鳴るんじゃなくて、こんこんと言い聞かせてくる。
この世界は日本と違って、平和ってわけじゃない。
「ごめんなさい〜。でも、このお面ずっと持ってるとお城の人に見つかるかもしれないじゃん。アタシ王子様と婚約なんてぜったいイヤだもん」
「このお面って?」
ライリーにとっとこさんを見せる。
「これって。まさか、あの人相書きはレイラのことなのか」
「うん。他にこれをつけてた人はいないから、アタシで間違いないと思う」
「そうか……」
少し考え込んで、アタシの腕を取る。
「ならこんな下町にいないで、早く城に行くんだ、レイラ。探されているのが自分だってわかっているんだろう」
「え、やだよ! お城なんてイヤ」
「やだって……王妃になれるチャンスをふいにするつもりか?」
これもまたアタシのための発言、なのかもしれないけど。ライリーにだけは、王子と結婚しろなんて言われたくない。
「い、や! アタシはライリーのとこがいいの。王妃の座なんて欲しがっている人たちにポイだよ! この世の女の子が全員お姫様に憧れるなんて思ったら大まちがいなんだから!」
声を大にして主張する。
「アタシがここにいるとライリーが幸せになれないとか、邪魔だとかいうなら出ていくしかないけど、アタシはここにいたいよ」
「レイラが邪魔だなんて考えたことない。悪かったよ。そんなにまで嫌がると思わなかった」
ようやくライリーはわかってくれた。
困ったように頭を掻いている。
「……それで、そのお面をどうしようっていうんだ? 素材がよくわからないものは捨て辛いぞ」
「実家のオネエサマが王妃になりたくて仕方ないみたいだから、オネエサマに送って差し上げようかと」
ごみ処理と書いてプレゼントと読む。
アタシは要らないけど、貴族のお嬢様方は大金出すほど欲しい。
ならオネエサマも喜ぶでしょ。
家までの道中、夜道は危険だからとライリーが隣を歩いてくれる。
暗闇の中、月明かりにぼんやり見える懐かしき実家。
「レイラは家出するほど家族が苦手なんだろう。俺が届けてこようか?」
「まかせて。アタシの兄貴、野球部のベンチウォーマーだったから。アタシもイヤなこととボールを投げ出すのは得意なんだ」
アタシは足元に転がっていたレンガのかけらを掴む。
「野球部ってなんだ、ベンチウォーマーってなんだ。そして投げるな」
「いっくよ〜。飛んでけびゅーーん!」
ライリーが止めに入ったけど時すでにお寿司。
レンガの破片は見事、シンデレラの元実家の窓を粉砕した。
「グッバイ★とっとこさん!」
傷つかないよう、割れた窓に布で包んだとっとこさんを投げ込む。
「よし!」
「やることがめちゃくちゃすぎる……。レイラ、早く逃げないと警官が来るぞ」
日本なら立派なキブツハソン罪である。
ライリーに引きずられるようにして、夜道をかけ戻った。

アタシはとっとこさんをシンデレラの実家に放り込むため行動を開始した。
お面を布でぐるぐる巻きにしてカバンにしまい、面が割れないようほっかむりする。
抜き足、差し足、忍び足。
「こんな時間からどこに行くつもりだ、レイラ」
ライリーが店の出口で待ち構えていた。
「はひゃ。てんちょーなんでここに」
「んな奇っ怪な動きしてれば逆に目立つだろうに」
「がびーん」
悪目立ちしていたなんて。レイラちゃん不覚。
「レイラは年頃の女の子なんだから、日が落ちた道を一人で歩かせるわけ無いだろう。少しは危機感持て。通り魔でも出たらどうするつもりだ」
ライリーは心底アタシの心配をしてくれている。怒鳴るんじゃなくて、こんこんと言い聞かせてくる。
この世界は日本と違って、平和ってわけじゃない。
「ごめんなさい〜。でも、このお面ずっと持ってるとお城の人に見つかるかもしれないじゃん。アタシ王子様と婚約なんてぜったいイヤだもん」
「このお面って?」
ライリーにとっとこさんを見せる。
「これって。まさか、あの人相書きはレイラのことなのか」
「うん。他にこれをつけてた人はいないから、アタシで間違いないと思う」
「そうか……」
少し考え込んで、アタシの腕を取る。
「ならこんな下町にいないで、早く城に行くんだ、レイラ。探されているのが自分だってわかっているんだろう」
「え、やだよ! お城なんてイヤ」
「やだって……王妃になれるチャンスをふいにするつもりか?」
これもまたアタシのための発言、なのかもしれないけど。ライリーにだけは、王子と結婚しろなんて言われたくない。
「い、や! アタシはライリーのとこがいいの。王妃の座なんて欲しがっている人たちにポイだよ! この世の女の子が全員お姫様に憧れるなんて思ったら大まちがいなんだから!」
声を大にして主張する。
「アタシがここにいるとライリーが幸せになれないとか、邪魔だとかいうなら出ていくしかないけど、アタシはここにいたいよ」
「レイラが邪魔だなんて考えたことない。悪かったよ。そんなにまで嫌がると思わなかった」
ようやくライリーはわかってくれた。
困ったように頭を掻いている。
「……それで、そのお面をどうしようっていうんだ? 素材がよくわからないものは捨て辛いぞ」
「実家のオネエサマが王妃になりたくて仕方ないみたいだから、オネエサマに送って差し上げようかと」
ごみ処理と書いてプレゼントと読む。
アタシは要らないけど、貴族のお嬢様方は大金出すほど欲しい。
ならオネエサマも喜ぶでしょ。
家までの道中、夜道は危険だからとライリーが隣を歩いてくれる。
暗闇の中、月明かりにぼんやり見える懐かしき実家。
「レイラは家出するほど家族が苦手なんだろう。俺が届けてこようか?」
「まかせて。アタシの兄貴、野球部のベンチウォーマーだったから。アタシもイヤなこととボールを投げ出すのは得意なんだ」
アタシは足元に転がっていたレンガのかけらを掴む。
「野球部ってなんだ、ベンチウォーマーってなんだ。そして投げるな」
「いっくよ〜。飛んでけびゅーーん!」
ライリーが止めに入ったけど時すでにお寿司。
レンガの破片は見事、シンデレラの元実家の窓を粉砕した。
「グッバイ★とっとこさん!」
傷つかないよう、割れた窓に布で包んだとっとこさんを投げ込む。
「よし!」
「やることがめちゃくちゃすぎる……。レイラ、早く逃げないと警官が来るぞ」
日本なら立派なキブツハソン罪である。
ライリーに引きずられるようにして、夜道をかけ戻った。