イエデレ☆ 〜シンデレラに転生したアタシ、いびられるなんて嫌だし王子との結婚も無理なんで家出する〜
ライリーが貸ドレス屋のお金を出してくれて、アタシは舞踏会にいくことになったのさ。
つっても、「美貌ではなく人となりで后を選べ」というのが王様の意向らしく、仮面舞踏会である。
ようは顔を隠せれば何でもいいってことでオーケー?
アタシはこのために、市場の掘り出し物を買ったのさ。

ひょんひょん、いや、とっとこだったかな。そんな名前のお面。
お迎えの馬車に乗って、とっとこお面をつけて会場入りする。
アニメ映画で見たような、きらびやかなホール。照明のシャンデリアが下がっている。
見渡すときれいなドレスのお姉様がたくさんいた。王子様はよりどりみどりだね、仮面つけててもみんなキレイってわかる。
未婚女性って条件だからか、継姉もいた。はー、あの意地悪ドス黒オーラは仮面でも隠せないよ。
アタシがホールに足を踏み入れると、会場中の視線が集中した。
何あの子やば、ぷっクスクス。ってこっちを横目で見ながら、イヤーな笑い方をしている。
なんで笑われてんの。ちゃんと場をわきまえた舞踏会用のドレス着てんじゃん!
「コルネリウス王子ご入場です」
くるくる髭のおじさんが仰々しく言う。
絵本から出てきたようなキラキラ王子が会場の中央に歩み出てきた。
「僕のために舞踏会に来てくれてありがとう、お嬢様がた。あまり固くならず、自分の家にいるように気楽に過ごしてほしい」
いや、こんなゴージャスなとこでそこまでくつろぐの無理。肩がこるわー。
さて、主役の王子も出てきたことだし、アタシ、帰っていいよね。帰るの遅くなると家主のライリーが心配するし。って思ったのに。
「君、面白い仮面をつけているね。そんなものどこで手に入るんだい」
「へ?」
とっとこお面のアタシに、王子が声をかけてきた。他の人に声をかけてるのかとも思ったけど、アタシは遠巻きにされてたから、会話の届く範囲に人はいない。
まじかよ、なんの特徴もない庶民《アタシ》に王子が話しかけてくるなんてシナリオ補正やばい。
ドレスだって貸ドレス屋の中でも一番やっすいドレスなのに。
「……アタシに言ってます?」
「そう、君に話している。せっかく出会えたんだ。1曲踊ってくれないか?」
「スミマセン。アタシはただの庶民なので、踊れません。ダンスのお誘いなら他の方にしてください。場違いだし、今すぐ帰ります。王妃探しガンバッテくださいね。それじゃ」
「ちょ、待ってくれ」
早口で挨拶して走り去る。ガラスの靴がかたっぽ脱げるなんてミスはしない。それこそ原作通りになっちゃう。
舞踏会を早退したら罪に問われるなんてことないよね?
夕暮れになる前にドレスを返しに来たから、貸ドレス屋さん目が点だったよ。他の人は明日まで借りてるのに、だってさ。あはは。
普段店頭に出るときの、ワンピースにエプロンという出で立ちに着替えて店に戻る。
「てんちょー、たっだいまー!」
「うお、レイラ!? 舞踏会に行ったんじゃなかったのかよ」
「行ったけどお店が心配で帰ってきた」
「ええええぇ………」
ライリーだけでなく、食事中だったお客様がたも言葉をなくしている。
「ドレスを着るより給仕服のほうがいいなんて、レイラはつくづく変わった子だなぁ」
「給仕服がいいんじゃなくて、てんちょーの手伝いがしたいの」
まだオーダーを取ってないらしいテーブルに走る。常連のおじちゃんがケラケラ笑う。
「王妃になれるかもしれないチャンスをふいにしちまうなんてなぁ。おうライリーよ、責任取ってレイラちゃんを嫁にもらうしかないんじゃないかい」
「わー、ほんと? ライリーがいいならアタシ今日からでも嫁になるよ!」
「こ、こらこら。大人をからかうな。女の子がかんたんに嫁になるなんて言うんじゃ……」
慌てふためくライリーが、手を滑らせてカップを落とした。
ほら、こんなふうだからライリーのこと放っておけないんだよ。

つっても、「美貌ではなく人となりで后を選べ」というのが王様の意向らしく、仮面舞踏会である。
ようは顔を隠せれば何でもいいってことでオーケー?
アタシはこのために、市場の掘り出し物を買ったのさ。

ひょんひょん、いや、とっとこだったかな。そんな名前のお面。
お迎えの馬車に乗って、とっとこお面をつけて会場入りする。
アニメ映画で見たような、きらびやかなホール。照明のシャンデリアが下がっている。
見渡すときれいなドレスのお姉様がたくさんいた。王子様はよりどりみどりだね、仮面つけててもみんなキレイってわかる。
未婚女性って条件だからか、継姉もいた。はー、あの意地悪ドス黒オーラは仮面でも隠せないよ。
アタシがホールに足を踏み入れると、会場中の視線が集中した。
何あの子やば、ぷっクスクス。ってこっちを横目で見ながら、イヤーな笑い方をしている。
なんで笑われてんの。ちゃんと場をわきまえた舞踏会用のドレス着てんじゃん!
「コルネリウス王子ご入場です」
くるくる髭のおじさんが仰々しく言う。
絵本から出てきたようなキラキラ王子が会場の中央に歩み出てきた。
「僕のために舞踏会に来てくれてありがとう、お嬢様がた。あまり固くならず、自分の家にいるように気楽に過ごしてほしい」
いや、こんなゴージャスなとこでそこまでくつろぐの無理。肩がこるわー。
さて、主役の王子も出てきたことだし、アタシ、帰っていいよね。帰るの遅くなると家主のライリーが心配するし。って思ったのに。
「君、面白い仮面をつけているね。そんなものどこで手に入るんだい」
「へ?」
とっとこお面のアタシに、王子が声をかけてきた。他の人に声をかけてるのかとも思ったけど、アタシは遠巻きにされてたから、会話の届く範囲に人はいない。
まじかよ、なんの特徴もない庶民《アタシ》に王子が話しかけてくるなんてシナリオ補正やばい。
ドレスだって貸ドレス屋の中でも一番やっすいドレスなのに。
「……アタシに言ってます?」
「そう、君に話している。せっかく出会えたんだ。1曲踊ってくれないか?」
「スミマセン。アタシはただの庶民なので、踊れません。ダンスのお誘いなら他の方にしてください。場違いだし、今すぐ帰ります。王妃探しガンバッテくださいね。それじゃ」
「ちょ、待ってくれ」
早口で挨拶して走り去る。ガラスの靴がかたっぽ脱げるなんてミスはしない。それこそ原作通りになっちゃう。
舞踏会を早退したら罪に問われるなんてことないよね?
夕暮れになる前にドレスを返しに来たから、貸ドレス屋さん目が点だったよ。他の人は明日まで借りてるのに、だってさ。あはは。
普段店頭に出るときの、ワンピースにエプロンという出で立ちに着替えて店に戻る。
「てんちょー、たっだいまー!」
「うお、レイラ!? 舞踏会に行ったんじゃなかったのかよ」
「行ったけどお店が心配で帰ってきた」
「ええええぇ………」
ライリーだけでなく、食事中だったお客様がたも言葉をなくしている。
「ドレスを着るより給仕服のほうがいいなんて、レイラはつくづく変わった子だなぁ」
「給仕服がいいんじゃなくて、てんちょーの手伝いがしたいの」
まだオーダーを取ってないらしいテーブルに走る。常連のおじちゃんがケラケラ笑う。
「王妃になれるかもしれないチャンスをふいにしちまうなんてなぁ。おうライリーよ、責任取ってレイラちゃんを嫁にもらうしかないんじゃないかい」
「わー、ほんと? ライリーがいいならアタシ今日からでも嫁になるよ!」
「こ、こらこら。大人をからかうな。女の子がかんたんに嫁になるなんて言うんじゃ……」
慌てふためくライリーが、手を滑らせてカップを落とした。
ほら、こんなふうだからライリーのこと放っておけないんだよ。