六畳一間の魔王さまの日本侵略日記
「町内納涼会とな」
夕ご飯を食べていると、魔王はトメさんに一枚のプリントを渡されました。
9月半ばの日曜に集落内の公園に集まってみんなで納涼会というものをするそうです。
「去年はリュウが小さかったから誘えなかったんだがね、今年はほら、もう歩けるようになったし、ご飯も少量なら食べられるだろう? どうだい?」
「そうだのう」
リュウの気持ちも大事なので、魔王はリュウに聞いてみます。
「リュウ。村のみんなでごはんを食べぬか」
「まんま?」
「そうじゃ」
「ん!」
行きたいようです。スプーンをもったままばんざいして喜びをあらわにします。
食べている最中だったので、口の端からこぼれたおかゆが、口の端とよだれかけについてしまいました。
「まんま、まんま」
「おお、楽しみだのう。ほれ」
魔王はウェットティッシュでリュウの口元をぬぐってあげます。
「まー?」
「そうそう。今日じゃなくて、来週じゃ。もう少ししたらだの」
明確な言葉ではなくとも、なんとなくリュウが言いたいことがわかるようになってきた魔王。トメさんも嬉しそうです。
「トロさん、あんたはほんに、いい父親らね。リュウも安心だ」
「立派なリュウになってほしいからのう」
ドラゴン顔負けなくらい丈夫で元気で強い子になるように、日々努力を惜しまないのです。祭という人が大勢集まるコミュニティに参加すれば、リュウは知り合いが増える、ひいては将来の配下を増やすことになります。
総理大臣になるには積み重ねが大事なのです。
そして納涼会当日。
夕暮れ時、公園には青いビニールシートが広げられました。そこに長いローテーブルを設置し、焼きそばや焼きとり、エビフライにゼリー、豚汁など所狭しと並べられます。
大人たちのテーブルにはビールや焼酎、子どもたちのテーブルにはジュースのペットボトルが用意されています。
魔王はリュウと一緒に子どもたちのテーブルにいます。
「おおいトロさんや、一杯飲まんかね」
町内会長が瓶ビールを持ってきましたが、魔王は断ります。酔っ払ってしまったらリュウの世話ができないからです。
「すまんのう、リュウの世話があるでの」
「納涼会でも子どものことを最優先にするなんて、あんたって人は……。代わりにこれをやる。いくらでも持って帰ってくれ!」
「そんなにもらっても、期限内に食い切れないのう」
大皿に乗ったオードブルを出されて苦笑いの魔王。リュウが食べられるフルーツゼリーだけもらいます。
スプーンでゼリーをすくって口元に持っていってやると、リュウは上機嫌でゼリーを食べます。とくにリンゴ味がお気に入りでした。
「俺のゼリーもやるよリュウ。でっかくなれよな」
「ぼくのもあげる」
「ありがたいのう。ほれ、リュウ。ケンとショウにありがとうを言うのだ」
「あーと」
ゼリーのカップを受け取りながら、リュウはお礼を言います。
「わたくしのエビフライも差し上げましてよ」
マージョまでもが皿を持ってお裾分けしにきました。
「すまんがマージョ。リュウはまだ揚げ物を食えん。それは自分で食べるといい」
「あらー、残念ですわ。では代わりにわたくしが焼いてきたクッキーを」
鞄から出てきたのは、クッキーと名乗るのはおこがましい、焦げ臭くて真っ黒な物体。
近くにいた全員が叫びました。
「マージョちゃんやめたげてよーーーー!」
夕ご飯を食べていると、魔王はトメさんに一枚のプリントを渡されました。
9月半ばの日曜に集落内の公園に集まってみんなで納涼会というものをするそうです。
「去年はリュウが小さかったから誘えなかったんだがね、今年はほら、もう歩けるようになったし、ご飯も少量なら食べられるだろう? どうだい?」
「そうだのう」
リュウの気持ちも大事なので、魔王はリュウに聞いてみます。
「リュウ。村のみんなでごはんを食べぬか」
「まんま?」
「そうじゃ」
「ん!」
行きたいようです。スプーンをもったままばんざいして喜びをあらわにします。
食べている最中だったので、口の端からこぼれたおかゆが、口の端とよだれかけについてしまいました。
「まんま、まんま」
「おお、楽しみだのう。ほれ」
魔王はウェットティッシュでリュウの口元をぬぐってあげます。
「まー?」
「そうそう。今日じゃなくて、来週じゃ。もう少ししたらだの」
明確な言葉ではなくとも、なんとなくリュウが言いたいことがわかるようになってきた魔王。トメさんも嬉しそうです。
「トロさん、あんたはほんに、いい父親らね。リュウも安心だ」
「立派なリュウになってほしいからのう」
ドラゴン顔負けなくらい丈夫で元気で強い子になるように、日々努力を惜しまないのです。祭という人が大勢集まるコミュニティに参加すれば、リュウは知り合いが増える、ひいては将来の配下を増やすことになります。
総理大臣になるには積み重ねが大事なのです。
そして納涼会当日。
夕暮れ時、公園には青いビニールシートが広げられました。そこに長いローテーブルを設置し、焼きそばや焼きとり、エビフライにゼリー、豚汁など所狭しと並べられます。
大人たちのテーブルにはビールや焼酎、子どもたちのテーブルにはジュースのペットボトルが用意されています。
魔王はリュウと一緒に子どもたちのテーブルにいます。
「おおいトロさんや、一杯飲まんかね」
町内会長が瓶ビールを持ってきましたが、魔王は断ります。酔っ払ってしまったらリュウの世話ができないからです。
「すまんのう、リュウの世話があるでの」
「納涼会でも子どものことを最優先にするなんて、あんたって人は……。代わりにこれをやる。いくらでも持って帰ってくれ!」
「そんなにもらっても、期限内に食い切れないのう」
大皿に乗ったオードブルを出されて苦笑いの魔王。リュウが食べられるフルーツゼリーだけもらいます。
スプーンでゼリーをすくって口元に持っていってやると、リュウは上機嫌でゼリーを食べます。とくにリンゴ味がお気に入りでした。
「俺のゼリーもやるよリュウ。でっかくなれよな」
「ぼくのもあげる」
「ありがたいのう。ほれ、リュウ。ケンとショウにありがとうを言うのだ」
「あーと」
ゼリーのカップを受け取りながら、リュウはお礼を言います。
「わたくしのエビフライも差し上げましてよ」
マージョまでもが皿を持ってお裾分けしにきました。
「すまんがマージョ。リュウはまだ揚げ物を食えん。それは自分で食べるといい」
「あらー、残念ですわ。では代わりにわたくしが焼いてきたクッキーを」
鞄から出てきたのは、クッキーと名乗るのはおこがましい、焦げ臭くて真っ黒な物体。
近くにいた全員が叫びました。
「マージョちゃんやめたげてよーーーー!」