六畳一間の魔王さまの日本侵略日記

 夏休みという期間に入りました。
 魔王にとって2回目の夏なので、日中も子どもたちがたくさんいるというのは慣れたもの。
 まだ日が昇って間もない時間に、リュウをおんぶしてケルベロスの散歩に出ました。
 日中はすごく暑いので、暑くなる前に済ませるのです。
 同じくお散歩中のケン&ポチ郎と出会いました。

「おっすトロ。今日もベロが元気だな」
「おお、ケンとポチ郎も元気そうじゃなあ」

 ケルベロスとポチ郎も仲が良くて、話す魔王とケンの間をぐるぐる回っています。

「あらまあ、お二人とも朝が早いですね。ごきげんよう」
「あ。いぬかいのおばちゃん。よっす!」
「おはよう。犬飼も朝が早いのう」

 ご近所のお散歩仲間、犬飼さんがやってきました。
 髪を紫に染めたおしゃれなマダムで、柴犬のポポが一緒です。
 ポポは犬たちの輪に加わって尻尾を振っています。
 犬たちの間にも井戸端会議というものがあるのかもしれません。

「リュウ君大きくなりましたね」
「おお、わかるか。もうすぐ新しい服を買わねばならんでの」
「それならうちの孫のを使いますか? もう着れなくなったものをとってあるんです」
「それは助かるのう」
「あ、俺が子どもの時のもやるよ。リュウに合いそうなの家にある」

 お裾分け、お下がりをよくもらうので、大助かりです。

 のどか荘に帰ったら、待ちわびた爺やが叫んでいました。

『うううう、なぜですか、なぜ爺を連れて行ってくれないのです魔王様!』
「前のような追いかけっこを繰り返したいのなら止めぬが……」

 脱走した爺やを捕まえるために村人総出で網を持って走り回りました。

「ワンワンワン!」
「おお、どうしたケルベロス」
『ケルベロスが犬たちと話して人間の情報を集めているように、窓辺に来る鳥たちと話したらいいんじゃないかと』
「なんと、そんなことをしておったのか、ケルベロス」

 さすがもと魔犬。ただの犬ではありません。

「さっきもなにか情報を得ていたのか?」
「わう!」
『………………ケンの家の今日の晩ご飯はカレー、犬飼の家はそうめん、ケルベロスも今日はそうめんを食べたいそうです』
「そうか。ではトメにも話しておこう」

 せっかく動物たちと会話できるのに、あんまり情報が役に立っていないような気がしてならない爺やでした。



image
42/45ページ
スキ