六畳一間の魔王さまの日本侵略日記
小田の家に匿われたユーシャは、久しぶりにあたたかなベッドで眠ることができました。
朝になってから、小田から服を借りました。
「助かったよオタくん」
「いえいえ。それはボクの兄が着てたものなんです。うちは三人兄弟でね、兄も姉も、『おらこんな田舎嫌だ! 東京さ行くだ』って上京してもう五年以上帰ってこないから好きに使ってください」
タンスの肥やしになるくらいなら、なんて小田は笑います。
「しかし、本当に良かったのか? 私はこの地域で手配されているんだろう。君のご両親が帰ってきたら何と言うか」
「フッフッフ。大丈夫です。うちの両親、海外出張でドイツにいるのであと三年は帰ってこない予定です。あなたのことは、同居することになった従兄のユウさんとでも言えば怪しまれません。転移転生系ゲームの鉄則ですよ」
とりあえずこのままお世話になっても迷惑がかからないというのは理解しました。
「ありがとう、この恩は必ず返す。一日も早く魔王を討ち取れるよう努力するよ」
決意を込めて、魔剣を掲げ持ちます。
「わわわわ、ユーシャさん。剣を持ち歩くのは禁止です。昨日も軽く話しましたが、武器を持っていると法律違反で逮捕されちゃいますよ」
「しかし何か持っていないと落ち着かない」
こちらの流儀に合わせる必要があるとはいえ、いつなんどき魔王が現れるかわかりません。丸腰でいるわけにはいかないのです。
「じゃあこれでも持っていてください。これなら怒られないので」
渡されたのは赤いハンマー。ハンマーにしてはかなり軽いです。
「これは一体」
「ピコハンです」
本気で叩いてもかすり傷一つつけることができない、パーティーグッズ。そんなこと知らないので、ユーシャはありがたく受け取りました。
「とりあえず町内会長に挨拶しに行きましょう」
「ええ!? 私は手配されているんですよね」
「誤解を解く必要があるでしょう。任せてください。とっときの設定があるので、会長さんと話すときひたすらボクに話を合わせてもらえれば解決します」
このまま不審者扱いされ続けると今後魔王を探す活動に支障をきたします。
小田が解決できるというのなら、任せてみようと思いました。
ユーシャは小田のあとについて、町内会長のお宅を訪問します。
「なななん、なんだぁ!? 小田んとこのせがれ、そいつと知り合いがか!?」
「落ち着いてください町内会長。この人はボクの従兄ユウ兄さんです」
「いとこぉ!?」
近所の高校生が不審者情報と似た男を連れてきたので、町内会長はびっくり仰天。のけぞりすぎて、カツラがずり落ちそうになっています。
つるピカなのは村中にバレバレなんだから、かぶるのをやめればいいのに。なんて、思っても言わない小田である。
「このたびはお騒がせしてすみません。東京のコスプレイベントで、どうしてもクオリティの高い仮装をしたくて兄さんに試しに着てもらってたんです」
「てことはなんだい。あの鎧みてーなのとでかい剣みたいなのは」
「ダンボールとプラスチックで作ったコスプレ衣装です」
ひたすら話を合わせろと言われているので、ユーシャもただただうなずきます。
「そうだったんか、仮装してただけなんか。勘違いで騒いじまって、わりぃことしたなぁ」
「いえ、こちらも紛らわしいことをしてすみませんでした」
田舎でうろつくコスプレイヤーという称号を得てしまったものの、不審者よりはマシです。
こうして、ユーシャは魔王を討伐するその日まで小田さんちのユウ兄さんとして生活することになりました。
朝になってから、小田から服を借りました。
「助かったよオタくん」
「いえいえ。それはボクの兄が着てたものなんです。うちは三人兄弟でね、兄も姉も、『おらこんな田舎嫌だ! 東京さ行くだ』って上京してもう五年以上帰ってこないから好きに使ってください」
タンスの肥やしになるくらいなら、なんて小田は笑います。
「しかし、本当に良かったのか? 私はこの地域で手配されているんだろう。君のご両親が帰ってきたら何と言うか」
「フッフッフ。大丈夫です。うちの両親、海外出張でドイツにいるのであと三年は帰ってこない予定です。あなたのことは、同居することになった従兄のユウさんとでも言えば怪しまれません。転移転生系ゲームの鉄則ですよ」
とりあえずこのままお世話になっても迷惑がかからないというのは理解しました。
「ありがとう、この恩は必ず返す。一日も早く魔王を討ち取れるよう努力するよ」
決意を込めて、魔剣を掲げ持ちます。
「わわわわ、ユーシャさん。剣を持ち歩くのは禁止です。昨日も軽く話しましたが、武器を持っていると法律違反で逮捕されちゃいますよ」
「しかし何か持っていないと落ち着かない」
こちらの流儀に合わせる必要があるとはいえ、いつなんどき魔王が現れるかわかりません。丸腰でいるわけにはいかないのです。
「じゃあこれでも持っていてください。これなら怒られないので」
渡されたのは赤いハンマー。ハンマーにしてはかなり軽いです。
「これは一体」
「ピコハンです」
本気で叩いてもかすり傷一つつけることができない、パーティーグッズ。そんなこと知らないので、ユーシャはありがたく受け取りました。
「とりあえず町内会長に挨拶しに行きましょう」
「ええ!? 私は手配されているんですよね」
「誤解を解く必要があるでしょう。任せてください。とっときの設定があるので、会長さんと話すときひたすらボクに話を合わせてもらえれば解決します」
このまま不審者扱いされ続けると今後魔王を探す活動に支障をきたします。
小田が解決できるというのなら、任せてみようと思いました。
ユーシャは小田のあとについて、町内会長のお宅を訪問します。
「なななん、なんだぁ!? 小田んとこのせがれ、そいつと知り合いがか!?」
「落ち着いてください町内会長。この人はボクの従兄ユウ兄さんです」
「いとこぉ!?」
近所の高校生が不審者情報と似た男を連れてきたので、町内会長はびっくり仰天。のけぞりすぎて、カツラがずり落ちそうになっています。
つるピカなのは村中にバレバレなんだから、かぶるのをやめればいいのに。なんて、思っても言わない小田である。
「このたびはお騒がせしてすみません。東京のコスプレイベントで、どうしてもクオリティの高い仮装をしたくて兄さんに試しに着てもらってたんです」
「てことはなんだい。あの鎧みてーなのとでかい剣みたいなのは」
「ダンボールとプラスチックで作ったコスプレ衣装です」
ひたすら話を合わせろと言われているので、ユーシャもただただうなずきます。
「そうだったんか、仮装してただけなんか。勘違いで騒いじまって、わりぃことしたなぁ」
「いえ、こちらも紛らわしいことをしてすみませんでした」
田舎でうろつくコスプレイヤーという称号を得てしまったものの、不審者よりはマシです。
こうして、ユーシャは魔王を討伐するその日まで小田さんちのユウ兄さんとして生活することになりました。