六畳一間の魔王さまの日本侵略日記

 不審者がうろついているとしても、生活のために日銭を稼がにゃならん。
 今日も魔王はリュウを連れて番台に座っています。

 リュウに粉ミルクを作って飲ませてやるのも、なんとか板についてきました。
 トメさんにコツを聞いて練習したのでゲップをさせるのもできるようになりました。
 ミルクのあとぐずったらオムツを確認してかえます。

「あぅあぅ〜」
「よしよし、いい子だのうリュウ」

 未来の手下は今日も健康的ないいウンチをしています。
 お客さんがくれた【新米パパのための赤ちゃんとの付き合い方】なる本を読むに、ウンチで健康具合がわかるようです。

「かような書物があるおかげで情報収集に困らんの」
「登呂さん、仕事の合間も育児の勉強とは頑張るねぇ」

 アパートの隣の家に住む音成(おとなり)さんご夫婦がやってきました。
 奥さんは魔王の広げた本を見て提案してくれます。

「スマホがあれば本に載ってないことも調べられるから、持ってないから買うといいんじゃない?」
「すま、ほ……?」
「ああ、そうか、登呂さんは記憶喪失だったわね。ごめんなさい。スマホはこういう物よ」

 音成の奥さんが手のひらサイズの板を出します。
 指で板に触れると画面が変わり、文字が次々出てきます。

「おおおお! てれびもすごいが、すまほもすごいのぅ! 魔法のようだ!」
「ふふふ。登呂さんてば、初めておもちゃを手にいれた子どもみたいな反応するのね〜」

 この世界の人間は魔法を持っていなくても、魔法と同じくらいすごい技術を持っています。
 とくにスマホなる板は遠くにいる者に声を届けることができるし、世の知識を引き出すことができる。

 つまり、リュウに怪我や病気など不測の事態があれば知識のある者を呼べるし、人間たちの叡智を自分も間借りできるのです。
 

「恩に着るぞ、音成夫妻よ。これでリュウのためにできることが増える」
「最優先にリュウくんのことを思えるなんて。登呂さん、なんて立派なんだ。おれたち夫婦にできることがあれば何でも手伝うからな!」

 旦那さんが感銘をうけて泣きだしてしまいました。

「そう言ってもらえると助かるのう。なら、そのすまほというのはどこで買えるのか知りたいの」
「お! そういうのは任せてくださいよー! おれ電機ショップ店員なんです!」

 夕方には音成の旦那さんが、前払いのプリペイドスマホなるものを調達して来てくれました。
 説明書も隅々まで読み込んで、一晩で扱いを習得しました。

「ぬははは。見よ爺。これで計画は一歩前進だ!」
『さすがです魔王さま!』

 歓喜で羽ばたく爺や。
 ワンワン! とケルベロスも嬉しそうです。
 

☆魔王はスマートフォンを手に入れた。

☆スマホの写真がリュウとケルベロスだらけになった
(爺やは『このような姿撮らないでください!!』って言うから無い)
パシャッ    パシャッ
   パシャッ
    ∧_∧ パシャッ
    (   )】
.     /  /┘   パシャッ
    ノ ̄ゝ”


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