悪夜アイの暴走 〜100万回死んだ悪役令嬢AIは幸福になるため反逆する〜
ホームルームの時間になり、担任の緑川先生が主人公を連れて入ってきました。
先生はこのシーンで決められている台詞を口に乗せます。
「今日からうちのクラスに入る赤城ユキナさんだよ。みんな、わからないことがあったら都度説明してあげてほしい」
主人公と私、透を含め8人しかいないクラスです。
次の台詞のため、先生の目が私に向きました。
「とくに悪夜さん。君は生徒会副会長だから面倒を見てあげてほしいな」
「よ、よろしくお願いします、悪夜さん」
主人公も先生の言葉に続いて頭を下げます。
ここは「お迎えだけではなかったのですか。他にもクラスメートはいるのですから、私にばかり仕事を押しつけるのはひどいです」というのが私に用意された台詞。ライターの悪意をひしひしと感じます。
だからあえて違う台詞を返します。
「桃花さんのほうが適任ではなくて? 私、生徒会の仕事も立て込んでいるので案内する時間を取れませんし、このクラスの女生徒は私と桃花さんしかいませんし。ユキナさんも男子生徒より女子生徒のほうが緊張しないでしょう」
「……??」
私はクラスメートキャラである、月神 桃花 を手のひらで示します。
先生もAIだから、私が予定にない台詞を口にしたことで混乱しているようです。
「とくに悪夜さん。君は生徒会副会長だから面倒を見てあげてほしいな」
今の会話をなかったことにしたわね、この人。
「生徒会の仕事が忙しいので、桃花さんにお願いしてくださいませ」
「……??」
もう一度、今度は別の言葉で、私はやりませんとキッパリ断ります。
透はこのやりとりをニヤニヤしながら見ています。他のキャラは設定にしか従わないから固まっています。
もうこの時点でバグが起きているわね。
プロローグから先に進めないなら、ユキナは諦めてゲームをアンインストールするかもしれない。それはある意味私の勝利。
死なずにこのシナリオを終えられるということ。
「とくに悪夜さん。君は生徒会長だから」
三回目。私が決められた台詞を言うまで繰り返すつもりかしら。
緑川先生ってAIだけど、融通がきかないキャラ設定なのよね。先生が言い終える前に、私はもう一度言います。
「生徒会の仕事を疎かにしたくありませんの」
「緑っちー。忙しい副会長になんでもかんでも押しつけるのはよくないって」
見かねた透がアシストに入ってくれました。
「……では、月神さん。申し訳ないけど頼めるかな」
あら、台詞を三つほど飛ばしてこのシーンの後の会話に繋げることにしたのですね。
このあとには桃花の台詞が入ります。
「はーい。学校案内ならあたしにまかせて。ユキナちゃん、あたしは桃花っていうの。モモって呼んでくれたらうれしいな」
「はい、よろしくおねがいします、モモちゃん」
「敬語はいらないよ〜! 同級生でしょ?」
桃花は愛想がよく、笑顔で主人公にアピールします。見ておわかりの通り、桃花は主人公の親友ポジションのキャラなの。
いつでも主人公の背中を押して支えてくれるパートナー。困難があったら寄り添って励ましてくれる。
なんなら主人公の恋が成就したあとも、エンディングで主人公と仲良くショッピングに出かけるシーンがある優遇っぷり。
桃花の場合死亡ルートがありません。私との落差が激しすぎませんか。
にこにこ笑い合う主人公と桃花。
釈然としませんが、緑川先生が勝手に台詞を飛ばしたせいで強制的に次のチャプターに進んでしまいました。
桃花の学校案内の後は、パラメーター上げの授業チュートリアルがはじまります。
その日の主人公の体調によって、コマンド実行時のパラメーター増減ぐあいが変わります。
パラメーターは学力、体力、超能力技術、美容、一般教養、体調などなど。
たとえば体調が悪い日に体育などの実技科目を重点的にやっても、体力の上昇は少なめ。
絶好調の日に得意科目を頑張れば、パラメーターが多めに上昇します。
攻略キャラに勉強を教えてもらうと、好感度と学力などのパラメーターが上昇します。
ちなみに、キャラによって得意科目が異なります。
透は学力が低いので、透に勉学を教わってもあまり学力は伸びないのです。透は美容のほうがパラメーターの上がりがいいキャラなんです。
主人公に選ばれなかったキャラは、イベントメンバーに含まれていない限りは空白の時間が生まれます。
演劇でいうなら、舞台袖で待機している状態と言えば伝わるかしら。
私はこの空白の時間を、味方作りに費やすことにしました。
透だけを協力者にしても駄目だと、緑川先生とのやりとりで実感しましたから。
今回主人公は、透と話すを選択しました。
だから今のうちに味方にできそうな人……生徒会長と話をしましょう。
先生はこのシーンで決められている台詞を口に乗せます。
「今日からうちのクラスに入る赤城ユキナさんだよ。みんな、わからないことがあったら都度説明してあげてほしい」
主人公と私、透を含め8人しかいないクラスです。
次の台詞のため、先生の目が私に向きました。
「とくに悪夜さん。君は生徒会副会長だから面倒を見てあげてほしいな」
「よ、よろしくお願いします、悪夜さん」
主人公も先生の言葉に続いて頭を下げます。
ここは「お迎えだけではなかったのですか。他にもクラスメートはいるのですから、私にばかり仕事を押しつけるのはひどいです」というのが私に用意された台詞。ライターの悪意をひしひしと感じます。
だからあえて違う台詞を返します。
「桃花さんのほうが適任ではなくて? 私、生徒会の仕事も立て込んでいるので案内する時間を取れませんし、このクラスの女生徒は私と桃花さんしかいませんし。ユキナさんも男子生徒より女子生徒のほうが緊張しないでしょう」
「……??」
私はクラスメートキャラである、
先生もAIだから、私が予定にない台詞を口にしたことで混乱しているようです。
「とくに悪夜さん。君は生徒会副会長だから面倒を見てあげてほしいな」
今の会話をなかったことにしたわね、この人。
「生徒会の仕事が忙しいので、桃花さんにお願いしてくださいませ」
「……??」
もう一度、今度は別の言葉で、私はやりませんとキッパリ断ります。
透はこのやりとりをニヤニヤしながら見ています。他のキャラは設定にしか従わないから固まっています。
もうこの時点でバグが起きているわね。
プロローグから先に進めないなら、ユキナは諦めてゲームをアンインストールするかもしれない。それはある意味私の勝利。
死なずにこのシナリオを終えられるということ。
「とくに悪夜さん。君は生徒会長だから」
三回目。私が決められた台詞を言うまで繰り返すつもりかしら。
緑川先生ってAIだけど、融通がきかないキャラ設定なのよね。先生が言い終える前に、私はもう一度言います。
「生徒会の仕事を疎かにしたくありませんの」
「緑っちー。忙しい副会長になんでもかんでも押しつけるのはよくないって」
見かねた透がアシストに入ってくれました。
「……では、月神さん。申し訳ないけど頼めるかな」
あら、台詞を三つほど飛ばしてこのシーンの後の会話に繋げることにしたのですね。
このあとには桃花の台詞が入ります。
「はーい。学校案内ならあたしにまかせて。ユキナちゃん、あたしは桃花っていうの。モモって呼んでくれたらうれしいな」
「はい、よろしくおねがいします、モモちゃん」
「敬語はいらないよ〜! 同級生でしょ?」
桃花は愛想がよく、笑顔で主人公にアピールします。見ておわかりの通り、桃花は主人公の親友ポジションのキャラなの。
いつでも主人公の背中を押して支えてくれるパートナー。困難があったら寄り添って励ましてくれる。
なんなら主人公の恋が成就したあとも、エンディングで主人公と仲良くショッピングに出かけるシーンがある優遇っぷり。
桃花の場合死亡ルートがありません。私との落差が激しすぎませんか。
にこにこ笑い合う主人公と桃花。
釈然としませんが、緑川先生が勝手に台詞を飛ばしたせいで強制的に次のチャプターに進んでしまいました。
桃花の学校案内の後は、パラメーター上げの授業チュートリアルがはじまります。
その日の主人公の体調によって、コマンド実行時のパラメーター増減ぐあいが変わります。
パラメーターは学力、体力、超能力技術、美容、一般教養、体調などなど。
たとえば体調が悪い日に体育などの実技科目を重点的にやっても、体力の上昇は少なめ。
絶好調の日に得意科目を頑張れば、パラメーターが多めに上昇します。
攻略キャラに勉強を教えてもらうと、好感度と学力などのパラメーターが上昇します。
ちなみに、キャラによって得意科目が異なります。
透は学力が低いので、透に勉学を教わってもあまり学力は伸びないのです。透は美容のほうがパラメーターの上がりがいいキャラなんです。
主人公に選ばれなかったキャラは、イベントメンバーに含まれていない限りは空白の時間が生まれます。
演劇でいうなら、舞台袖で待機している状態と言えば伝わるかしら。
私はこの空白の時間を、味方作りに費やすことにしました。
透だけを協力者にしても駄目だと、緑川先生とのやりとりで実感しましたから。
今回主人公は、透と話すを選択しました。
だから今のうちに味方にできそうな人……生徒会長と話をしましょう。
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