真実の愛を選んだら婚約者に呪われて一日が200文字になった騎士の話

 あれから一年。
 カナリは二度と魔法を使うことはできないよう魔封じを施された。ノアーク家の籍を抜かれ、今では平民として暮らしている。
 フーの事業は廃業となり、借金返済のために鉱山の下働きになった。
 たびたび逃げ出しては引きずり戻されているとかなんとか。
 どちらともあれ以来会っていないから、噂でしか知らない。


 僕とヒイロは結婚して、ゼン領の港町で共に暮らしている。

 僕は騎士隊に入隊し、町の警備をする。
 ヒイロは町の食堂で働いている。

 そしてあのとき助けにきてくれた村の人たちに恩返しをするため、仕事が休みの日は二人で村に行き、農作業の手伝いをしている。

「あんたらみたいに若い子が、へんぴなとこで農作業なんてつまらんだろうに」

 なんて笑うおじいさんたちに、僕とヒイロは笑顔を返す。

「すごく楽しいですよ。それに、これくらいじゃまだまだ恩を返し切れていないです」
「私もです。しばらくは来れなくなるから、今のうちにできるだけ恩返しするの」

 ヒイロのお腹には新しい命が宿っている。
 お医者様の話では、年明けの春頃に生まれる予定だ。
 村のみんなはまるで我が子の誕生かのように両手を上げて喜んでくれた。

「そいつぁめでたいな。お祝いをしなきゃならねぇ。おい母さんや、あれ持ってきてくれ!!」
「はいよ!」

 お礼に来たはずなのに祝いの品を大量にもらってしまった。
 ご厚意を無碍にするのも忍びなくて、お礼を言って受け取ることにした。

 ヒイロと家路を歩きながら、僕はヒイロに言葉をおくる。
 呪いで縛られていたからこそ、一分一秒、言葉のひとつひとつが宝のようだと改めて思う。

「ヒイロ。愛しているよ」
「私も。あなたを愛しているわ、セイ」

 これまではヒイロだけに贈ってきた愛しているを、こんどは我が子にも贈ることになる。
 大切なものが増えていくことの喜びをかみしめる。
 願わくば、この幸せがいつまでも続きますように。



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