中の人にも祝福を!〜リアルで口下手すぎるライバーは、自分を変えたくて奮闘する〜
紅茶を飲みながら、ゆっちはうまく喋れない原因をつきとめようと言う。
「クライスさん、ライブ配信の時はけっこうスムーズに話しているように思うんですけど」
「え、と」
言われてみれば不思議だ。
目の前に人がいると、どうしても僕は間違えてないかな、失礼はなかったかなってすごく気になってしまう。
配信だと平気なのは何でだろう。
シンヤと会話するときわりと平気なのは、幼なじみだからだと思う。
幼稚園の頃から交流があるから、僕が口下手なのを知っているし、知った上で付き合ってくれている。
世の中そんな人ばかりじゃない。
なんで、配信だと気にせず喋れるんだろう。
配信しているときのことを思い出しながら答える。
「うーん、……顔が見えない、から? コメントを読むのって、友達とメールする感覚に近いというか」
「顔がみえるのがだめ?」
「……たぶん」
世の中のみんながみんな、「チビに人権はなし」と思っているわけじゃないのはわかるけど、どうしても高校の時の黒歴史が脳裏をかすめる。
思い出すと今でも心臓がバクバクいう。
「なら、私もアバターを作ります。アバターで話すならそんなに緊張しないんじゃないでしょうか。クライスさんが使っているようなアバターって、学生でも作れますか?」
「う、うん。このアプリで作れる。無料素材も豊富だから、課金しなくても、できること多い」
自分のスマホを出してアバター作成アプリを見せると、ゆっちはすぐにストア検索してインストールした。
なんて行動力だ。
「ふんふん。操作で分からないところがあったら教えてください」
「あ、うん」
「この髪の毛のパーツ? 別枠でいくつもあるけど、どう違うんです」
「前髪・後ろ髪・ポニーテールなどパーツ・アホ毛」
「なるほど。髪色は? いま黒になってますけど」
「髪パーツ操作中に出ている筆マークで……」
ひとつひとつ聞かれるたびに答えていく。
ゆっちはその場でピンクツインテールのメイドを作り上げた。
細身で小柄、ふわふわのツインテールがよく似合うアバターだ。
「アバター作るの楽しいですねえ。アタシ、こういう体型になりたいんです」
「うん。理想の自分になれるから、ライバーするの好きなんだ」
「理想の自分。だからかぁ」
ゆっちもいつかなりたいスマートな自分を夢見て、アバターを作った。
僕も、高身長でハキハキ喋れる大人の男に憧れてクライスを作った。
気持ちをわかってもらえてなんだか嬉しいな。
「じゃあテレビ通話するとき、これを使えば緊張しないですね」
「たぶん」
スケジュール帳アプリを開いてお互いの都合のいい日を確認し、水曜の午後7時ころテレビ通話をしてみるということになった。
「アタシでどこまで役に立てるかわからないけど、クライスさんのお手伝いがんばりますね!」
「う、うん、ありがとう。僕も、ゆっちの恋がうまく行くよう、応援する」
ここまでしてくれるなんて、いい子すぎて泣ける。
家に帰ってからスケジュール帳アプリを開いて、間違いなくオフ会をしてテレビ通話の約束をしていることを何度も何度も確認する。
「へへへへ。夢じゃない。夢じゃない。ああ、嬉しいなぁ。オフ会ってすごく楽しいんだなぁ」
ベッドの上をゴロゴロ転がる。たまたま窓に映った顔がしまりなさすぎて、自分で引いた。
「クライスさん、ライブ配信の時はけっこうスムーズに話しているように思うんですけど」
「え、と」
言われてみれば不思議だ。
目の前に人がいると、どうしても僕は間違えてないかな、失礼はなかったかなってすごく気になってしまう。
配信だと平気なのは何でだろう。
シンヤと会話するときわりと平気なのは、幼なじみだからだと思う。
幼稚園の頃から交流があるから、僕が口下手なのを知っているし、知った上で付き合ってくれている。
世の中そんな人ばかりじゃない。
なんで、配信だと気にせず喋れるんだろう。
配信しているときのことを思い出しながら答える。
「うーん、……顔が見えない、から? コメントを読むのって、友達とメールする感覚に近いというか」
「顔がみえるのがだめ?」
「……たぶん」
世の中のみんながみんな、「チビに人権はなし」と思っているわけじゃないのはわかるけど、どうしても高校の時の黒歴史が脳裏をかすめる。
思い出すと今でも心臓がバクバクいう。
「なら、私もアバターを作ります。アバターで話すならそんなに緊張しないんじゃないでしょうか。クライスさんが使っているようなアバターって、学生でも作れますか?」
「う、うん。このアプリで作れる。無料素材も豊富だから、課金しなくても、できること多い」
自分のスマホを出してアバター作成アプリを見せると、ゆっちはすぐにストア検索してインストールした。
なんて行動力だ。
「ふんふん。操作で分からないところがあったら教えてください」
「あ、うん」
「この髪の毛のパーツ? 別枠でいくつもあるけど、どう違うんです」
「前髪・後ろ髪・ポニーテールなどパーツ・アホ毛」
「なるほど。髪色は? いま黒になってますけど」
「髪パーツ操作中に出ている筆マークで……」
ひとつひとつ聞かれるたびに答えていく。
ゆっちはその場でピンクツインテールのメイドを作り上げた。
細身で小柄、ふわふわのツインテールがよく似合うアバターだ。
「アバター作るの楽しいですねえ。アタシ、こういう体型になりたいんです」
「うん。理想の自分になれるから、ライバーするの好きなんだ」
「理想の自分。だからかぁ」
ゆっちもいつかなりたいスマートな自分を夢見て、アバターを作った。
僕も、高身長でハキハキ喋れる大人の男に憧れてクライスを作った。
気持ちをわかってもらえてなんだか嬉しいな。
「じゃあテレビ通話するとき、これを使えば緊張しないですね」
「たぶん」
スケジュール帳アプリを開いてお互いの都合のいい日を確認し、水曜の午後7時ころテレビ通話をしてみるということになった。
「アタシでどこまで役に立てるかわからないけど、クライスさんのお手伝いがんばりますね!」
「う、うん、ありがとう。僕も、ゆっちの恋がうまく行くよう、応援する」
ここまでしてくれるなんて、いい子すぎて泣ける。
家に帰ってからスケジュール帳アプリを開いて、間違いなくオフ会をしてテレビ通話の約束をしていることを何度も何度も確認する。
「へへへへ。夢じゃない。夢じゃない。ああ、嬉しいなぁ。オフ会ってすごく楽しいんだなぁ」
ベッドの上をゴロゴロ転がる。たまたま窓に映った顔がしまりなさすぎて、自分で引いた。