中の人にも祝福を!〜リアルで口下手すぎるライバーは、自分を変えたくて奮闘する〜
服飾学校のファッションショーで司会をする。という情報が解禁になってから、一気にフォロワーが増えた。
一晩で増えたフォロワー数は2000。何度見直しても数字は間違っていない。
ライバー事務所契約していないライバーがそんな仕事をもらうなんてたぶん、かなり異例のこと。
当日まで黙っていた方がよかったかな。期待した割にたいしたことないって思われないか、余計な心配をしてしまう。
こういう思考も暗い陰キャだからずっと会社でぼっちだったわけだけども。
今日はかなみさんと川辺の公園に来ている。
九月下旬でもまだ残暑が厳しくて、半袖でいても暑くて汗がとまらない。
公園内にある東屋で、かなみさんが作ってくれたお弁当を食べながら話をする。
離れたところでは子供連れの人たちがシートを広げて同じように休憩していて、町の音もわずかに聞こえるくらい。
かなみさんは町中より、こういう静かなところの方が落ち着けるみたいだ。
「倉井さん。クライスの司会、来週ですよね。楽しみだな」
「心臓が口から飛び出そうって、こういうときの心境を言うんだろうね……」
情けないなあ自分。
ゆっち曰く、夏休み中もみんな学校に行って資料を借りたり作業部屋を借りたりして、夏休みは名前だけだったらしい。
ほぼ毎日クラスメート全員が顔を合わせて制作に集中する。ゆっちからみんなががんばっていることを聞いていたから、
九頭たちの『既製品をつぎはぎして卒業制作として提出する』……っていう話を聞かなかったことにはできなくて。僕は先生と2回目の顔合わせの時、そっと教えた。
学校から出てきた生徒でそんな話をしながら歩いている子を見てしまった。
「生徒の名前までは知らないけれど」と前おいて話したけれど、先生はそれが誰なのか想像がついたのか、「うちの生徒がそんなことをするわけない」とは言わず、「集会で注意喚起しておきます」と答えた。
ここで彼らが反省して真面目に服の制作をしてくれればいいけれど、どうだろう。
「そのファッションショーって、かなみさんのお友達が出るんだって?」
「はい。一学年先輩の幼なじみがいて、その子がこの学校に進学したんです。だから、ショーの話を聞いて、かなうなら応援しに行きたいと思って」
仲のいい幼なじみが出る、というのと同時に、彼らが同じ学校に進学していることも、かなみさんは知っていた。
「彼らがいるのは怖い。けれど、倉井さんが一緒に行ってくれるなら勇気が出ると思うんです。先生も、不安なら行ってくれるって」
「そっか。先生もいてくれるなら安心だね」
休日に患者の心労ケアって、普通に考えたら医者の仕事の範囲を超えている気がする。
以前ヘアサロンで出会った歩さんが初田先生と旧友だそうで、「初斗は普通じゃ考えられないことを平気でするタイプなのよ」と教えてくれた。
もし彼らと出会っても、先生がフォローしてくれるなら。僕も司会をしている間は守ってあげられないから、そのほうが助かる。
そしてついに10月。
ゆっちの学校で行われるファッションショー開催当日となった。
一晩で増えたフォロワー数は2000。何度見直しても数字は間違っていない。
ライバー事務所契約していないライバーがそんな仕事をもらうなんてたぶん、かなり異例のこと。
当日まで黙っていた方がよかったかな。期待した割にたいしたことないって思われないか、余計な心配をしてしまう。
こういう思考も暗い陰キャだからずっと会社でぼっちだったわけだけども。
今日はかなみさんと川辺の公園に来ている。
九月下旬でもまだ残暑が厳しくて、半袖でいても暑くて汗がとまらない。
公園内にある東屋で、かなみさんが作ってくれたお弁当を食べながら話をする。
離れたところでは子供連れの人たちがシートを広げて同じように休憩していて、町の音もわずかに聞こえるくらい。
かなみさんは町中より、こういう静かなところの方が落ち着けるみたいだ。
「倉井さん。クライスの司会、来週ですよね。楽しみだな」
「心臓が口から飛び出そうって、こういうときの心境を言うんだろうね……」
情けないなあ自分。
ゆっち曰く、夏休み中もみんな学校に行って資料を借りたり作業部屋を借りたりして、夏休みは名前だけだったらしい。
ほぼ毎日クラスメート全員が顔を合わせて制作に集中する。ゆっちからみんなががんばっていることを聞いていたから、
九頭たちの『既製品をつぎはぎして卒業制作として提出する』……っていう話を聞かなかったことにはできなくて。僕は先生と2回目の顔合わせの時、そっと教えた。
学校から出てきた生徒でそんな話をしながら歩いている子を見てしまった。
「生徒の名前までは知らないけれど」と前おいて話したけれど、先生はそれが誰なのか想像がついたのか、「うちの生徒がそんなことをするわけない」とは言わず、「集会で注意喚起しておきます」と答えた。
ここで彼らが反省して真面目に服の制作をしてくれればいいけれど、どうだろう。
「そのファッションショーって、かなみさんのお友達が出るんだって?」
「はい。一学年先輩の幼なじみがいて、その子がこの学校に進学したんです。だから、ショーの話を聞いて、かなうなら応援しに行きたいと思って」
仲のいい幼なじみが出る、というのと同時に、彼らが同じ学校に進学していることも、かなみさんは知っていた。
「彼らがいるのは怖い。けれど、倉井さんが一緒に行ってくれるなら勇気が出ると思うんです。先生も、不安なら行ってくれるって」
「そっか。先生もいてくれるなら安心だね」
休日に患者の心労ケアって、普通に考えたら医者の仕事の範囲を超えている気がする。
以前ヘアサロンで出会った歩さんが初田先生と旧友だそうで、「初斗は普通じゃ考えられないことを平気でするタイプなのよ」と教えてくれた。
もし彼らと出会っても、先生がフォローしてくれるなら。僕も司会をしている間は守ってあげられないから、そのほうが助かる。
そしてついに10月。
ゆっちの学校で行われるファッションショー開催当日となった。