中の人にも祝福を!〜リアルで口下手すぎるライバーは、自分を変えたくて奮闘する〜
先生に紹介されて、僕とかなみさんは植物園に入った。
入り口でパンフレットもらって、ラベンダーのコーナーを歩く。
ラベンダー企画は今日が最終日と書いてあるから、運が良かった。
祭の方に人が行っているからか、日曜日なのにけっこうすいている。
一面紫色で、風が吹くたびに優しい香りがする。
芳香剤でラベンダーの香りっていうのがあるけれど、本物の香りはやはり違う。
「きれいなところだね」
「……はい」
かなみさんが顔を上げる。
三人組がいたときは真っ青だった顔は、いくらか和らいでいる。
「あの、パンフレットに園内カフェがあるって書いてあるから、行ってみませんか。ちょっと休憩したくて」
疲れたでしょうって言うと、たぶんかなみさんは「そんなことない」って遠慮してしまう。さっきも、迷惑をかけてゴメンナサイって、かなみさんのせいじゃないのに謝った。
自分と似ているからこそ、どう言われれば負担じゃないかなんとなくわかった。
「あ、そう、ですよね。倉井さんだって、たくさん歩いたら、つかれます、よね」
「あはは。電車通勤で運動不足なんだ」
会社は駅のすぐ近くにあるし、マンションから最寄り駅もけっこう近い。事務仕事だから職場の中では運動と言えるほど歩かないし。
「あ、よかった。ここ券売式なんだ」
店に入ってすぐのところに券売機が設置されていた。
口下手に優しい店、最高。壁に貼られているメニュー表を参考にして、日替わりケーキセットを二つ注文した。
飲み物は紅茶かお茶、コーヒー、薔薇のジュースの四択だったから、ジュースを選ぶ。
番号付きの呼び出しベルをもらってテラス席をとる。
カフェのまわりには常設の薔薇が色とりどりに咲いていて、ラベンダーのコーナーとはまた違う甘い香りが漂っている。
「私、普通に暮らせるように、なりたい、だけなのにな……。普通すら、難しい……」
2年間家に引きこもっていたかなみさんには、普通の散歩すら疲れること。人の目が怖くて、ここに来るまでにもすごく時間がかかった。
「かなみさんのペースでいいよ。普通って、人によって違うと思うし。僕も、喋るの得意じゃない、から……」
「……ありがとう、ございます」
ベルが鳴って、ケーキを取りに行く。
「みて、かなみさん。薔薇のジュースすごいきれいな色だよ」
「わ、ほんとだ。透明なピンク色」
薔薇のシロップを炭酸ソーダでわっているらしく、ストローに口をつけると香りが鼻を抜ける。
日替わりは甘さ控えめのイチゴショートで、薔薇のジュースとの相性が抜群だった。
ケーキを食べ終える頃には、かなみさんはすっかり笑顔を取り戻していた。
「あの、倉井さん。ごめんなさい、いろいろ、ありがとう」
「いいよ。僕もすごくいい気分転換になったし。かなみさんが嫌でないなら、今日まわれなかったところ、次に来るとき見よう」
あんな奴らのせいでかなみさんが自由に出歩けないなんて嫌だ。
僕が一緒にいることで歩けるなら、なにもせずぼんやり過ごすだけだった時間はかなみさんのために使いたい。
「……いいん、ですか? ご迷惑じゃ」
「迷惑なら提案しないよ」
「な、なら、また、来たい、です」
こうして、また一緒にここに来ることに決まった。
まだ早い時間だけど、かなみさんの体力を考慮して帰路につく。
座席についてすぐ、かなみさんは船をこぎ始める。やっぱり体力が落ちているから、半日に満たないお出掛けでも疲れるんだな。
かなみさんを家に送り届けて、僕も家路につく。
うん、かなみさんがあんなにがんばっているんだから、僕もがんばろう。
気合いを入れ直して新しい週を迎えた。
入り口でパンフレットもらって、ラベンダーのコーナーを歩く。
ラベンダー企画は今日が最終日と書いてあるから、運が良かった。
祭の方に人が行っているからか、日曜日なのにけっこうすいている。
一面紫色で、風が吹くたびに優しい香りがする。
芳香剤でラベンダーの香りっていうのがあるけれど、本物の香りはやはり違う。
「きれいなところだね」
「……はい」
かなみさんが顔を上げる。
三人組がいたときは真っ青だった顔は、いくらか和らいでいる。
「あの、パンフレットに園内カフェがあるって書いてあるから、行ってみませんか。ちょっと休憩したくて」
疲れたでしょうって言うと、たぶんかなみさんは「そんなことない」って遠慮してしまう。さっきも、迷惑をかけてゴメンナサイって、かなみさんのせいじゃないのに謝った。
自分と似ているからこそ、どう言われれば負担じゃないかなんとなくわかった。
「あ、そう、ですよね。倉井さんだって、たくさん歩いたら、つかれます、よね」
「あはは。電車通勤で運動不足なんだ」
会社は駅のすぐ近くにあるし、マンションから最寄り駅もけっこう近い。事務仕事だから職場の中では運動と言えるほど歩かないし。
「あ、よかった。ここ券売式なんだ」
店に入ってすぐのところに券売機が設置されていた。
口下手に優しい店、最高。壁に貼られているメニュー表を参考にして、日替わりケーキセットを二つ注文した。
飲み物は紅茶かお茶、コーヒー、薔薇のジュースの四択だったから、ジュースを選ぶ。
番号付きの呼び出しベルをもらってテラス席をとる。
カフェのまわりには常設の薔薇が色とりどりに咲いていて、ラベンダーのコーナーとはまた違う甘い香りが漂っている。
「私、普通に暮らせるように、なりたい、だけなのにな……。普通すら、難しい……」
2年間家に引きこもっていたかなみさんには、普通の散歩すら疲れること。人の目が怖くて、ここに来るまでにもすごく時間がかかった。
「かなみさんのペースでいいよ。普通って、人によって違うと思うし。僕も、喋るの得意じゃない、から……」
「……ありがとう、ございます」
ベルが鳴って、ケーキを取りに行く。
「みて、かなみさん。薔薇のジュースすごいきれいな色だよ」
「わ、ほんとだ。透明なピンク色」
薔薇のシロップを炭酸ソーダでわっているらしく、ストローに口をつけると香りが鼻を抜ける。
日替わりは甘さ控えめのイチゴショートで、薔薇のジュースとの相性が抜群だった。
ケーキを食べ終える頃には、かなみさんはすっかり笑顔を取り戻していた。
「あの、倉井さん。ごめんなさい、いろいろ、ありがとう」
「いいよ。僕もすごくいい気分転換になったし。かなみさんが嫌でないなら、今日まわれなかったところ、次に来るとき見よう」
あんな奴らのせいでかなみさんが自由に出歩けないなんて嫌だ。
僕が一緒にいることで歩けるなら、なにもせずぼんやり過ごすだけだった時間はかなみさんのために使いたい。
「……いいん、ですか? ご迷惑じゃ」
「迷惑なら提案しないよ」
「な、なら、また、来たい、です」
こうして、また一緒にここに来ることに決まった。
まだ早い時間だけど、かなみさんの体力を考慮して帰路につく。
座席についてすぐ、かなみさんは船をこぎ始める。やっぱり体力が落ちているから、半日に満たないお出掛けでも疲れるんだな。
かなみさんを家に送り届けて、僕も家路につく。
うん、かなみさんがあんなにがんばっているんだから、僕もがんばろう。
気合いを入れ直して新しい週を迎えた。