中の人にも祝福を！〜リアルで口下手すぎるライバーは、自分を変えたくて奮闘する〜
7時になり、コラボ配信用の招待コードをゆっちに送る。
ゆっちのアバターが入ったのを確認してからゆっちに確認する。
「ゆっち、大丈夫ですか？ 音声もちゃんと繋がっているかな」
「は、はい。大丈夫です。ううう、あたしがコラボすることで反対の声がでないか心配です……」
「みんな優しいから、そんなことにならないですよ。それに暴言の類いは弾かれるシステムになっているし、スラングを使って攻撃する人は僕がブロックで強制退室させるから」
スタリーでは配信者とリスナー間のトラブルを防止するため、特定のワードは入力できない使用になっている。
例えば死ねとか下手クソという暴言、電話番号などの個人情報にまつわる数字はコメント欄に打ち込むと【使えない単語です】とシステムメッセージが出て消去される。
そして他のリスナーに迷惑をかけるユーザーがいるなら、配信者の権限でブロック。枠から強制退室させる機能がある。
だからゆっちが心配するようなことはよほどのことがない限り起こらないのだけど、心配してしまう気持ちはわかる。
「まだ初日なんだから、噛んだり読み間違えたりもあると思う。僕もよく間違えていたでしょう。みんな最初は失敗するから、気楽にいこう」
「そうです、よね。はい。がんばります」
息を落ち着けて、配信スタートのボタンを押す。
かなみさん、田中さん、えびのしっぽに、ちゃん天使、タケ、ムーマ、他にもたくさん、フォロワーが入室してくる。
それにコラボ宣伝を見てきたのか、普段見かけないリスナーも次々に入ってくる。
それだけ期待値が高いのか。心臓がバクバクいっている。
「ごきげんよう、クライスです。みんな、来てくれてありがとう」
たなかかな？［ごきげんようクライス。初めて見るライバーさんだ！ 新人さん？］
タケSub［ごきげんよう！ まさかのメイドさん！］
えびのしっぽ［ごきげんようー。メイドさんかわいい］
みんなの反応は上々だ。
ゆっち＝リリーだと隠すつもりはないとゆっちが前もって言っているから、僕はみんなにそのように紹介する。
「この子が今日のコラボライバーです。いつも来てくれている人には、実はなじみある子なんだ。さあリリー。挨拶をどうぞ」
僕が促すと、ゆっちは深呼吸してお辞儀する。
「ごきげんよう！ 新人ライバーのリリーです。見ての通りメイドしてます。クライスさんの枠ではゆっち、って言ったらわかるかな。一念発起してライバーになることにしました。クライスさんのご厚意で、コラボさせてもらえることになりました。よろしくお願いします」
アルミ缶の上にあるミカン［まさかのゆっち！！ ライバーとしてはリリーか。良いね！］
たなか兄［ゆっちがライバーデビュー！？］
よかった。みんな歓迎ムードだ。僕もほっとする。
「そう、みんながよく知るゆっちだよ。僕もコラボは初めてだから、失敗するところもあるかもしれません。温かく見守っていただけたら幸いです。せっかくだから今日歌うのは二人以上のパートがある曲を厳選しているから、曲目はＳＮＳの固定投稿をご覧ください。それでは一曲目はシンデレラ。いきますよ、リリー！」
「はい、クライス先輩！」
まずはカラオケで何回もいれて練習した曲だ。王子と灰被りが出会うシーンを描いた歌で、とても人気が高い。
ちゃん天使［(o🪄'▽')o🪄(o🪄'▽')o🪄］
イヌ派［ｽﾞｲ (ง˘ω˘)วｽﾞｲｽﾞｲ (ง˘ω˘)วｽﾞｲ］
ちゃん天使［(o🪄'▽')o🪄(o🪄'▽')o🪄］
イヌ派［ｽﾞｲ (ง˘ω˘)วｽﾞｲ₍₍ (ง ´◔ ω◔` )ว ⁾⁾］
もちもち《初見》［はじめましてー］
タケSub［わー！ リリーもうまっ！］
タケSub［タケSubがギフト【拍手喝采】を贈りました］
たなかかな？［ないぎふー！］
たなかかな[•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•
ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊₊˚•*¨*•.¸¸˚]
「みんな、キラコメ弾幕ありがとう！ もちもち、ごきげんよう。来てくれてありがとう。今日はコラボ配信をしているよ。プロフィールとＳＮＳ固定に今日の曲目を載せているから確認してくださいね。あ、タケ、ギフトありがと！」
「わわわっ、ありがと！ ……ガラスの靴はー」
ゆっちは初めてだから、歌の合間にお礼を言おうとして、歌がつっかえた。
僕も初配信時はこんな感じだったな－。慣れると、コメントにお礼を返す配分がだんだん身についてくる。
間奏が長い曲なら、お礼や新規さんへの挨拶は間奏中に言う。
一曲目が終わって、雑談用のＢＧＭに切り替える。
たなかかな？［８８８８８８８８］
ムーマ［８８８８８８８］
アルミ缶の上にあるミカン［👏👏👏👏👏👏👏👏］
みんなから拍手コメントが届いて、リリーアバターがあわあわしている。
「ああああ、は、拍手ありがとう。あ、フォローも！？ うれしいな」
クライスの古参フォロワーは、ゆっちとも古いなじみだ。だからみんな続々とリリーのフォローもしていく。
「はー、クライスさん毎日配信をしているってすごいです。あたしいま、緊張しすぎて両手すっごく汗かいてベタベタなんですよ。ほら」
「リリー。僕らはアバターだから、汗、見えないですよ」
「こういうのはフィーリングです」
たなか兄［ｗｗｗ］
ちゃん天使［ふぃーりんぐてｗｗｗ］
田中さんとちゃん天使がめっちゃ笑ってる。
そのあと雑談を交えながら3曲歌い、あっという間にコラボ枠終了の時間となった。
ゆっち自身明るくて社交的だから、みんなともう仲良くなっている。
「というわけで、今日はリリーとのコラボ配信でした。明日からはまた普通に僕一人の枠になります」
タケSub［コラボのクライスもよかったよー。デュエット初めて聞いた。ゆっちもお疲れ様。歌うま！］
たなかかな？［私も、初めて聞いたけど、ゆっちも良かった！］
「ありがとうタケ、たなかかな？ そう言ってもらえてよかった。コラボ設定失敗したらどうしようかと……」
コラボの配信の仕方は知識として知っていただけで、実践したことはなかった。実はこの設定、ぶっつけ本番だ。
「あはは。ちゃんと繋げたからあたしが枠内にいるんじゃないですかー」
ゆっちのデビュー応援のためにしたコラボ配信だけど、フォロワーのみんなも楽しんでくれたならコラボした甲斐がある。
枠が終わってから、ゆっちにウェブ会議通信で聞いてみる。
「どうでしたか、ゆっち。初めてライバーとして配信してみて」
「すっごく、すっごく、すっごーーーーく、楽しかったです。はあ、まだ胸がドキドキいってる。ああ、告白関係なく、純粋にライバーするのもいいなあ。配信で歌うのって楽しいですね」
テンション高めなまま、熱烈に感想を語る。
ゆっちが配信沼に落ちた。
ＳＮＳのほうをみると、リリー可愛いね。ソロだとどんな歌手の歌唄うのかなって投稿がちらほら出ている。
その投稿をゆっちも読んだみたいで、リリーアバターがしまりない顔で笑っている。
「クライスさんみたいにプロフに歌える歌を書いておけば良いんですか？」
「そうだね。そうすればリスナーさんがリクエストしやすいから。あ、今日歌ったものに関しては僕の枠での話だから僕がスタリーに楽曲申請出しておくよ」
「ありがとうございます－！ 神！」
「いえいえ。僕、ゆっちがソロで配信するときは聴きに行くから。がんばってね」
「はい。近いうちにやってみます！ わからないところをまた聞くと思うんですけど、いいですか？」
「うん。僕で答えられることなら何でも聞いて」
ゆっちことリリーのデビュー配信は、大成功だった。
憧れの彼とお近づきになるチャンスになるといいね、と心の中で応援する。
僕は僕で、七夕にかなみさんとお祭に行くことになっている。
かなみさんが気兼ねなく外を歩ける日が来るよう、力になれるといいな。
ゆっちのアバターが入ったのを確認してからゆっちに確認する。
「ゆっち、大丈夫ですか？ 音声もちゃんと繋がっているかな」
「は、はい。大丈夫です。ううう、あたしがコラボすることで反対の声がでないか心配です……」
「みんな優しいから、そんなことにならないですよ。それに暴言の類いは弾かれるシステムになっているし、スラングを使って攻撃する人は僕がブロックで強制退室させるから」
スタリーでは配信者とリスナー間のトラブルを防止するため、特定のワードは入力できない使用になっている。
例えば死ねとか下手クソという暴言、電話番号などの個人情報にまつわる数字はコメント欄に打ち込むと【使えない単語です】とシステムメッセージが出て消去される。
そして他のリスナーに迷惑をかけるユーザーがいるなら、配信者の権限でブロック。枠から強制退室させる機能がある。
だからゆっちが心配するようなことはよほどのことがない限り起こらないのだけど、心配してしまう気持ちはわかる。
「まだ初日なんだから、噛んだり読み間違えたりもあると思う。僕もよく間違えていたでしょう。みんな最初は失敗するから、気楽にいこう」
「そうです、よね。はい。がんばります」
息を落ち着けて、配信スタートのボタンを押す。
かなみさん、田中さん、えびのしっぽに、ちゃん天使、タケ、ムーマ、他にもたくさん、フォロワーが入室してくる。
それにコラボ宣伝を見てきたのか、普段見かけないリスナーも次々に入ってくる。
それだけ期待値が高いのか。心臓がバクバクいっている。
「ごきげんよう、クライスです。みんな、来てくれてありがとう」
たなかかな？［ごきげんようクライス。初めて見るライバーさんだ！ 新人さん？］
タケSub［ごきげんよう！ まさかのメイドさん！］
えびのしっぽ［ごきげんようー。メイドさんかわいい］
みんなの反応は上々だ。
ゆっち＝リリーだと隠すつもりはないとゆっちが前もって言っているから、僕はみんなにそのように紹介する。
「この子が今日のコラボライバーです。いつも来てくれている人には、実はなじみある子なんだ。さあリリー。挨拶をどうぞ」
僕が促すと、ゆっちは深呼吸してお辞儀する。
「ごきげんよう！ 新人ライバーのリリーです。見ての通りメイドしてます。クライスさんの枠ではゆっち、って言ったらわかるかな。一念発起してライバーになることにしました。クライスさんのご厚意で、コラボさせてもらえることになりました。よろしくお願いします」
アルミ缶の上にあるミカン［まさかのゆっち！！ ライバーとしてはリリーか。良いね！］
たなか兄［ゆっちがライバーデビュー！？］
よかった。みんな歓迎ムードだ。僕もほっとする。
「そう、みんながよく知るゆっちだよ。僕もコラボは初めてだから、失敗するところもあるかもしれません。温かく見守っていただけたら幸いです。せっかくだから今日歌うのは二人以上のパートがある曲を厳選しているから、曲目はＳＮＳの固定投稿をご覧ください。それでは一曲目はシンデレラ。いきますよ、リリー！」
「はい、クライス先輩！」
まずはカラオケで何回もいれて練習した曲だ。王子と灰被りが出会うシーンを描いた歌で、とても人気が高い。
ちゃん天使［(o🪄'▽')o🪄(o🪄'▽')o🪄］
イヌ派［ｽﾞｲ (ง˘ω˘)วｽﾞｲｽﾞｲ (ง˘ω˘)วｽﾞｲ］
ちゃん天使［(o🪄'▽')o🪄(o🪄'▽')o🪄］
イヌ派［ｽﾞｲ (ง˘ω˘)วｽﾞｲ₍₍ (ง ´◔ ω◔` )ว ⁾⁾］
もちもち《初見》［はじめましてー］
タケSub［わー！ リリーもうまっ！］
タケSub［タケSubがギフト【拍手喝采】を贈りました］
たなかかな？［ないぎふー！］
たなかかな[•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•
ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊˚•*¨*•.¸¸* ੈ✩‧₊₊˚•*¨*•.¸¸˚]
「みんな、キラコメ弾幕ありがとう！ もちもち、ごきげんよう。来てくれてありがとう。今日はコラボ配信をしているよ。プロフィールとＳＮＳ固定に今日の曲目を載せているから確認してくださいね。あ、タケ、ギフトありがと！」
「わわわっ、ありがと！ ……ガラスの靴はー」
ゆっちは初めてだから、歌の合間にお礼を言おうとして、歌がつっかえた。
僕も初配信時はこんな感じだったな－。慣れると、コメントにお礼を返す配分がだんだん身についてくる。
間奏が長い曲なら、お礼や新規さんへの挨拶は間奏中に言う。
一曲目が終わって、雑談用のＢＧＭに切り替える。
たなかかな？［８８８８８８８８］
ムーマ［８８８８８８８］
アルミ缶の上にあるミカン［👏👏👏👏👏👏👏👏］
みんなから拍手コメントが届いて、リリーアバターがあわあわしている。
「ああああ、は、拍手ありがとう。あ、フォローも！？ うれしいな」
クライスの古参フォロワーは、ゆっちとも古いなじみだ。だからみんな続々とリリーのフォローもしていく。
「はー、クライスさん毎日配信をしているってすごいです。あたしいま、緊張しすぎて両手すっごく汗かいてベタベタなんですよ。ほら」
「リリー。僕らはアバターだから、汗、見えないですよ」
「こういうのはフィーリングです」
たなか兄［ｗｗｗ］
ちゃん天使［ふぃーりんぐてｗｗｗ］
田中さんとちゃん天使がめっちゃ笑ってる。
そのあと雑談を交えながら3曲歌い、あっという間にコラボ枠終了の時間となった。
ゆっち自身明るくて社交的だから、みんなともう仲良くなっている。
「というわけで、今日はリリーとのコラボ配信でした。明日からはまた普通に僕一人の枠になります」
タケSub［コラボのクライスもよかったよー。デュエット初めて聞いた。ゆっちもお疲れ様。歌うま！］
たなかかな？［私も、初めて聞いたけど、ゆっちも良かった！］
「ありがとうタケ、たなかかな？ そう言ってもらえてよかった。コラボ設定失敗したらどうしようかと……」
コラボの配信の仕方は知識として知っていただけで、実践したことはなかった。実はこの設定、ぶっつけ本番だ。
「あはは。ちゃんと繋げたからあたしが枠内にいるんじゃないですかー」
ゆっちのデビュー応援のためにしたコラボ配信だけど、フォロワーのみんなも楽しんでくれたならコラボした甲斐がある。
枠が終わってから、ゆっちにウェブ会議通信で聞いてみる。
「どうでしたか、ゆっち。初めてライバーとして配信してみて」
「すっごく、すっごく、すっごーーーーく、楽しかったです。はあ、まだ胸がドキドキいってる。ああ、告白関係なく、純粋にライバーするのもいいなあ。配信で歌うのって楽しいですね」
テンション高めなまま、熱烈に感想を語る。
ゆっちが配信沼に落ちた。
ＳＮＳのほうをみると、リリー可愛いね。ソロだとどんな歌手の歌唄うのかなって投稿がちらほら出ている。
その投稿をゆっちも読んだみたいで、リリーアバターがしまりない顔で笑っている。
「クライスさんみたいにプロフに歌える歌を書いておけば良いんですか？」
「そうだね。そうすればリスナーさんがリクエストしやすいから。あ、今日歌ったものに関しては僕の枠での話だから僕がスタリーに楽曲申請出しておくよ」
「ありがとうございます－！ 神！」
「いえいえ。僕、ゆっちがソロで配信するときは聴きに行くから。がんばってね」
「はい。近いうちにやってみます！ わからないところをまた聞くと思うんですけど、いいですか？」
「うん。僕で答えられることなら何でも聞いて」
ゆっちことリリーのデビュー配信は、大成功だった。
憧れの彼とお近づきになるチャンスになるといいね、と心の中で応援する。
僕は僕で、七夕にかなみさんとお祭に行くことになっている。
かなみさんが気兼ねなく外を歩ける日が来るよう、力になれるといいな。
