勇者は寝返ることにした ~新弟子舞うとはな酒ないと言われてやってらんねーので俺は魔族軍につく~

 俺はリューガさんにつれられて、魔族軍の竜人族部隊と面会することになった。

 断崖絶壁の洞穴で暮らす竜人たちなだけあって、会合場所もそんな洞穴のひとつ。
 きっとリューガさんと同じで誠実で家族想いな人たちだろうと思ってワックワクだった。

 だがしかーし!
 面会した途端、戦士の一人が叫んだ。

「簡単に仲間を裏切るやつなんて信用できるかーーーー!!」

 まさかの仲間入り拒否。
 青年は俺の隣にいるリューガさんに詰め寄る。

「伯父上!! 本当に勇者なんかを仲間にしたのか。先代勇者が爺さまを殺したのを忘れたとは言わせないぞ!」
「落ち着けアストモ。ルーザーは話が分かるやつだ。勇者であっても儂ら魔族側についていいと言ってくれたのだぞ」
「仲間になったふりをして寝首をかかれたらたまんねーよ!」

 あー、そうですよねー。そう思われても不思議じゃない。
 でも今更戻ってハラクローイのために戦えなんて言われても、指一本動かしたくないのよねー。

「アストモだったな。どうしたら信じてくれるんだ?」
「なら答えろ。なんで魔族側についた。何が目的だ。一度は忠誠を誓った王を、なぜそんなにあっさり裏切れるんだ。戦士としての誇りはないのか!」

 矢継ぎ早に聞かれ、俺は即座に答えた。

「むりやり勇者にされたあげく、しんでしまうとはなさけないって言われるからだ。あの国を守るなんてまっぴらご免」

 アストモの顔が凍り付いた。なんだそれは、と他の竜人さんたちもざわついている。

「なん、だと……。人類のために自ら立ち上がったわけではないのか?」
「いきなり呼び出されてこの剣を持たされて、「はい、勇者になったから魔王倒してこい。これしきのことで死ぬなんてなさけねーな」っていう展開。
 一方的にもっともらしい使命背負わされて迷惑してんだ。だから愛国心なんて0よ。
 あんたたち魔族の方が話が分かると思ったからこっちについたんだ」

『きゃー、ルーくんサイテー』

 ユーちゃん様は黙らっしゃい。
 せめて資金を出してくれるなら、まだ頑張ったかもしれないけど。1EN(ハラクローイの通貨)も出してくれないなんてクソですわ。
 資金0じゃ、うめー棒も買えやしない。

「皆の者。これでルーザーの事情はくんでもらえたな。これからは我らの仲間だ」
「ああ、伯父上。すまなかったルーザー。魔族の国を守るためにも、供に頑張ろう」

 友情が芽生え、がしっと交わされる#ruby=抱擁_ほうよう#]。

 メキメキミシイ!!!!

「ぐふっ」
「あぁ! ルーザーーーー!!!!」

 俺氏、三回目の死亡。
 死因:熱すぎる友情。


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