勇者は寝返ることにした ~新弟子舞うとはな酒ないと言われてやってらんねーので俺は魔族軍につく~
「さて、リューガ、いや、リューガさん。俺は魔族のために何をすればいい?」
「今日はもう遅いから、儂の家に帰ろう。明日、軍の仲間に紹介する。……そういえば貴君に名はあるのか? 勇者は称号であって名前ではなかろう」
そんなこと聞いてくれるなんて。俺は背筋を正して一礼する。
「ルーザーです。今後よろしくお願いします!」
「そうか、ルーザー。よろしく頼むぞ」
元敵なのにあっぱれな人格者。
こんないい人が雇い主で、遊んで暮らせるだけの金がもらえる上に高待遇。
俺、もしかしてもうすぐ死ぬのかな。
『ハハハ。すでに今日2回も死んでるのに、何言ってるっすかー』
「ユーちゃん様だまらっしゃい」
剣にツッコミを入れると、リューガさんは引いたりはせず、感心してうなった。
「ふむ。その剣はもしや言葉を解するのか?」
「あ、はい。めちゃめちゃノリが軽くて口が悪いけど」
「なんと言っているのか教えてはもらえぬか。ぜひとも、儂が生まれるよりも前の時代のことを聞いてみたい」
『あー、すまねっすリューちん。オラ、1000年のうち大半はハラグロ城の奥に安置されてたんで、950年分くらい見える景色は壁だけっす』
ごめんリューガさん。1000年の剣生に夢も希望もなかったわ。
それからリューガさんの転移魔法で、どこかの洞穴に飛んだ。
なんと、これが竜人族の家だそうだ。
天井がすごく高い。ほえー、と間抜けな声を出しちまって、それが洞穴内に反響する。
「我ら竜人族は人型と竜、二つの姿を持つゆえ。人の住むようなもろく小さな家には住めんのよ」
「そらそうだ」
10メルト(地球で言うなら1メルト=1m)はある体で人間の家に住めるわけがない。俺が幼女向けドールハウスに飛び込むようなものだろう。
「じいじ、おかえり! おなかすいた!」
洞穴の奥から、俺の腰くらいの背丈の幼女が飛び出してきた。
小さくてもちゃんと竜人だ。ぶとい尻尾が生えていて、背中にもちんまり羽がある。伸ばした両手は人の手でなく、竜のかぎ爪。
竜人幼女が俺を指差す。
「じいじ、これは食料か?」
可愛らしい声でオソロシイこと言わんでー。
見た目5歳になるかならないかでカニバリズムはいくない。
「ドラコよ。彼はルーザー。人間だ。これから儂ら魔族のために働いてくれる者だ。食べ物ではないぞ……すまんなルーザー。孫はあまりここから離れたことがないから、人間を見たことがないんだ」
「あ、気にしないんで大丈夫。人間でも竜人族でも子どもって自由奔放なんだなー」
俺もたぶんガキの頃こんな感じだったから、気にしない、気にしない。
「ぬー、じいじが食べたことがないだけで、うまいかもしれない。ドラコはこれを食べてみたい」
キラキラ曇りない瞳で見られてもね。食っていいよなんて言えるか!
「はじめまして、ドラコ。俺はルーザー。食べ物じゃない」
「そうか、負け犬 って名前なのか。ルーザーは人間の姿だけど犬なのか?」
幼女に負け犬って呼ばれるとクルわ。目からしょっぱい汁があふれてんだけど。
「犬なら飼っていいか? じいじ。人間って何を食べるんだ」
「ドラコ、ルーザーは仲間で、ペットではな……」
「ルーザーのエサは肉か? 肉だな」
話を聞かない子ね、ドラコ。嫌いじゃないよ。
俺は食べ物じゃないと一晩かけて説明することになった。
「今日はもう遅いから、儂の家に帰ろう。明日、軍の仲間に紹介する。……そういえば貴君に名はあるのか? 勇者は称号であって名前ではなかろう」
そんなこと聞いてくれるなんて。俺は背筋を正して一礼する。
「ルーザーです。今後よろしくお願いします!」
「そうか、ルーザー。よろしく頼むぞ」
元敵なのにあっぱれな人格者。
こんないい人が雇い主で、遊んで暮らせるだけの金がもらえる上に高待遇。
俺、もしかしてもうすぐ死ぬのかな。
『ハハハ。すでに今日2回も死んでるのに、何言ってるっすかー』
「ユーちゃん様だまらっしゃい」
剣にツッコミを入れると、リューガさんは引いたりはせず、感心してうなった。
「ふむ。その剣はもしや言葉を解するのか?」
「あ、はい。めちゃめちゃノリが軽くて口が悪いけど」
「なんと言っているのか教えてはもらえぬか。ぜひとも、儂が生まれるよりも前の時代のことを聞いてみたい」
『あー、すまねっすリューちん。オラ、1000年のうち大半はハラグロ城の奥に安置されてたんで、950年分くらい見える景色は壁だけっす』
ごめんリューガさん。1000年の剣生に夢も希望もなかったわ。
それからリューガさんの転移魔法で、どこかの洞穴に飛んだ。
なんと、これが竜人族の家だそうだ。
天井がすごく高い。ほえー、と間抜けな声を出しちまって、それが洞穴内に反響する。
「我ら竜人族は人型と竜、二つの姿を持つゆえ。人の住むようなもろく小さな家には住めんのよ」
「そらそうだ」
10メルト(地球で言うなら1メルト=1m)はある体で人間の家に住めるわけがない。俺が幼女向けドールハウスに飛び込むようなものだろう。
「じいじ、おかえり! おなかすいた!」
洞穴の奥から、俺の腰くらいの背丈の幼女が飛び出してきた。
小さくてもちゃんと竜人だ。ぶとい尻尾が生えていて、背中にもちんまり羽がある。伸ばした両手は人の手でなく、竜のかぎ爪。
竜人幼女が俺を指差す。
「じいじ、これは食料か?」
可愛らしい声でオソロシイこと言わんでー。
見た目5歳になるかならないかでカニバリズムはいくない。
「ドラコよ。彼はルーザー。人間だ。これから儂ら魔族のために働いてくれる者だ。食べ物ではないぞ……すまんなルーザー。孫はあまりここから離れたことがないから、人間を見たことがないんだ」
「あ、気にしないんで大丈夫。人間でも竜人族でも子どもって自由奔放なんだなー」
俺もたぶんガキの頃こんな感じだったから、気にしない、気にしない。
「ぬー、じいじが食べたことがないだけで、うまいかもしれない。ドラコはこれを食べてみたい」
キラキラ曇りない瞳で見られてもね。食っていいよなんて言えるか!
「はじめまして、ドラコ。俺はルーザー。食べ物じゃない」
「そうか、
幼女に負け犬って呼ばれるとクルわ。目からしょっぱい汁があふれてんだけど。
「犬なら飼っていいか? じいじ。人間って何を食べるんだ」
「ドラコ、ルーザーは仲間で、ペットではな……」
「ルーザーのエサは肉か? 肉だな」
話を聞かない子ね、ドラコ。嫌いじゃないよ。
俺は食べ物じゃないと一晩かけて説明することになった。