勇者は寝返ることにした ~新弟子舞うとはな酒ないと言われてやってらんねーので俺は魔族軍につく~

 悪の人間の国が滅終わってからあっという間に時が流れて、100年。

 俺、ルーザーはあのあと王がいなくなったハラクローイの新たな支配者になった。
 国名はハラクローイのままだとなんだから、オモシローイに変えてあげた。

 魔族の皆様とは不可侵条約を結んでいるから、今後魔物が人間を襲うことはないし、オモシローイの皆さんも魔物を絶対に狩ってはいけないという法律を作ってある。


 だから魔族も普通にオモシローイの城下町で暮らしている。
 世界から見ても唯一の魔族と人間が共存する国となった。

 人間同士がたまに町中で小競り合いすることはあれど、絶対的平和である。
 というわけで俺はオモシローイの初代国王にして現国王である。


 俺は普通に王様のつもりだけど、なぜか国民からは魔王ルーザーと呼ばれているんだ。


『魔王を全員殺すまで本当の意味で死ねない』のがユーちゃん様の主になったときにかかった魔法だから、俺に魔王を倒す意思がない以上はずっと魔法にかかったときの姿……若造のまんまなのだ。


 そんな王様生活をしていた起きて早々に、ドラコが俺の部屋の扉をぶっ飛ばしながら押し入ってきた。


「ルーザー。起きろ。最高に美味いメシができたぞ!」
「だからドラコ、いい加減ノックを覚えてくれ」
「してもしなくてもどのみち部屋に入るからいいじゃないか」

 悲しいかな。
 見た目は人間換算15歳くらいに成長したのに 中身は小さい頃のドラコのまんま。

 俺のことをペット? 犬? と思うのはやめてくれたが謎クッキングは今も続いている。

 日に1回は死ぬからやめてくんないかな。
 食堂に向かう途中、チビドラゴンが2匹城の中を駆け抜けていく。

 この子達はアストモの子どもである。

「ルーザーだ。おはよ!」
「ルーザー! はよ!」
「おー。今日も元気だなお前ら」

 朝食のあとこっそり町に下りる。

 配下を持つ王様になったあとでも、俺は昔とそう変わらない服装で城下を歩いている。

「どうだユーちゃん様。今日はどこに行く?」
『そっすねー。北方の国に遊びに行ってみようっす。誰かの背に乗っけてもらうかワープで』
「いいねぇ」

 ユーちゃん様は1000年退屈な生活をしていた分、世界中見てみたいと言うから、俺もそれに付き合っている。
 手から離れない一心同体だし。

『わかってるじゃないっすかルーくん☆』

 ハラクローイを滅ぼしたあとに、普通のワープ魔法も覚えたから、魔法で北の国にひとっ飛び。

 世界は広いから、100年じゃまだまだ一部しか見れていない。
 1000年かければいけるか。
 あちこち行ってみるか。なぁ、ユーちゃん様。



END


 
image
18/18ページ