勇者は寝返ることにした ~新弟子舞うとはな酒ないと言われてやってらんねーので俺は魔族軍につく~

 さてさて。
 ハラクローイから撤収した俺は、竜人族の王様と会えることになった。
 カス王はどの王様を指して魔王って言ってるんだろうな。
 リューガさんいわく、魔族は種族ごとに束ねる王様や長がいる。
 人間の国だって国ごとに王様がいるからな。

『オラが覚えている限り、それぞれの種族の王様、前回は9人だったかな。そのひとたち全員殺せば任務完了っす☆』
「それってただの虐殺じゃね?」

 これまでの勇者、メンタル大丈夫?
 あらゆる生命体と会話できるようになっているから、殺すときスゲー精神に来そうだけど。

『スライム父とウサギをためらいなく殺ったルーくんがそれを言うっすかー』

 ユーちゃん様はダマらっしゃい。
 リューガさんとアストモに連れられて、竜人族の集会場にやってきた。

 広い岩場には、とてつもなくでっかいドラゴンがいた。
 30メルトを軽く超えてるぜ。

 俺と話をするため、わざわざ人型になってくれた。
 それでも2メルトはある長身のおじい様だ。

「そなたが当代勇者のルーザーか。話はリューガから聞いておる。儂は竜人族を束ねる当代の王。そなたの策のおかげでハラクローイの重役たちに多大なるダメージを与えることができたそうだな」
「ねぎらいの言葉、痛み入ります」
「話し合いができる勇者が現れてくれて嬉しいぞ」

 これだよこれ。王様ってこういう人格者でないとねー。仕えたいと思える相手って大事。
 リューガさんとアストモがするように両膝をついてお辞儀する。
 竜人族の最上の挨拶ってこうなんだな。

『ルーくんてば、カス王と話してるときと別人じゃない』
「俺は誠実な人には本物の誠意を返す男だぜ」

 ただしクズには相応の態度を返す。
 だって俺、自分が一番可愛い人間だもの。
 ヨキ王様は深く頷いて、話を続ける。

「して、これからのことなのだが。薬草の類いはそなたが全て買い取って、ハラクローイ王都には在庫がない、だったな」
「はい。王都で買える分は根こそぎ買い占めて、魔族のみなさんの渡しました。だから、薬の材料を採取するためヘイワナあたりの山に入るでしょう」

 町にないなら1から材料を採取して作るしかないよね。
 冒険者ギルドに大量の薬草採取依頼が殺到してそうだ。
 あの王や貴族たちなら自分たちの怪我を治すためにそうさせるはず。


 でも一度にたくさん取ったら枯れるよな。
 野山に生えている薬草って、多年草とはいえ1日2日で葉が再生するわけじゃないから。
 おバカさんよねー。

「次の行動がわかっているなら、先回りしてしまえばいいな。何組か追い返せば、兵士団が出向かざるを得なくなる。きっとカーマも出てくる。仇を討つ絶好の機会だ」

 リューガさんの目が輝く。
 我が子を殺されたのだから、当然だよな。

 俺もできることをやっていこう。


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ルーザー「ゴッキーの出没ポイントに毒餌をまいとくみたいな戦法」
ユーちゃん様『言い方』
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