ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
村の男で集まり、森を迂回して海に向かう。
今日は異界から流れ着くオーパーツの収集、日によって食料にするモンスターを狩る。これが村のサイクルだという。
空のリュックを背負った村長が歩きながら教えてくれる。村長の図体はプロレスラー並みだから、背中のリュックがミニチュアのおもちゃのように見える。
「数日前にキムランが流れ着いたってことハ、オーパーツが見つかる可能性が高い。人だけでなく物も流れてくる。武器とか、なんかしらんアイテムとかナ」
「何か知らんアイテム……」
「使い方は知らなくても、異界研究者には高く売れるのサ。キムランが使い道を知っているものがあるなら言ってくれ。査定額が上がる」
「わかった」
戦闘面では役に立たない分、知識面でカバーしよう。途中何度か小さいモンスターが出たが、村長が振り下ろしたナタで真っ二つだった。見た目以上にパワフルなお人だ。
海辺について、二人一組で散開する。
「二時間したらいったんここに集まってメシにするぞ!」
オレはナルシェと一緒に、そこらに散っているものを見て回る。この世界に流れ着いた初日は景色を楽しむ余裕なんかなかったな。
水平線はカクテルを思わすオレンジ色。飲んだらお酒みたいな味がするんだろうか。
一歩後ろを遅れてついてくるナルシェは、なんだか足取りが重い。
「ナルシェ、具合が悪いのか? 顔色がよくない」
「ああ、ええ。今日の朝食は姉さんが作ったから…………うう、思い出しちゃった」
顔色は青を通り越して白くなっていて、口をおさえている。
「キムランさんも昨日見たでしょう、姉さんの料理。この村の若い男どもは姉さんに気に入られたくて、あの料理をもてはやすんです。だから姉さん、“みんな美味しいって言ってくれるから大丈夫”って変な自信持っちゃって……」
「うわぁ…………。お察しするよ」
毎日あんなの作られたらたまったもんじゃないよな。一回見ただけでもヤバイって思ったもん。
巨大な生物の角とか、水晶玉ぽいものが落ちている。ゲームみたいなシステムメッセージやテロップが出てこないのが惜しい。
ないものは作る、それがユーチューバーってものだよな!
「キムランは魔法の水晶を手に入れた! テレレテテッテッテー!」
水晶玉を手に取って太陽にかざし、声に出す。うむ、マジで魔法を込めた宝石のようだ。水晶玉の中心が不思議な青い色に光っている。
「キムランさん、どこに向かって喋ってるんです?」
ナルシェが引き気味だ。水晶玉を布袋に収めてごまかし笑いしとく。
「悪い悪い。つい職業病で」
「職業病? 村に来るまで何をなさっていたんです?」
「うう〜ん、商品の面白さや良さを検証してみんなに紹介する仕事? この世界だとなんていうんだろ」
「要は良質なものを見極めて仕入れて販売する仕事ですか」
「あー、うん、そういうことにしとこう。オレはバイヤー」
この世界にパソコンもインターネットもない以上、ユーチューバーを説明する手段はない。話術を駆使するのには変わりないから、バイヤーってことで。
昼はミミが渡してくれた“やさいまきまきお弁当バージョン”を食べて、英気を養う。
野菜や肉がこぼれ落ちないよう、信州お焼きのように皮で包んで焼いてあるのだ。肉汁が閉じ込められていて実にうまい。
隣に座るナルシェは、震える手で真っ黒に焦げたパンらしきもの(たぶんパン。きっとパン)を食べていた。
休憩のあとは、また二時間ほどオーパーツ探しをする。
なんとかのアトリエだったか、素材を収集して合成錬金するゲームがあったけど、実際落ちものを集めるの楽しいな。
使い道幅が不明なものがゴロゴロ出てくる。
「キムランさん、そろそろ集合時間ですよ」
「お〜。これだけチェックしたら行こうか」
砂に半分埋まっていたびん詰めを袋に収める。
よいしょっと、うん、結構たくさん集めたから重いな。
「大丈夫ですか、キムランさん」
「大丈夫大丈夫。ナルシェはあんま具合よくないんだからオレに任せとけ」
みんなも上々の収穫だったみたいで、笑顔で荷物を担いでいる。
一人の青年は蕩けそうな表情でガラス玉を磨いている。
「見てみろよこれ。宝石を見つけたんだ! 俺、これをオリビアさんに渡してプロポーズするんだ」
「なんだと! 抜け駆けは許さないぞ! オリビアさんにプロポーズするのは僕が先だ!」
使い道を知らない拾い物をプロポーズに使うのってどうなんだろうな。心の中でツッコむ。
ちらりとナルシェに目をやると、死んだ魚の目をして口元を引きつらせている。
「早死にしたいならいいんじゃないかな。正直、結婚できたとしてあの料理に何日も耐えられると思えないけど」
がんばれナルシェ。オレは陰ながら応援しているぞ! ウマメシなミミのもとにいるから、交代する気はさらさらないけど。
今日は異界から流れ着くオーパーツの収集、日によって食料にするモンスターを狩る。これが村のサイクルだという。
空のリュックを背負った村長が歩きながら教えてくれる。村長の図体はプロレスラー並みだから、背中のリュックがミニチュアのおもちゃのように見える。
「数日前にキムランが流れ着いたってことハ、オーパーツが見つかる可能性が高い。人だけでなく物も流れてくる。武器とか、なんかしらんアイテムとかナ」
「何か知らんアイテム……」
「使い方は知らなくても、異界研究者には高く売れるのサ。キムランが使い道を知っているものがあるなら言ってくれ。査定額が上がる」
「わかった」
戦闘面では役に立たない分、知識面でカバーしよう。途中何度か小さいモンスターが出たが、村長が振り下ろしたナタで真っ二つだった。見た目以上にパワフルなお人だ。
海辺について、二人一組で散開する。
「二時間したらいったんここに集まってメシにするぞ!」
オレはナルシェと一緒に、そこらに散っているものを見て回る。この世界に流れ着いた初日は景色を楽しむ余裕なんかなかったな。
水平線はカクテルを思わすオレンジ色。飲んだらお酒みたいな味がするんだろうか。
一歩後ろを遅れてついてくるナルシェは、なんだか足取りが重い。
「ナルシェ、具合が悪いのか? 顔色がよくない」
「ああ、ええ。今日の朝食は姉さんが作ったから…………うう、思い出しちゃった」
顔色は青を通り越して白くなっていて、口をおさえている。
「キムランさんも昨日見たでしょう、姉さんの料理。この村の若い男どもは姉さんに気に入られたくて、あの料理をもてはやすんです。だから姉さん、“みんな美味しいって言ってくれるから大丈夫”って変な自信持っちゃって……」
「うわぁ…………。お察しするよ」
毎日あんなの作られたらたまったもんじゃないよな。一回見ただけでもヤバイって思ったもん。
巨大な生物の角とか、水晶玉ぽいものが落ちている。ゲームみたいなシステムメッセージやテロップが出てこないのが惜しい。
ないものは作る、それがユーチューバーってものだよな!
「キムランは魔法の水晶を手に入れた! テレレテテッテッテー!」
水晶玉を手に取って太陽にかざし、声に出す。うむ、マジで魔法を込めた宝石のようだ。水晶玉の中心が不思議な青い色に光っている。
「キムランさん、どこに向かって喋ってるんです?」
ナルシェが引き気味だ。水晶玉を布袋に収めてごまかし笑いしとく。
「悪い悪い。つい職業病で」
「職業病? 村に来るまで何をなさっていたんです?」
「うう〜ん、商品の面白さや良さを検証してみんなに紹介する仕事? この世界だとなんていうんだろ」
「要は良質なものを見極めて仕入れて販売する仕事ですか」
「あー、うん、そういうことにしとこう。オレはバイヤー」
この世界にパソコンもインターネットもない以上、ユーチューバーを説明する手段はない。話術を駆使するのには変わりないから、バイヤーってことで。
昼はミミが渡してくれた“やさいまきまきお弁当バージョン”を食べて、英気を養う。
野菜や肉がこぼれ落ちないよう、信州お焼きのように皮で包んで焼いてあるのだ。肉汁が閉じ込められていて実にうまい。
隣に座るナルシェは、震える手で真っ黒に焦げたパンらしきもの(たぶんパン。きっとパン)を食べていた。
休憩のあとは、また二時間ほどオーパーツ探しをする。
なんとかのアトリエだったか、素材を収集して合成錬金するゲームがあったけど、実際落ちものを集めるの楽しいな。
使い道幅が不明なものがゴロゴロ出てくる。
「キムランさん、そろそろ集合時間ですよ」
「お〜。これだけチェックしたら行こうか」
砂に半分埋まっていたびん詰めを袋に収める。
よいしょっと、うん、結構たくさん集めたから重いな。
「大丈夫ですか、キムランさん」
「大丈夫大丈夫。ナルシェはあんま具合よくないんだからオレに任せとけ」
みんなも上々の収穫だったみたいで、笑顔で荷物を担いでいる。
一人の青年は蕩けそうな表情でガラス玉を磨いている。
「見てみろよこれ。宝石を見つけたんだ! 俺、これをオリビアさんに渡してプロポーズするんだ」
「なんだと! 抜け駆けは許さないぞ! オリビアさんにプロポーズするのは僕が先だ!」
使い道を知らない拾い物をプロポーズに使うのってどうなんだろうな。心の中でツッコむ。
ちらりとナルシェに目をやると、死んだ魚の目をして口元を引きつらせている。
「早死にしたいならいいんじゃないかな。正直、結婚できたとしてあの料理に何日も耐えられると思えないけど」
がんばれナルシェ。オレは陰ながら応援しているぞ! ウマメシなミミのもとにいるから、交代する気はさらさらないけど。