ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
オレは咳払いして、カズタカさんに確認する。
「カズタカさんが指摘されている一つは、“作るだけで終わるのでは意味がない”ということですよね」
「まあ、そうだな」
「オレたちがこのジョウロを作る目的は、生活を便利にすることだけでは終わりません。サイハテでしか買えないご当地名産品として無限ジョウロ広め、人を呼ぶこと。村から町へと発展させるのが目標です」
「ほう? それは大きく出たな」
カズタカさんは机に両肘をつき、組んだ手に顎を乗せる。
「サイハテ村が過疎化しているのは、ジョウロを開発するだけでどうにかなる問題なのか?」
「もちろんこれだけでは解決しません。オレたち村人の努力も必要です。ジョウロはあくまでも起爆剤。発展計画の第一段階です」
「まだその後にも何かをするのか」
オレは強く頷く。プレゼンの基本は、己の出した案に自信を持つこと。これ大事。
「もちろんです。ジョウロが人気になったら他のものも作ります。|風呂屋《テルマエ》。この近くの町で、地球からきたナガレビトが水魔法具を応用した風呂付きの宿を営んでいるんです。彼の協力をあおぎ、2号店を村に作ってもらう」
「風呂というのは?」
コトリさんが知らなかったから、やはりというかカズタカさんも風呂を知らなかった。
シノミヤのご先祖様は、風呂文化を伝えられたかったのかもしれない。流されてきたばかりの頃はきっと魔法を持たないただの人。貴族ではなかったのだから。
「フロはおっきいおけにオユがはいってる。つかるとあったかい。ぽかぽか、けんこうにいい」
ミミが雑すぎる説明で補足してくれる。
カズタカさん、わかったようなわからないような微妙な顔で首をかしげている。
「まあ今回の目的は風呂ではないので一旦横に置いといて。ミミ、ジョウロを」
「おー、ここにあるぞ」
ミミがリュックからジョウロを取り出す。
「すみませんカズタカさん。ちょっと外に出ませんか? ここで水を撒く実演をするわけにはいかないので。それと、実演が終わったら返却しますので水魔法具の小さいものを一つだけ貸していただきたい」
「あ、ああ」
戸惑いながらも、こぶし大の石を貸してくれた。
庭園には花が植わっていて、等間隔に、スプリンクラーの役目を持つのであろう魔法具が設置されている。
「カズタカ、みてろ。ジョーロはすごい」
ミミが魔法具を組み込んだジョウロを自信満々に傾ける。細かに花に注ぐ水。魔法具から供給されるため、井戸まで汲みにいかなくても延々と出る。
調子づいたミミがジョウロを振り回し、太陽の光が当たって虹が発生した。
パチパチと拍手をして、カズタカさんは言う。
「なるほどな。鉄製のジョウロは多く出回っているが、使うたびに水気を取らないと錆びるという欠点があった。それに、その木は腐りにくことで有名な素材だな。筒にはサイハテでしか採れないカラカラ木の枝。確かにサイハテ限定品としての価値は高いだろう」
さすが貴族の家長をしている人。観察眼がすごい。この少しの間見ただけで素材を見抜いた。かなり乗り気になってくれていると踏み、ユーイさんが価格表を提示する。
「基本価格は4000リルの予定です。そのうち1000リルが貴方の利益。それ以外の内訳は森に材料を採りにいく手間賃、制作にかかる人件費となっています。いかがでしょう」
「鉄のジョウロが平均5000リルで取引されているから、それを考えると安すぎるくらいだな。消耗品でないから、一度買えば長く持つ」
「ジョウロは大きなものではないので、提供していただく水魔法具は先程お借りしたものの半分以下のサイズで構いません」
「これより小さい魔法具なんて、貴族にとっては1リルの価値もないゴミだが。本当にそんなものに金を払う人間がいるのか?」
「貴族には不要でも、庶民には欠片でも宝です」
ユーイさんの押しもあり、カズタカさんはついに折れた。
「…………いいだろう。そこまで言うなら契約してやる。3ヶ月以内に成果を上げられなかったら契約を打ち切るから覚悟しておけ」
「ありがとうございます!」
みんなで揃って頭を下げる。
村の発展計画の第一歩だ。
オレはミミとナルシェ、ユーイさんと手を取り合って喜びを分かち合う。ノリについてこれなくてオロオロしているコトリさんに、ユーイさんが手を差し伸べる。
「ほら、コトリも喜びなさいよ。やったーー!」
「うう、わかった、わかったから引っ張らないでくれ」
コトリさんも加わりみんなでバンザイ!
今夜は泊まっていいと言ってもらえたので一晩だけお世話になることとなった。
明日からは村に帰る旅路。楽しみだな。
「カズタカさんが指摘されている一つは、“作るだけで終わるのでは意味がない”ということですよね」
「まあ、そうだな」
「オレたちがこのジョウロを作る目的は、生活を便利にすることだけでは終わりません。サイハテでしか買えないご当地名産品として無限ジョウロ広め、人を呼ぶこと。村から町へと発展させるのが目標です」
「ほう? それは大きく出たな」
カズタカさんは机に両肘をつき、組んだ手に顎を乗せる。
「サイハテ村が過疎化しているのは、ジョウロを開発するだけでどうにかなる問題なのか?」
「もちろんこれだけでは解決しません。オレたち村人の努力も必要です。ジョウロはあくまでも起爆剤。発展計画の第一段階です」
「まだその後にも何かをするのか」
オレは強く頷く。プレゼンの基本は、己の出した案に自信を持つこと。これ大事。
「もちろんです。ジョウロが人気になったら他のものも作ります。|風呂屋《テルマエ》。この近くの町で、地球からきたナガレビトが水魔法具を応用した風呂付きの宿を営んでいるんです。彼の協力をあおぎ、2号店を村に作ってもらう」
「風呂というのは?」
コトリさんが知らなかったから、やはりというかカズタカさんも風呂を知らなかった。
シノミヤのご先祖様は、風呂文化を伝えられたかったのかもしれない。流されてきたばかりの頃はきっと魔法を持たないただの人。貴族ではなかったのだから。
「フロはおっきいおけにオユがはいってる。つかるとあったかい。ぽかぽか、けんこうにいい」
ミミが雑すぎる説明で補足してくれる。
カズタカさん、わかったようなわからないような微妙な顔で首をかしげている。
「まあ今回の目的は風呂ではないので一旦横に置いといて。ミミ、ジョウロを」
「おー、ここにあるぞ」
ミミがリュックからジョウロを取り出す。
「すみませんカズタカさん。ちょっと外に出ませんか? ここで水を撒く実演をするわけにはいかないので。それと、実演が終わったら返却しますので水魔法具の小さいものを一つだけ貸していただきたい」
「あ、ああ」
戸惑いながらも、こぶし大の石を貸してくれた。
庭園には花が植わっていて、等間隔に、スプリンクラーの役目を持つのであろう魔法具が設置されている。
「カズタカ、みてろ。ジョーロはすごい」
ミミが魔法具を組み込んだジョウロを自信満々に傾ける。細かに花に注ぐ水。魔法具から供給されるため、井戸まで汲みにいかなくても延々と出る。
調子づいたミミがジョウロを振り回し、太陽の光が当たって虹が発生した。
パチパチと拍手をして、カズタカさんは言う。
「なるほどな。鉄製のジョウロは多く出回っているが、使うたびに水気を取らないと錆びるという欠点があった。それに、その木は腐りにくことで有名な素材だな。筒にはサイハテでしか採れないカラカラ木の枝。確かにサイハテ限定品としての価値は高いだろう」
さすが貴族の家長をしている人。観察眼がすごい。この少しの間見ただけで素材を見抜いた。かなり乗り気になってくれていると踏み、ユーイさんが価格表を提示する。
「基本価格は4000リルの予定です。そのうち1000リルが貴方の利益。それ以外の内訳は森に材料を採りにいく手間賃、制作にかかる人件費となっています。いかがでしょう」
「鉄のジョウロが平均5000リルで取引されているから、それを考えると安すぎるくらいだな。消耗品でないから、一度買えば長く持つ」
「ジョウロは大きなものではないので、提供していただく水魔法具は先程お借りしたものの半分以下のサイズで構いません」
「これより小さい魔法具なんて、貴族にとっては1リルの価値もないゴミだが。本当にそんなものに金を払う人間がいるのか?」
「貴族には不要でも、庶民には欠片でも宝です」
ユーイさんの押しもあり、カズタカさんはついに折れた。
「…………いいだろう。そこまで言うなら契約してやる。3ヶ月以内に成果を上げられなかったら契約を打ち切るから覚悟しておけ」
「ありがとうございます!」
みんなで揃って頭を下げる。
村の発展計画の第一歩だ。
オレはミミとナルシェ、ユーイさんと手を取り合って喜びを分かち合う。ノリについてこれなくてオロオロしているコトリさんに、ユーイさんが手を差し伸べる。
「ほら、コトリも喜びなさいよ。やったーー!」
「うう、わかった、わかったから引っ張らないでくれ」
コトリさんも加わりみんなでバンザイ!
今夜は泊まっていいと言ってもらえたので一晩だけお世話になることとなった。
明日からは村に帰る旅路。楽しみだな。