ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜

「ぐおああああああっ! 死いぬうううううっ!」

 やぁ、キムランだよ! キムランチャンネル視聴者のみんな見てるー?
 オレは今、腹痛と戦っているところだ。
 いやーまいったね。生水はキケンってなんで忘れてたんだオレ。
 ゴロゴロとなりやまぬ腹、ケツから絶え間なく吹き出す汚物。吐きすぎて口の中が胃液で酸っぱい。

「ぐ、くあああ、薬、もしくは薬草、薬草ぅぅ!」

 ゲームでよくある調合スキルでもあれば、こういうとき都合よく拾った薬草で薬を作れるのに。転移するならあの何してもスキルレベルが上がるスローライフなファンタジーゲームの世界が良かったです、カミサマ。
 まじいってぇ。
 手近な葉っぱをむしってケツを拭う。
 昨日から何も食べてないのに、出るもんはもりもり出る。

 これって宿便排出ってやつかな! そんなつもり無かったのにダイエットになってんじゃん。
 チャンネル視聴者には絶対勧められないけども。

 鑑定スキルがあれば、目の前の草に解毒効果があるとか、麻痺を解除できるとか薬効がわかるのに。

 吐いて吐いて下からも出したせいで、めちゃくちゃ腹が減った。

 へろへろになりながらもひたすら歩く。
 このままじゃのたれ死ぬ。
 せっかく異世界に来たのに第一異世界人に遭遇することなく召されるなんて嫌だ。

 頭が熱いのに悪寒はひどい。意識が飛びそうになりながら歩き続けて、ついに視界が広がった。
 森の外、平野の向こうに見えるのは人工的な建物のシルエットと、煙突から昇る煙。

「家だ、きっとあそこに人がいる。うおおおおお」

 残った力を総動員して、その集落目指して足を動かす。
 あと少しで建物につく……というところで、足がもつれて倒れ込む。
 近くに小さな人影がちらりと見えた。
 5歳くらいの女の子だ。黄緑色の髪……さすが異世界だわー。
 女の子と視線が合った。
 と思ったら…………。

「っーーーーー!!」

 声にならない声を上げて、一目散に走り去った。

「え、えええ、待ってくれよーー!」

 もう歩く力も残ってないオレは、追うことができない。1分もしないうちに、女の子がゴリラみたいないかついオッサンを連れて戻ってきた。
 オッサンは黒いなにかをオレに投げてきて、視界が柔らかい黒で覆われる。

「これを着ろ。話はそれからダ」

 オッサンの言葉がわかる。
 方言の訛りとはまた違う、微妙なイントネーション。だけど、聞こえたのは確かに日本語だった。
 頭に乗っかっている布を広げてみると、服だった。
 武闘チャンネルで見たクンフーの道着みたいな、異国情緒あふれる服。
 下着はないけど、素っ裸のままよりはずっといい。
 ありがたく道着に袖を通す。
 それからオッサンに担ぎ上げられ、小さい家に連れ込まれた。



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