ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
雨音で目が覚めた。屋根を叩き地面に落ちる雨特有の音。布団をかぶったまま窓を見ていると、ミミが背中に飛び乗ってきた。
「キムランおきて」
「おきた。めっちゃ目ぇ覚めたからおりてくれ。今日は雨なんだな」
「うん、あめだ」
日本と違うことがたくさん起こる世界だけど、雨が降るのは同じらしい。起きて窓から手を伸ばしてみる。この世界も雨は冷たい。
「雨の日は畑の水やりはしなくていいとして、仕事ってどうなるんだ? 傘さしてオーパーツ収拾やモンスター狩るのか?」
「あめがふったら、かりはおやすみ。ドロシーばあちゃんのとこでべんきょ」
「勉強?」
「ドロシーばあちゃん、このむらのせんせい。くにのこととか、もじをおしえてくれる」
嵐でオズの国に飛ばされそうな名前だな。と思ったがミミに言ってもわかるはずがない。
「オレも行っていいかな。この世界の文字教わりたい」
「わたしはきめられない。せんせにきいて」
「おー!」
レクサスの皮で作られた雨よけのマントを頭からすっぽりかぶって、ドロシーばあちゃんの家に向かう。
ミミはレインブーツで水たまりを踏んで楽しそうにスキップしている。
手を繋いでドロシーばあちゃんの家に行くと、近所の子どもたちがすでに来ていた。
教室になっている部屋にはミミ含めて全員で5人。
ミミが一番年下で、上は12才くらいの子までいる。
デカイ長机、机を挟んで両側に丸太の椅子。
「おやおや、ミミ。よくきたね。今日はキムランも一緒かね」
「おはようございます。オレも一緒に勉強していいかな。ここの字を習ってなくて」
「かまわんよ。五人も六人もさして変わらん」
「ありがとうございます」
ナルシェもいたからその隣に、ミミと二人で着席する。
「キムランさんも勉強するんですか?」
「ああ。習っておけばいつか絶対役立つだろうからな」
オレはこの世界の言葉を喋れないし言語翻訳のスキルがないから、村の外の人間と言葉が通じない。だが、文字を覚えれば筆談が可能になる。
検証と学習はオレの十八番だ。
「キムランにはまず、自分の名前を書けるようになってもらおうかねぇ」
「はい! よろしくお願いします!」
ドロシーばあちゃんは壁掛けの大きな板に細長い石で文字を書いていく。
オレのいた世界で言うところの、黒板とチョークの役割を果たすものだな。
ひらがなでもなく、漢字でもローマ字でもない。オレが見たことのあるどこの文字とも系統が違って、面白いな。
オレも子どもたちが使っているノートサイズの板を借りて、文字の練習をする。
「よしできた! 上手いか?」
「まあまあ」
「わー、ミミ辛辣。キムラン泣いちゃうよ?」
異世界で文字を習って自分の名前を書くユーチューバーなんて、オレが史上初じゃないか。
いや、たまに異界からこの世界に流されてくる人がいるってんだから、初めてでもないのか。2番目、3番目?
まあ初にしろそうでないにしろ、楽しいからOK!
「おれの名前はこう書くんだぜ!」
「アタシはこう!」
「おお〜、すげーな! じゃあ雨ってどう書くんだ。教えてくれよ」
「こうだぞ、そう!」
他の子たちが、名前を書いた板を自慢気に見せびらかしてくる。賑やかで和やかで、小学校に戻ったかのように錯覚してしまう。
「騒ぐんじゃないよお前たち」
「「「はーい!」」」
ドロシーばあちゃんに怒られながらも、充実した授業が終わった。使った板はそれぞれが掃除して返却する。
濡れ布巾で拭くと、文字がきれいサッパリ消えて元の板に戻る。ミラクルだ。魔法のチョーク(ぽい石)すごい。
外に出ると雨が小康状態になっていた。雲間から光がさしている。家に入る前に、畑の様子を見てみる。
「キムラン、みろ! めがでた」
「マジ!? やったーーー! いつ食えるようになる?」
「にじゅうにちくらい。このやさい、そだつのはやい」
オレがナルシェに教わりながら耕した畑、ついに芽が出ていた。なんの野菜かわからないけど、いくつか緑の葉っぱが土の中からこんにちは。
ふっふっふ。初めてでここまでできたオレ、農家の才能あるんじゃないか?
何はともあれ異世界でまいた初の野菜、収穫が楽しみだ。
ツバメ
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「キムランおきて」
「おきた。めっちゃ目ぇ覚めたからおりてくれ。今日は雨なんだな」
「うん、あめだ」
日本と違うことがたくさん起こる世界だけど、雨が降るのは同じらしい。起きて窓から手を伸ばしてみる。この世界も雨は冷たい。
「雨の日は畑の水やりはしなくていいとして、仕事ってどうなるんだ? 傘さしてオーパーツ収拾やモンスター狩るのか?」
「あめがふったら、かりはおやすみ。ドロシーばあちゃんのとこでべんきょ」
「勉強?」
「ドロシーばあちゃん、このむらのせんせい。くにのこととか、もじをおしえてくれる」
嵐でオズの国に飛ばされそうな名前だな。と思ったがミミに言ってもわかるはずがない。
「オレも行っていいかな。この世界の文字教わりたい」
「わたしはきめられない。せんせにきいて」
「おー!」
レクサスの皮で作られた雨よけのマントを頭からすっぽりかぶって、ドロシーばあちゃんの家に向かう。
ミミはレインブーツで水たまりを踏んで楽しそうにスキップしている。
手を繋いでドロシーばあちゃんの家に行くと、近所の子どもたちがすでに来ていた。
教室になっている部屋にはミミ含めて全員で5人。
ミミが一番年下で、上は12才くらいの子までいる。
デカイ長机、机を挟んで両側に丸太の椅子。
「おやおや、ミミ。よくきたね。今日はキムランも一緒かね」
「おはようございます。オレも一緒に勉強していいかな。ここの字を習ってなくて」
「かまわんよ。五人も六人もさして変わらん」
「ありがとうございます」
ナルシェもいたからその隣に、ミミと二人で着席する。
「キムランさんも勉強するんですか?」
「ああ。習っておけばいつか絶対役立つだろうからな」
オレはこの世界の言葉を喋れないし言語翻訳のスキルがないから、村の外の人間と言葉が通じない。だが、文字を覚えれば筆談が可能になる。
検証と学習はオレの十八番だ。
「キムランにはまず、自分の名前を書けるようになってもらおうかねぇ」
「はい! よろしくお願いします!」
ドロシーばあちゃんは壁掛けの大きな板に細長い石で文字を書いていく。
オレのいた世界で言うところの、黒板とチョークの役割を果たすものだな。
ひらがなでもなく、漢字でもローマ字でもない。オレが見たことのあるどこの文字とも系統が違って、面白いな。
オレも子どもたちが使っているノートサイズの板を借りて、文字の練習をする。
「よしできた! 上手いか?」
「まあまあ」
「わー、ミミ辛辣。キムラン泣いちゃうよ?」
異世界で文字を習って自分の名前を書くユーチューバーなんて、オレが史上初じゃないか。
いや、たまに異界からこの世界に流されてくる人がいるってんだから、初めてでもないのか。2番目、3番目?
まあ初にしろそうでないにしろ、楽しいからOK!
「おれの名前はこう書くんだぜ!」
「アタシはこう!」
「おお〜、すげーな! じゃあ雨ってどう書くんだ。教えてくれよ」
「こうだぞ、そう!」
他の子たちが、名前を書いた板を自慢気に見せびらかしてくる。賑やかで和やかで、小学校に戻ったかのように錯覚してしまう。
「騒ぐんじゃないよお前たち」
「「「はーい!」」」
ドロシーばあちゃんに怒られながらも、充実した授業が終わった。使った板はそれぞれが掃除して返却する。
濡れ布巾で拭くと、文字がきれいサッパリ消えて元の板に戻る。ミラクルだ。魔法のチョーク(ぽい石)すごい。
外に出ると雨が小康状態になっていた。雲間から光がさしている。家に入る前に、畑の様子を見てみる。
「キムラン、みろ! めがでた」
「マジ!? やったーーー! いつ食えるようになる?」
「にじゅうにちくらい。このやさい、そだつのはやい」
オレがナルシェに教わりながら耕した畑、ついに芽が出ていた。なんの野菜かわからないけど、いくつか緑の葉っぱが土の中からこんにちは。
ふっふっふ。初めてでここまでできたオレ、農家の才能あるんじゃないか?
何はともあれ異世界でまいた初の野菜、収穫が楽しみだ。
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