ユーメシ! 〜ゲーム実況ユーチューバーの異世界メシテロ〜
日暮れ前に村に着いた。
収集したものは村の倉庫に集めて、確認と選別は明日することとなった。
短い旅をともにした仲間たちに挨拶して、小さな家族の待つ家に帰る。
「ミミ、たっだいま〜! キムランが帰ってきたよー!」
「おかえりキムラン」
キッチンにいたミミが、踏み台から降りてかけよってくる。
「はいミミ、お土産取ってきた」
「おみやげ、なに?」
麻袋を開いて、ミミの目が輝く。
オーパーツ収集とは別に、ナルシェに聞きながら野に生えている香草を収穫してきたんだ。
肉料理に向いているもの、魚料理に向いているもの。見たことない植物ばかりでテンション上がりまくりだったぜ。
ミミは魚料理に良いという香草の束を手に取る。
「そんちょのおくさんからキバさかなもらった。キノコとハーブでむしやきする」
「魚の香草蒸し焼き!!! すっげー美味そう!! オレも手伝っていいか?」
「じゃあ、さばいて」
まな板にドンと置かれた魚は、体長がゆうに50cmはある。体表をおおうグリーンのウロコ、口には鋭い牙が生えていて目つきが狂犬。こんな魚初めて見たぞ。一歩間違うとこっちが食われそうなツラをしている。
村長の奥さんはハラワタを抜いといてくれたらしい。お腹はすっぽり空洞になっている。
「ウロコとって、みをにまいにする」
「おっけー」
たしか捌き方はなんとかお兄さんの料理チャンネルで見たぞ。覚えているかぎりやってみよう!
包丁の背でウロコを削ぐ。
頭を落として、尾のほうに包丁をあてて、っと。
身は赤い。クリスマスのようなカラーリングだなこの魚。骨を取って身を分けた。
「そしたら、これでくるんで、むす」
「おお! ミミ先生、切り分けた魚の半身を、座布団になりそうな大きさの葉に乗せました! 魚の身に塩を振って、香草とキノコ、短冊に切った根菜、それから豆粒サイズの木の実を手ですり潰しながらかけるーーーー! これは神技だ!」
「キムランうるさい」
クセで実況したら叱られますた。
しょうがないから心の中で静かに実況していよう。
ミミは葉っぱで魚をくるくると巻いた。
それを二段の石棚、上段部分に入れて鉄の扉を閉めた。
これがこの世界の石窯らしい。下段にはコンロに使われているのと同じ、炎魔法の石版が入っている。
「あとは、やけるまでまつ」
「うおお、この時点でむっちゃいいにおい! 絶対美味い!」
「とうぜん」
うるさいと言いながらも、褒められるのは嬉しいらしい。ミミの口元がへにゃ、とゆるんでいる。
魚が焼けるまで、ダイニングのテーブルに着席して、摘んできた香草で煮出した茶を飲んで待つ。
「おおおお! なんだこれ、ワインみたいだ。色も紫だしワインっぽい!」
「わいん、てなんだ?」
「オレがいた世界の飲み物」
「そうか。これはモモスケっていう。いまのじきしかとれないハーブ」
「へ〜! すごいな!」
味はワインだけどアルコール分はなさそうだ。ミミも普通に飲んでいる。
オレがまだ知らないだけで、ビールの味の茶とかジュースの味の茶とか、おもしろアイテムがたくさんありそうだ。明日選別の仕事が終わったら探してみようかな。
そんな話をしている間に魚の焼けるいい匂いが漂ってきた。
葉っぱごと大皿に取って、巻いていた葉をナイフで切り開く。プシュッと葉の中にくるまれていた蒸気が吹き出す。
身はうすピンクでふわふわに。香草の爽やかな匂いが食欲をそそる。
「だいせいこう」
「イエーイ! キバ魚の香草蒸し焼きできたぜーー!! これから実食ターイム!」
「キムランうるさい」
「ごめーん」
お祈りのあと、ほぐした魚とキノコをスプーンで一気にすくい、口の中に。
「うわ! ふわとろ! むっちゃうめええええ!!」
「うむ」
魚の旨味が染み込んだ根菜とキノコ、芳しい魚。魚のあぶらもしつこくない。ミミが砕いて乗せていたのはコショウ的なものだったようだ。それらが魚と野菜の風味を引き締めてくれている。
ワインぽいお茶との相性も抜群だ。
見た目凶悪な魚でも味は五つ星。
最高に美味い魚に舌鼓を打っていると、隣の家から地の底から響くようなナルシェの悲鳴が聞こえてきた。
「……ミミ。魚はもう半身焼いてあるし、ナルシェのとこにおすそ分けしてやらない?」
「いいよ。スープ、もらったし」
ミミの許可が出たことだし、キバ魚の香草蒸し焼きをお隣さんに届けた。
応対に出てきたオリビアさんは笑顔。反して、ナルシェは奥に見えるテーブルに突っ伏して撃沈している。何かが盛られた皿。遠目に見て色がヘドロ。
………………一体何を食わされたんだろう。聞かないほうが良さそうだった。
収集したものは村の倉庫に集めて、確認と選別は明日することとなった。
短い旅をともにした仲間たちに挨拶して、小さな家族の待つ家に帰る。
「ミミ、たっだいま〜! キムランが帰ってきたよー!」
「おかえりキムラン」
キッチンにいたミミが、踏み台から降りてかけよってくる。
「はいミミ、お土産取ってきた」
「おみやげ、なに?」
麻袋を開いて、ミミの目が輝く。
オーパーツ収集とは別に、ナルシェに聞きながら野に生えている香草を収穫してきたんだ。
肉料理に向いているもの、魚料理に向いているもの。見たことない植物ばかりでテンション上がりまくりだったぜ。
ミミは魚料理に良いという香草の束を手に取る。
「そんちょのおくさんからキバさかなもらった。キノコとハーブでむしやきする」
「魚の香草蒸し焼き!!! すっげー美味そう!! オレも手伝っていいか?」
「じゃあ、さばいて」
まな板にドンと置かれた魚は、体長がゆうに50cmはある。体表をおおうグリーンのウロコ、口には鋭い牙が生えていて目つきが狂犬。こんな魚初めて見たぞ。一歩間違うとこっちが食われそうなツラをしている。
村長の奥さんはハラワタを抜いといてくれたらしい。お腹はすっぽり空洞になっている。
「ウロコとって、みをにまいにする」
「おっけー」
たしか捌き方はなんとかお兄さんの料理チャンネルで見たぞ。覚えているかぎりやってみよう!
包丁の背でウロコを削ぐ。
頭を落として、尾のほうに包丁をあてて、っと。
身は赤い。クリスマスのようなカラーリングだなこの魚。骨を取って身を分けた。
「そしたら、これでくるんで、むす」
「おお! ミミ先生、切り分けた魚の半身を、座布団になりそうな大きさの葉に乗せました! 魚の身に塩を振って、香草とキノコ、短冊に切った根菜、それから豆粒サイズの木の実を手ですり潰しながらかけるーーーー! これは神技だ!」
「キムランうるさい」
クセで実況したら叱られますた。
しょうがないから心の中で静かに実況していよう。
ミミは葉っぱで魚をくるくると巻いた。
それを二段の石棚、上段部分に入れて鉄の扉を閉めた。
これがこの世界の石窯らしい。下段にはコンロに使われているのと同じ、炎魔法の石版が入っている。
「あとは、やけるまでまつ」
「うおお、この時点でむっちゃいいにおい! 絶対美味い!」
「とうぜん」
うるさいと言いながらも、褒められるのは嬉しいらしい。ミミの口元がへにゃ、とゆるんでいる。
魚が焼けるまで、ダイニングのテーブルに着席して、摘んできた香草で煮出した茶を飲んで待つ。
「おおおお! なんだこれ、ワインみたいだ。色も紫だしワインっぽい!」
「わいん、てなんだ?」
「オレがいた世界の飲み物」
「そうか。これはモモスケっていう。いまのじきしかとれないハーブ」
「へ〜! すごいな!」
味はワインだけどアルコール分はなさそうだ。ミミも普通に飲んでいる。
オレがまだ知らないだけで、ビールの味の茶とかジュースの味の茶とか、おもしろアイテムがたくさんありそうだ。明日選別の仕事が終わったら探してみようかな。
そんな話をしている間に魚の焼けるいい匂いが漂ってきた。
葉っぱごと大皿に取って、巻いていた葉をナイフで切り開く。プシュッと葉の中にくるまれていた蒸気が吹き出す。
身はうすピンクでふわふわに。香草の爽やかな匂いが食欲をそそる。
「だいせいこう」
「イエーイ! キバ魚の香草蒸し焼きできたぜーー!! これから実食ターイム!」
「キムランうるさい」
「ごめーん」
お祈りのあと、ほぐした魚とキノコをスプーンで一気にすくい、口の中に。
「うわ! ふわとろ! むっちゃうめええええ!!」
「うむ」
魚の旨味が染み込んだ根菜とキノコ、芳しい魚。魚のあぶらもしつこくない。ミミが砕いて乗せていたのはコショウ的なものだったようだ。それらが魚と野菜の風味を引き締めてくれている。
ワインぽいお茶との相性も抜群だ。
見た目凶悪な魚でも味は五つ星。
最高に美味い魚に舌鼓を打っていると、隣の家から地の底から響くようなナルシェの悲鳴が聞こえてきた。
「……ミミ。魚はもう半身焼いてあるし、ナルシェのとこにおすそ分けしてやらない?」
「いいよ。スープ、もらったし」
ミミの許可が出たことだし、キバ魚の香草蒸し焼きをお隣さんに届けた。
応対に出てきたオリビアさんは笑顔。反して、ナルシェは奥に見えるテーブルに突っ伏して撃沈している。何かが盛られた皿。遠目に見て色がヘドロ。
………………一体何を食わされたんだろう。聞かないほうが良さそうだった。