魔法少女ばあやの日常

 話をするため、わたしはぺぺを抱えて地上におりました。

「魔法少女になりたい、か。あたしは仲間が増えてくれると嬉しいけど」

 ソフィアがちらりとぺぺを見ます。
 ぺぺでないと才があるかどうかわかりません。  

「もし才能がおありなら、年寄りのわたしより、魔法少女になりたがっているアリーナ様のほうが適任なのでは」
「もぅ、ミラお姉様ったら。そんな可愛らしい姿でお年寄りだなんて、ご冗談を」

 いえ、本当は七十歳ですからね。老体にムチ打ってますよ。交代できるなら喜んで引き渡します。

 変身前の姿もこれくらいの少女だと思われているのかしら。

 アリーナ様はぺぺをもふもふと撫で回します。

「あらまあ、なんて可愛いうさぎさんかしら。魔法少女さまのペットですの?」
「失礼な子でし! ぺぺはペットでなく精霊でし!」
「あらあら、おミミをパタパタさせちゃって。わたくしに会えたことが嬉しくて喜んでいるんですの?」

 アリーナ様には声として認識できないようです。

「ぺぺの声が聞こえてないから、キミは無能でし! おととい来やがれでし!」
「ストップ!」

 急いでぺぺの口を手で塞ぎます。
 アリーナ様本人に声が聞こえないとはいえ、未来の国母に向かって無能だなんて。ぺぺ、恐ろしい子。

「なりたいだけでは魔法少女になれない」とぺぺの言葉をソフトに翻訳したら、たいそう残念がっておられました。



 その後。アリーナ様の登場で存在を忘れていましたが、わたしたちが引き上げたあとエスペイラが解けたリザードマンは、悔しがって叫んでいたそうな。 


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