魔法少女ばあやの日常

design

 花畑の真ん中に、ぽよんぽよんと形を変えるピンクの生き物がいました。パン生地のように伸び縮みしています。

「あれが今回現れた魔物ですか」
「そうでし!」

 ピクニックに来ていたらしい人たちを逃がすため、ソフィアが奮戦中でした。

「この、この! あたれー!」

 魔物はドーナツ状に変形して、魔法を避けてしまいました。
 こんなにうねうねしていては、命中させること自体難しい。

「ソフィア、私が止めるので、その間に!」
「ミラお姉様!」

 私はホウキにまたがったまま時計を掴み、唱えます。

design

時よ止まれエスペイラ!」

 ドーナツ状のまま固まる魔物。
 ソフィアが魔法を放とうとしたその時、何者かがソフィアに体当たりをしました。

 あらぬ方に飛ぶ杖。
 慌ててソフィアが杖を拾おうとするのを、その人影が杖を踏んで妨害する。

「へへへ、そうはいかねぇ、魔法少女さんよ! 魔物を送還されちゃ困るぜ」

 ケラケラと笑う人影は、人ではありませんでした。
 全身爬虫類のような鱗に覆われていて、トカゲのような尻尾が生えていたのです。
 例えるなら幻想図鑑の亜人、リザードマン。

「送還されちゃ困る? まさか、魔物がはびこっている原因は、あなたなのですか」
「あっしじゃなくてスカルノ様のお力さ。スカルノ様の手にかかりゃ、魔物召喚なんて朝メシ前さ!」

 リザードマンの仲間、スカルノという者が大元ということは理解しました。なら、リザードマンを捕まえて元凶の居所を吐かせないと。

「魔物が還されてんのがこの杖のせいってんなら、これを折ればもう送還できねぇよ、なぁ!」
「そんなこと、させません! 時よ止まれエスペイラ!」 

 リザードマンが杖から足を上げ、斧を振りかぶるのに合わせて魔法をかける。

design

「お姉様さすがです! 今のうちに、えーい! 異界送還エクストラディクション!」

 すかさずソフィアが杖を拾い、今度こそ魔物に向かって送還魔法を放つ。

 前回同様、魔物は光の中に消えていきました。

「すごいですわ、すごいですわ! かんげきですわぁ!!」

 一般人を逃したはずなのに、なぜ人の声が?
 わたしたちが動揺していると、木陰から人が飛び出してきました。

「わたくしアリーナと申しますの。今のご活躍、しかとこの目に焼き付けましたわ。わたくしもあなたたちのように魔法を使いたいのです。弟子にしてくださいませ、魔法少女さま!!」


image
7/27ページ
スキ