魔法少女ばあやの日常

「魔物が消えた? それは本当か」

 バル国のどこかに存在する廃城に、三つの人影があった。
 マントをはおったガイコツが、報告してきた者に問いかける。

「そうですぜスカルノ様。あっしは確かに見やした。奇妙な人間の娘が二人、不思議な力で消し去った。あれはきっと魔法少女だ」

 報告した者は何度も頷く。鎧を着たトカゲ。リザードマンと呼ばれる人外生物だ。

「五百年前、先代の魔王様がこの世界を侵略しにきたとき、魔法少女に邪魔をされた。って話ね。夢でも見たんじゃない、ザードン。人間の寿命なんてせいぜい八十年かそこらでしょ」

 人影最後の一人……倒れた柱を椅子にしていた少女が、リザードマンに疑りの目を向ける。背中にはコウモリのような翼。この娘もまた人ではない何かだ。

「あっしは嘘なんてつかねぇ!」

 必死に訴えるザードン。
 少女ーーキュリーは乾いた笑い声をたてる。

「ふぅん。そこまで言うなら証拠を見せなさいよ。魔法少女がいるって証拠を」
「ばかにすんな、キュリー! あっしは確かに見たんだ! そこまで言うなら足の一本でも取って来てやらぁ!」

 ダンダンと乱暴に尻尾をふり、ザードンは魔物を従えて廃墟を出ていった。

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