魔法少女ばあやの日常

「ペペ。わたし、いつまでこの恥ずかしい格好をしていればいいのですか」
「てへへ。言い忘れてましたでし。魔法少女の契約は、魔物をこの世界から一掃するまででし」
「はぁああ!?」

 バル国内だけでも何十匹と目撃情報があります。たった二人で、全部を異界に返せと。
 やり遂げる前に寿命を迎えてしまいそうです。

 魔法少女に契約解除クーリングオフ制度はないのでしょうか。

「くーりんぐおふって、どこの世界の言葉でし?」
「心を読めるの!?」
「ぺぺは精霊だから当然でし」

 心を読めるのは当然なのね、そうなのね……。

「あたしはピチピチになれるの大歓迎です〜! 今のうちに学生服に袖を通したいので失礼しますね!」

 止める間もなく、ソフィアは飛んでいってしまいました。
 ……今後の話し合いをしたかったのですが。

 時を置かず、騎士たちが駆けつけました。
 魔物の爪跡残る平原と、わたしを見比べて呆然としています。

「これは一体。少女が魔物に襲われていると通報を受けたのですが何もいない。怪我はありませんか、お嬢さん」

 駆けつけた騎士の一人は、私と同じく城で勤続五十五年を迎えたルーカスでした。
 騎士団長なので魔物騒動のとき一番に出動するのです。

「怪我はありません。魔物は異界に送還したので大丈夫ですよ」
「我々騎士でも勝てないのに、おまえみたいな仮装パーティにでも参加していそうな娘が倒せるわけあるかあああ!!!!」
「よしなさいお前たち。お嬢さん。貴女のお名前を聞いてもよろしいか。送還、というのか、魔物を倒す条件が何か知っているなら話を聞かせてほしい」

 若い騎士を諌めるルーカス。
 事情聴取なんてされても、わたしも事態が飲み込めてないので無理です。

「ご、」
「……ご?」
「ごめんなさいーー!」

 逃げましょう。ホウキで飛んで逃げるしかないです。

「ぺぺをおいていかないで、ミラ〜」

 ぺぺも私を追いかけてきます。

「うう、この姿ではもう仕事に戻れません」
「にんげん誰しも、若くて美しい自分でありたいと思うものではないでしか?」
「若ければいいという問題ではないの。元に戻れないと、わたしは突然失踪したことになるわ」  

 中庭に戻ってきたものの……植木の影に座り込んで途方に暮れます。

「大丈夫。一回の変身時間は10分なので、そろそろもとに戻るでし」
「え」
 


 ぺぺの予告通り、ぽふんと音を立てていつものわたしに戻りました。

「生きた心地がしなかったわ……」
「あ、エデルミラさん良かった! ダメアンが見つかりましたよー!」

 若いメイドがかけよってきます。

「表立ってご主人様の悪口を言うなんていけません。誰が聞いているかわからないのですから、気をつけなさい」
「はぁい」

 今日のところはなんとかごまかせましたが、この先魔物が現れるたびに出動しないといけないです。

 ぺぺはなぜかわたしの部屋に居着いています。

「大丈夫でしよミラ! ぺぺがついてましから!」
「余計不安よ」

 こうして、メイドと魔法少女の二重生活が幕を開けたのです。

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