魔法少女ばあやの日常

 わたしが魔法少女だったとバレてから三日。
 一週間も経たないうちに城中で働く人間の間に知れ渡っていました。

「エデルミラさん、噂聞きましたよー! 変身しているところを見せてもらってもいいですか!」
「アタシもアタシも。ホウキに乗せてください! 空を飛ぶってどうやるんですか」
「いったいどのようにして変身するんですか」

 仕事で城内を移動するたび、話を聞きつけたメイドや騎士、文官がよってくるのです。
 魔法そのものが伝承レベルの話だったので、目の前に魔法少女になれる人が現れたからお祭り騒ぎ。

 
 バレたならもう下手に隠しだてしなくて良くなったと思ったのに。
 みんなに方々で呼び止められるので、まともに仕事になりません。

 シーツを干すだけなのに、質問攻めにされるせいでいつもの倍時間がかかっています。
 空からぺぺが舞い降りてきました。 

「ミラァ〜! 魔物が現れたでし! 今すぐ出動でし!」
「ちょうどよかったわ、ぺぺ。みんな、あとの仕事は任せるわ」

 渡りに船。
 洗濯干しを他のメイドに任せて変身します。

「トランスフォルマー、ぺルーカ!」

 一瞬にして少女の姿となり、服も肩出しでひらひらミニスカートに変わる。
 メイドたちは大喜びです。

「わぁ! 本当にエデルミラさんが魔法少女だ!」
「写真撮っていいですか!?」
「だめです、やめてください。こんな姿の写真を撮られたら恥ずかしくて生きていけません」

 顔を覆いたくなるわたしに、メイドがトドメをさします。

「エデルミラさんてばなにいってるんですか。伝説の魔法少女現る!? ってもう何回も新聞トップ記事になってますよ。写真集も買いました! 魔法剣士ルーカスのもありますよ」
「は!? わ、わたしの知らないところで、写真集になっていたんですか?」


 知らぬ間に新聞記者たちが隠れて写真を撮り写真集にしていたなんて。城内住み込みで仕事仕事の毎日だから、町で売られている今どきの本の話なんて知る由もない。
 即刻出版停止して全部回収してほしいです。出版した責任者は今すぐ目の前に出てきてほしいです。

「ミラー、はやくはやく!」
「そうでした」

 衝撃を受けている場合ではありません。

 すぐさまホウキにまたがり飛び立ちます。
 魔物を送還したらすぐさま写真集の出版社を探しましょう。


 そのころ、町では魔法剣士ルーカス写真集を50冊も買った怪しげな少女がいた。

「ああ、ルーカス様輝いているわ! 布教用、保存用、枕の下に入れる用、観賞用、魔界に持ち帰る用、それにそれに〜」



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