魔法少女ばあやの日常

 バル王国のどこかにある、魔の本拠地にて。

 人間を襲う魔物たちを次々魔法少女に送還され、ザードンは窮地に追い込まれていました。

 ボスであるスカルノは長椅子に深く腰掛け、ザードンをみやります。

「人間の小娘を退けるなどたやすいと、あれだけ大見得を切っていたのは誰だったか」
「おお、おおお、お許しくださいスカルノ様!」

 地面に頭をこすりつけて許しをこうザードンでしたが、スカルノは暗い目でザードンを見下ろすばかり。

「期待外れだったな。キュリー、行けるか。お前なら何かいい策があるだろう」
「スカルノ様、キュリーなんかに期待するんですかい!?」
「そういうことは魔法少女を一人でも倒してから言いなさいよ」

 涙目になるザードンですが、度重なる失態を指摘されてしまえばぐうの音も出ません。

「あたしに任せてください、スカルノ様」

 キュリーは街で配られていた号外を出します。
 それにはバル王国の王子ダミアンが、魔法少女を妻に迎える心づもりであると書かれていました。

「あたしが魔法少女のふりをして、王子を所定の場所に呼び出す手紙を書きます」
「ケッ、そんなことしてなんになるってんだい」
「馬鹿だね、ザードンは。自分たちが出した覚えのない手紙で王子がどこかにおびき出されて、魔物の群れに襲われていたら……魔法少女たちは嫌でも出てこざるを得ないでしょ」

 魔法少女に呼び出されて行った場所に魔物の群れが現れたら?
 キュリーは不敵に笑います。

「うまく行けば人間の王族を消せるし、魔物のいる場に王子を呼び出した魔法少女たちの信頼は地に落ちるーーということか」
「そのとおりです、スカルノ様。王族は人間の国を治める者。遅かれ早かれ、消しておくにこしたことはないでしょう。統治者おうぞくがいなくなれば残った人間たちは烏合の衆になりさがる」

 カタカタカタと歯を鳴らしてスカルノが高笑いします。

「よかろう。任せたぞキュリー」
「はい。必ずや、我ら魔族の勝利をお伝えしましょう」

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